121亡霊退治(タツヤ)
アイギスが放ったすべてを飲み込みそうな程の強烈な黒い波動。
それを見た瞬間、俺はやはり、最高血種と自称するだけあると思ってしまった。
あの魔術を受けては、すべての万物は闇に葬り去れるだろう。
アイギスは王者の風格ともいう様相を醸し出しながら、その結果を一切見ずに、玉座へと戻ろうとする。。。
。。。のだが、、、そこには未だ黒い靄が残り、刀を持ち、再び朱音へと対峙していた。
「おい、アイギス、まったく効いてないぞ。」
一言、言ってもいいだろうか。
ダサっ。
あんだけ、朱音の血を吸って大魔術を放出して、王者の風格までだしたというのに、できてないじゃん!
ダサすぎだよ、あんた。ぷぷぷ、と一応は大人なので声には出さずに、心の中で思いっきり笑ってやる。
大丈夫だ。俺なんかよりも、おそらく、あいつが黙っちゃいない。
「ぷー、クスクス、ねぇ、タツヤ見た?何が『劣等種なんぞには無理じゃ』よ。自分で言っておいて出来てないじゃん。うっわ、恥ずかしいー!恥ずかしすぎて見てられないのです。」
「おい、虫!殺す!」
「わいわいがやがや」
「わいわいがやがや」
思った通り、アリエルが思いっきり突っ込んでくれましたよ。そして、いつもの妖精VSアイギスの喧嘩だ。
まぁ、放っておこう。
問題は、そっちじゃない。今もなお、地べたに座り込んでいる朱音に対峙している黒い靄をどうするか。
「なるほど、魂の根源ね。」
霞が黒い靄へと歩みを進め、そして、大胆にも黒い靄の中に、手を突っ込んだ。
「ふ、ふし、ふし。不死死不、チ、血、血、チ、血、ち、ちちちちち。」
相変わらず、黒いや靄は狂っている。何かを話してるようだが、言葉になっていない。
「なるほどね、あなたも、きっと夢見てグローリーホールへ飛び込んだ冒険者だったのね。」
「霞?わかるのか?」
「わかるわ。魂の根源が、過去の恨みを物語っている。彼は、不死を目指してこの大迷宮を目指したらしいわ。吸血鬼の血を飲めば不死になれると。そして、死にそうになりながらも、なんとか、この城にたどり着いた。けども、吸血鬼、アイギスに出会うも、まったく相手にされることなく、元の世界へ戻ることもできず、時間だけが過ぎてやがて、肉体だけ滅びた。そんなとこかしらね。」
「ふん、妾が、そんな得体の知れぬ劣等種なんぞに血を分け与えるわけがなかろう。」
「でも、この人はそれを心底、恨んでいたようね。何せ、ラビリンスが出来るより前。命がけで、決死の思いでようやく辿り着けた。けれど、相手にされなかった。戻ろうにも、もはや戻ることすらできなかった。それを恨んでいるようね。」
霞がそっと気を込めると、青い光のオーブが周りにいくつも出現する。
「あなたはかわいそうね。だけど、それはね、ちょっと違うと思うのよね。いくら命がけであっても、勝手に来て、自分の主張だけを押し通す。。。それは勝手がすぎるわ。それで怨念を残すなんて、あまりに勝手すぎる。」
さらに青光のオーブが舞いあがると、その黒い靄は徐々に姿を消しはじめる。
「もう、いい加減になさい。それで、アイギスを恨み、まわりに危害をなすなんて、常識外れもいいところ。この世から、消えなさい!」
その瞬間に、黒い靄は完全に消えていた。
「か、霞?」
「うん、滅魂魔術だったかしらね。なんか、昔、そんな魔術があった気がするのよね。」
滅魂魔術。初めて見たし、初めて聞いた。霞も転生者、たぶん、霞も過去の数々の転生のなかで身につけた魔術のだろう。
アイギス、吸血して、あそこまで格好つけて失敗してめちゃくちゃ恥ずいのではあるが、だが、奴から漏れ出る気、つまり、魔素は間違いなく尋常ではなかった。
そのアイギスですら、倒せなかった怨念をたったの一撃で仕留めた霞。
やはり、霞も繰り返し、転生をした者、ありえないほどの高度な魔術を有している。
ふと、見る霞の横顔、どこから吹いた風が霞の黒髪をなびかせる。やはりあの人に似ていて、そして、美しい。。。
「さすが、霞なのです。どっかの使えない吸血鬼なんかより使えるのです。プークスクス。」
「おい、虫が!その、ちょっと、まだ、完全回復してなかっただけじゃ。そもそも、貴様は何もしてないじゃろうが!」
羽虫とアイギスは相変わらずのようだ。
ただ、それよりも、少し朱音の様子が。。。気になる。
床に座り込んだまま、まったく元気が感じられない。




