117覗き見られる者たち(タツヤ)
まったく、さっきまで小さいのが二人、ずっと右側と左側で口論していたのだ。
宝物庫に来てから、あのあとずーーーーーっとだ。夕食のときでさえ、口論している。まったく飽きないものだ。
おかげで、耳が痛い。
というか、一人はつい先日までラビリンスを破壊していたやつなのだのだが。。。
言いたいことは沢山ある。
どれだけラビリンスの多くの人達に悲劇を与えた。どれだけ多くの人達に失望を与えた。
だが、まぁ、今は人間に危害を加える気はないらしいし、あの姿を見ると、警戒する気も失せる。
別に俺の目的は、ラビリンスの人間を守ることではない。これよりも悲惨な世界なんて、過去の転生で何度も見てみきた。それに比べれば、この世界は、まだ全然いいほうだ。ラビリンスの人たちがどうなろうが知ったこっちゃない、、、というわけではないが、今は、それよりも、、、目の前に守るべき人がいる。
と、俺は隣で寝ようとしている霞を横目で見る。
あれだけうるさかったというのに、二匹がいなくなれば、突如と訪れる静寂。
どこに行ったのか知らないが、しばらく二度と帰ってくるなだ。
ようやく、これで落ち着いて寝れる。
よっこらしょと、霞の脇に、霞に背を向けて横になる。
「ね、アリエルちゃんと、朱音ちゃん、それにあのバンパイヤ、どこ行っちゃったのかしらね。」
背中越しに霞が話しかけてくる。二匹がいなくなったことは気づいていたが、朱音までいなくなっていたのか。
「さぁ、便所じゃねぇの。」
「ねぇ、ちょっとデリカシー。ストレートに言わないの!そういうところだよ。」
そこで、どうでもいいことなのだが、ふと思ったことがある。妖精はトイレに行かないとは言っていた。朱音は、まぁ、人間だしな。で、アイギスだ。
果たして、バンパイヤっていうのはトイレ行くのだろうか??
正直言って、どうでもいいことなんだがな。
―――
「ふむ。便所ならば妾もいくぞ。最高血種であろうと、出るものは出る。」
「おい、言わんでよいのです。一応、妖精はトイレなんて行かないのです。」
あっ、ちなみに朱音は人間です。便所は行きますが、RGF社で鍛えられたので、72時間までは耐久可能です。
―――
「まぁ、しばらくは静かでいいさ。当面、戻ってこなくていいぞ。」
「そんなことはないでしょ。まぁ、三人は待つとして、それよりも、あのレッドダイヤをどうやって持って帰るかよね。。。あたしさ、あのアースホールって呼ばれている大穴が使えないかなって考えてるのよ。」
「そうか。」
「なんとか、あれをコントロールできれば、この地底とラビリンスを繋げられて、凄いことにならない?」
「そうかもな。」
「だから、まずはアースホールで調査を進めようと思うのよね。」
「あぁ、そうか。」
「でもさ、あの穴ってとても深いし、重力が曲がっているでしょ。」
「そうだな。」
「。。。。。。ねぇ、聞いてる?」
「あぁ、聞いてるさ。」
「そうじゃなくてさ。。。。。。ね、やっぱり気にしているの?あたしの過去のこと。」
「そりゃ、気にしてるさ。けど、前に言った通りさ。霞が俺を受け入れなくてもいい。ただ、俺が霞の側にいたいだけ。俺が勝手に霞を守りたいだけだ。」
「ふーん、何か、本当のストーカーみたいね。」
「。。。まぁ、ストーカーでもいいさ。」
「ま、いいけどね。ね、ちょっと。背中向けてないで、こっち向きなよ。」
と、霞は俺の背中をツンツンしてきた。
寝返りをうち、霞のほうを向くと、霞は俺の顔を真っすぐに見ていた。
少し目を泳がせてしまったが、俺も、霞の顔をじっと見返す。
誰もいない広間。無音だけの時間がしばらく経過していく。
霞の顔、あの人と同じかと思うほど、そっくな顔。
それもあるが、こうやってじっと見れば、霞の綺麗な顔、キレイな瞳、柔らかな頬、潤やかな唇、その顔のパーツの一つ一つがこうも美しい。
あらためて見蕩れてしまう。
が、そんなときに、天井からホコリが舞い落ち、霞の顔へとかかりそうになる。ここは、アイギスの居城、非常に古くどこもホコリを被っている。だから、それほど珍しいことではないのだが、、、
「あっ、ゴミ。」
手を伸ばし、少しだけ、霞の顔のほうへと顔を近づけ、ゴミを追いやる。そのとき、霞のほのかに温かい息遣いが顔にかかった。
「。。。」
「。。。」
そして、また、しばらくの沈黙が続く。互いの顔の距離も少し近づく。
だが、沈黙を破ったのは霞だった。
「あんた、よ~~~~~~く見ると、オッサンだけど、意外と悪くない顔しているじゃない。」
「霞、『よ~く』を伸ばし過ぎだ。」
霞は寝返りをうって、後ろを向いてしまった。
「あんたさ、『受け入れなくてもいい』って言ってるけど、あたしは、そもそも『受け入れる』とか『受けれ入れない』とも言ってないんだからね。」
「えっ。」




