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115バンパイヤの憂鬱(アイギス)

 

 あたしの名はアイギスラントブルカ=ブラッドレイン=ボーンテッドブルーン。誉れ高きの最高血種の姫。

 じゃというのに、まったく人間ごときの劣等種に妾が負けるとはのぉ。

 生気もだいぶ使い果たしたせいか、背がだいぶ縮んでしもうたわい。

 今は、自らを恥じるのじゃ。


 生物というのは、死ねばその魂はいずれ転生するのじゃ。

 それが輪廻転生の理。

 中には、記憶、技術を持ったまま転生を繰り返す者も確かにおる。

 じゃが、あやつは、なんじゃ。

 高々数回ぐらい転生したものと思っておったが、ほぼ無限ともいえる回数をなんども転生しておる。バケモンじゃ。


 妾が劣等種である人間に背を向けざるを得ないなど、屈辱より耐えがたい仕打ち。

 じゃが、もう、過ぎたこと。あの転生者とは関わらんことじゃ、と思っておった矢先に、わざわざ、もう一度、我が城に来るとはどういうことじゃ!嫌がらせか!


 しかも、例の虫もおる。まったくけしからん!


 まぁ、こういうこともあろうかと、虫に対しては、対策を講じておいたのじゃ。

 どうせ、例の虫ならば、いつもの宝物庫に来るであろうぞ。

 宝物庫というても、歴々の血種たちがどこぞから集めたガラクタを適当にあの部屋にしまっておいただけのこと。

 妖精どもにはあれが宝物に見えるらしいが、妾からすれば、ただのゴミ同然。

 妾にはあの部屋は宝物庫というよりもゴミ置き場にしか見えぬがの。


 ならばと、中身のゴミはとっとと捨て去り、むさ苦しい羽虫を捕まえるトラップを仕掛けておいたのじゃ。

 羽虫は、宝物庫を開けようと、必死にもがく。じゃが、必死にもがいたというのに先の部屋は残念なことに空っぽ。

 羽虫は悔しがるどころか、羽虫を捉えるトラップが発動して、捕まるのじゃ。

 どうじゃ、傑作じゃろ。


 そして、見よ。今まさに、あの忌まわしき羽虫が捕まりおったわい。


「かっ、かっ、かっ、かっ!所詮は虫よ。我が城から宝を盗むなぞ、片腹痛いわ!」


 じゃがの。周りの人間どもは妾の姿を見て、「小さい」じゃとか、「可愛い」などと言いおる。


「小さい」のは仕方がない。生気をだいぶ持ってかれて縮んだのじゃ。大目に見ようぞ。じゃが、「可愛い」じゃと?この妾が「可愛い」など、まったくの屈辱じゃ!

 妾は誉れ高き最高血種の姫。「見蕩れん程に美しい」と言うのじゃ!まったくけしからん。


 先ほどまで妾の作ったトラップに引っかかり、壁に見事な虫型を作っていた虫じゃが、ふと、ふらふらと、こちらへとやって来る。はて?一体何をしに来たか。


 例の羽虫は、妾をじ~っと見つめると、妾の横隣にわざわざ並び、こちらを横に見る。

 そして、ボソッと言ったのじゃ。


「。。。小っちゃ。」

「黙れ!虫が!どいつこいつも。貴様なんぞよりは1㎝だけ大きいわ!」


 撤回じゃ。「小さい」のは仕方がないと言ったが、この虫だけに言われるのは許さん。


「たかが数㎝の差を気にするとは、、、あらぁ?気にしてるの?」

「殺す!」


 と、妾は新調したハエ叩きを取り出すのじゃが、


「おい、待て。」


 あのタツヤという人間に止められてしもうた。


「どっちも、大きさは変わらない。それより、あのとき、アリエルの魔術で倒されたはずじゃ。」

「ふん、誰が羽虫の攻撃で倒されるか。貴様じゃ。貴様が『血祭り』なぞという技を使った後じゃ。たかが、数回程の転生した程度と思うておったが、まさか、あれほどの回数を転生し、技量を蓄積しておっていたとわの。この妾が撤退したわ。」

「ちょっと待つのです。そのあと、あたしも、あんたを攻撃したのです。」

「知るか。そん時は妾はとっくに逃げておったわ。まぁ、まったく無駄な攻撃じゃったということじゃな。」

「は!?」


 そう。その通りじゃ。妾はこやつを舐めていた。まさか、あれほどの回数を転生し、技量を高めていたとは思わなんだのじゃ。この最高血種であるこの妾が撤退したのじゃ。

 なんとも腹立たしい。

 そのあとも、この羽虫が攻撃を仕掛けたようじゃが、あのときは妾は既に撤退しておった。

 完全に無駄骨というやつじゃ。

 見よ、この羽虫の悔しそうな顔、なんとも心地よい。


「それで、ここで何をしている?」

「ふん。別にここは妾の居城じゃ。別に何しようと妾の勝手じゃ。それにそう警戒するな。安心せい。貴様のせいでだいぶ生気を持ってかれたのじゃ。しばらくは人間に手を出す気はおきんよ。少なくとも貴様が次に転生するまでの間わな。それまでこの城でしばし休憩じゃ。それより『何している?』はこっちのセリフじゃ。貴様こそ人の城に勝手に踏み込みおって何をしに来たのじゃ。」

「別に俺は用はないさ。さらに地底にある穴に来たついでに、アリエルに付き合っただけだ。」

「地底にある穴?ほぉ、アースホールじゃな。」

「アースホール??知っっているのか?」

「知っていたとして、どうして妾が貴様なんぞに教える。」


 ふと気づいたが、以前と相対したときよりも、人間が一人増えておらんかのぉ。

 妾は赤髪の女に、目をつけるのじゃ。果て、どこかで会ったか。


「あの。。。この城の城主とお見受けします。以前にベベルゼルドという男がこの地底には来てはいないでしょうか。」

「知るか。知っていたとして、どうして妾が人間の質問なんぞに答えるのじゃ。」


 ところで、先ほどから少し気にはなっていたことがあるのじゃ。

 この羽虫、半透明になっていないか。


「ところで、羽虫よ。なぜ半透明なのじゃ。」

「虫じゃない。よ・う・せ・い。ふん、あんたのせいなのです。妖精は人間の夢で出来た美しい生きものなのです。あんたのせいで、妖精を信じる人間が減ったのです。」

「かっ、かっ、かっ、なんとも滑稽じゃ。そのまま死ねばよかったのに。」

「何よ。小っちゃいくせに。」

「小っちゃくないわい!貴様よりは1㎝は大きいわ!」

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