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114幕間:ラビリンスの広場の苗木(リア)

 

 小さな地図屋さんの店主、リアよ。

 あれからというもの、店を修理して復帰したけども、売り上げはさっぱりね。


 そういえば、売り上げはさっぱりだけど、ラビリンスから地上へ通じる迷宮に地図はないかって最近聞かれることが多いわね。

 グレゴリーっていう冒険者がいるらしいのだけど、彼がいろんな冒険者を誘って、地上へ出て再び地上で生活する、というプロジェクトを進めているらしくて、需要があるらしいわ。


 人々が地上から地下のこのラビリンスに移住して、もう、何年も経つわね。

 それまで、誰も地上に出ようとする人なんて誰もいなかったのよ。だから、もう、みんな道順なんて忘れてしまってるわ。

 あたしの記憶の覚えている限りでは、そう簡単ではなかったはずなのよ。当時の人たちが、いろいろ苦労して、ようやくたどり着いたのが、この地下の大迷宮にあるこの巨大な空洞。今は大迷宮都市ラビリンスとして栄えているけれど、本当に最初のころは、ただの巨大な洞窟の空洞だったの。


 そこにたどり着くまでに、いろんな苦労があったはずなの。

 だから、彼が進めているプロジェクトというのはきっと、大きな困難が待ち構えていると思うのよね。

 めげずにがんばってほしいわね。


 まぁ、タツヤが地図を作ってくれれば、助かるし、あたしの店も儲かるんだけどね。


 あたしのお店はまだ良かったのだけど、まわりには、まだまだ全壊した家やお店もたくさんあるのよ。

 でもね、不思議なことにあれだけ惨憺たる状況でありながら、実は死亡した人はゼロだったのよ。


 まったく不思議なことね。あまりに不自然すぎて、まるで誰かさんがわざとそうしたんじゃないかって思ってしまったわ。


 あんだけ、人間を憎むとか言いながらも、結局、誰も殺しはしてはいない。単に、人間にムカついてヤキモキしてた気持ちを晴らしたかっただけじゃないの。まったく、自称、最高血種だとか、恥ずかしいことを言っていたけど、蓋を開ければ、ただの可愛い子供のようなもんじゃない。


 さて、今は、ギルドからは復興作業の依頼が沢山出ているから、冒険者たちも探索活動よりも、復興作業を優先しているようね。


 おかげ様で、あのときから比べれば、だいぶ復興したわ。

 あのときは、みんな絶望しかなかった。

 行き交う人も、皆、下を向き、暗い顔をしていた。けども、今は、人通りも増えはじめて、徐々にだけど、みんな顔をあげて、笑顔を見せるようになったわ。


 あたしは、一輪の花を持ち、ラビリンスで一番大きな広場の大木の根元へと向かいます。

 お店をやってても、今はほとんど客なんてこないから、こうやって、気持ちを紛らせているのよ。


 そこには、小さな木の芽があるの。

 ここは、あのアイギスとの戦いの中心地、そして、終焉の場所。


 今は、その場所に立派な柵で囲われて、広場の管理人さんが、毎日、水をやりをしているわ。

 その前には、誰がはじめたのか、多くの花が手向けられている。

 そこにあたしも一輪の花を手向けるのよ。


 でも、不思議よね。

 みんな、なんで『ただの』木の芽をこうも柵で囲って大切にして、お花まで手向けるのかしらって思ったわ。

 最初はタツヤとか霞さんたちも、花を手向けていたものだから、そういう儀式なのかしらって思ったわ。

 だけど、最近になって気づいたのよ。


 みんな、あの木の芽をアイギスだと思ってるの。


「うぷぷぷ。」


 思わず、笑いがこぼれてしまったわ。タツヤも霞さんも気づいていないようだけど、アイギスが来る前からあそこに木の芽は生えていたわ。

 そもそも、バンパイヤが木の芽に変身するなんかするわけないじゃないの。


 人間って面白いわね。あたしもバンパイヤであることに変わりはないわ。長いこと人間界で生活をしているけど、久しぶりに人間の面白い習慣を見てしまったわ。


 そう、あのとき、アイギスは逃げたのよ。タツヤの攻撃を受けて、大ダメージを受けたでしょ。そのあと妖精さんが攻撃する直前に逃げたのよ。


 えっ、じゃ、妖精さんの最後の攻撃は意味なかったのかって?


 まぁ、そういうことになるわね。妖精さんには申し訳ないけれど、無駄な攻撃だったということかしら。

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