113宝物庫での再会(タツヤ)
言っておくが、おれは、別に宝物庫なんて別に興味はない。
何があろうがどうでもいい。
ただ、せっかく宝物庫に入れるというのであれば、覗いては見たいと思うのが人情だろう。
ということで、せっかく朱音が開けてくれた扉の穴から覗き込むのだが、、、
で、これは一体なんだ??
その部屋にあったもの。
いや、正確にはこの部屋にあったものというよりも、この部屋の正体は?というべきだろうか。
何もない。
見事なまでに、な~んにもないただ広いだけの部屋。
壁に装飾があるわけもなく、本当にただの無機質な空間だ。
アリエルは部屋の中に一人で入り、キョロキョロとしている。
と、そのときだった。
バチン!!
そこへ、天井からどうみても、ハエ叩きのようなにしか見えない強大な罠が現れ、それがアリエルを狙った。
「ホギャッ!」
アリエルは、巨大ハエ叩きで、吹き飛ばされ、変な声をあげる。
壁に激突し、まるで、マンガの一幕のように壁に綺麗な人型と羽型が出来ている。
「お、おい、だ、大丈夫か?」
「だ、だ、大丈夫じゃないのです。」
俺たちはアリエルのところへと駆け寄るのだが、、、
「かっ、かっ、かっ、かっ!所詮は虫よ。我が城から宝を盗むなぞ、片腹痛いわ!」
背後から聞こえたその声、どこか聞いたことがあるその声。
そう、それは以前にもこの城の主であり、つい先日までラビリンスで対峙していた奴の声にとてつもなく似ている。
そう、あいつは倒した。倒したはずなのだ。
なので、ここにあいつがいるはずがない。
俺は急いで背後を振り返り、抜刀し、すぐに防御の構えをとる。
だが、そこに、例のアイギスの姿は見当たらない。
「貴様、そう慌てるな。今はもう、主ら人間どもとは争う気は失せたわ。」
確かに、誰もいない。だが、不思議なことに声だけはする。
「まぁ、いずれこうなるじゃろと、思うてな、ここにあった宝物なら捨てたわ!代わりに虫を捕まえる罠でも仕掛けたのじゃが、まさか、こうも上手くいくとはの。かっ、かっ、かっ。」
「はぁ?す、す、捨てた、ですって?、宝を捨てた??、う、嘘でしょ?」
霞は姿の見えない、相手に向かって、叫んでいるが、問題はそこじゃない。相手が見えない。
あのアイギスのこと、いったい、どんな魔術を使ったというのか?
が、そこへ朱音が俺の肩を、つん、つん、と突っつき、床をさす。
「あの、あそこ。。。」
と指さす先を良~く見ると、それは確かにいた。
それは、先ほどの肖像画と瓜二つの少女、深紅のドレスに、長くキレイな銀髪。そして、特徴的な、青い右目と赤茶色の左目のオッドアイ。その姿は間違いなく、あのアイギス。。。なのだが、、、、何かがおかしい気がする。
目の前にいるというのに、まるでアイギスはまるで遥か遠くにいるように感じられる。この違和感はなんだろうか。
足元を見れば、確かにアイギスは確かに目と鼻の先にいるのだ。だというのに、こんなにも小さく見える。
まるで、遠近感が狂わされる。
「うん?待て。遠近感?」
「おい、貴様、遠近感言うな!」
そして、俺は気づいたのだ。
「小っちゃ!」
そう、小っちゃい!
そこにアイギスはいた。だが、縮んでまるで人形のようなサイズになったアイギス。下手をすると、アリエルよりも小っちゃくないか。
一体何があった!?
「うるさいわい!主らとの戦いで、生気を使い果たしのじゃ。」
と喋る。まるで、喋る西洋人形。なんか可愛くないか。
「え、ヤバ、ちょっと可愛い。」
「うるさいわい!劣等種なぞに欲情されてたまるか。」
と霞が俺の心の中で思っていたこと喋ってくれたが、少し冷静になる。
「いや、ちょっと待て、俺は確かに倒したはずだ。そして、あの広場の大木の根からは、新しい木の芽が出ていた。」
「そうじゃ。貴様が『血祭り』なぞという技など使うからのぉ、あの程度で妾は負けはせんが、さすがに生気を使い果たしぞ。だから、そのあとに撤退したじゃ。戦略的撤退というやつじゃ。あぁ、まったくこの妾が撤退するなんぞ、この最高血種の血統以来の初めてじゃ。」
「いや、ちょっと待て。広場の大木の根から生えた新しい木の芽は何なんだ?」
「はぁ?木の芽がどうしたというのじゃ?」
「お前、死んで木の芽になんったんじゃ、、、?」
「妾が木の芽になる??お主、頭はおかしくなったか?妾がどうして木の芽なんぞに変身するんじゃ。そこに木の芽があるなら、元からそこにあったのじゃろうが。」
「。。。」
今の話を聞いて少し、頭の中を整理する。
あの戦いの後、確かにあそこには、新しい木の芽が生まれていた。
それを俺たちは、てっきりアイギスの生まれ変わりなどと思って、柵で囲って、毎日、水をやり、丁重に扱ってきた。
では、アイギスと戦う前はどうだったか?
そう言われると、以前からあそこに木の芽が生えていたような、生えてないような。。。
ぶっちゃけ、あんなところに木の芽があったところで、誰も気にするわけがない。
「まさかと思うが、人間どもは、その木の芽を妾の生まれ変わりとでも思っているのか?よく考えろ。妾が木の芽なんぞに変身できるわけなかろうが。まったく、根の葉のないもの勝手に崇拝するなんぞ、滑稽なことよ。これだから劣等種というのは。かっかっかっ。」
そう言われれば、そう言われるほど、あれは、ただの木の芽にしか見えなくなってきた。
やばい、ぐうの音もでないし、ちょっと恥ずかしくなってきた。
目の前で笑うバンパイヤ。
だた、一言、言ってもいいだろうか。
「ちっちゃくて可愛い!」
「黙れ!」




