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108グローリーホールの底には…(朱音)

 

『元』RGF社第一調査部隊曹長の朱音です。

 何とも不思議なことに、妖精さんの透明な膜に包まれて、あのグローリーホールを進んでいきます。


 えっ?最近、言葉遣いが変わったって?

 あれはRGF社の規律です。そうしないと、言葉遣いがなってないと言われてぶっ殺されます。

 というか、、、あれは、あたしの黒歴史です。それ以上に闇をほじくらないでください。


 グローリーホールへと突入して、どれほど時間が経過したでしょう。

 ときどき見える足場で休憩しては、あたしが妖精さんに魔力を補給し、再び、穴に下へ潜るという作業を何度も繰り返しました。


 妖精さん、、、最初出会ったときは不思議な感じがしました。

 グローリーホールの近辺にも似たような魔獣というか、虫がいて、いつも人間を襲うので駆除しています。なので、初めて見たときには、つい駆除してしまいそうになりましたが、こうも人間たちと関わっていると不思議な感じです。


 もう、上を見れば、グローリーホールの入り口が小さな点にしか見えません。

 より地下へと進むたび、休憩できそうな足場も徐々に少なくなっていきます。


「なんか、人が増えたせいか、重いのです。」


 と妖精さんは、霞という女性の方をじっと見ます。


「ちょ、ちょっと何で、こっち見るのよ。あたし、これでも痩せたのよ!」


 と次は霞が、じっとあたしの方を見ています。


「あたしは身長145cm、 体重40㎏です。」


 キリッ。

 自慢ではないですが、我が隊には体重にも厳しい規律があるのです。


「我が隊では、BMI20以下と決められてました。そこから、各個人に制限体重が設けられ、制限体重を超えるようであれば、制限体重以下になるまで、延々とグローリーホールの周囲の走り込み、食事抜きでした。体重には自信があります。」

「ご、ごめん。それは大変ね。というか、グローリーホールの周りで走らされているRGF社の兵士さんいたけど、そういうことだったのね。」

「単純にあたしが増えた分だけ重いのです。妖精さん、ガンバです!」


 と妖精さんを応援します。でも、まだまだ、底は見えず、はるか先です。


「うぅ。。。そろそろ、生気が。。。つ、つきそう。。。ねぇ、いい方法があるのだけど、どうせ足場がなんてもうないのだから、ここから自由落下して、地面に衝突する寸前にあたしの魔術で、衝撃を和らげるというのがあるんだけど。」

「なるほど、それはいいですね。」


 と言った瞬間に、


「却下だ!」「却下よ!」


 と二人が声をそろえて言います。


「大丈夫なのです。前回と同じ、実績があるのです。」

「待て、早まるな!」「待って、ストッ、、、」


 と言った瞬間に透明な膜が消えました。

 その瞬間に、体が宙にふわっと浮いたような感触が得られた後に、強烈な風が下から吹いてきます。


 膜が消えて自由落下をしているのでしょうね。

 最初、グローリーホールに落ちた時には、思わず悲鳴をあげてしまいましたが、落ちるとわかっていれば、この程度、あたしには何も問題はありません。高さ1000mの崖から飛び降りる訓練なんて何度も経験しています。


「ぎゃぁああああああ!!この羽虫があああああぁぁぁぁ。。。。」

「きゃぁああああああ!!何でまたなのおおおおぉぉぉぉ。。。。」


 二人は悲鳴をあげてますが、どうしてこの程度で悲鳴をあげてるのでしょう。

 高々、高いところから落ちるだけなんでしょうに。

 あたしは、出来るだけ、手足を広げ、空気抵抗を大きくします。

 それでも、下からものすごい風が吹き付けます。


 霞とタツヤは、空気抵抗を大きくするとか一切せずに、そのまま真下へと先に行ってしまいました。

 そのまま地面に直撃したら衝撃が凄いことになると思うのですが、大丈夫でしょうか?


 自由落下してからどれほど経過したでしょう。

 すごいスピードで落下しているというのに、未だ地底に着きそうにはありません。


 ふとそこへ、上から妖精さんが追いつきます。

 妖精さんのほうが軽いので、落ちるのに時間がかかると思われがちですが、実は、落下速度に重さは関係ありません。関係あるのは空気抵抗だけ。

 だから、空気抵抗が小さくすれば、体重の軽い妖精さんであっても、ここまで追いつくのです。

 昔、何度も、崖から落されたせいか、そういうことには詳しいのです。


「あら、妖精さん。」

「あら、朱音さん。タツヤと霞さんは?」

「どうやら、先に急いでるようで、先に行ってしまったようです。」

「あら、残念ね。」


 そうしてる間に、下から流れる空気の圧力、温度が微かに変化したことを察知します。

 おそらく、底は近い。


「そろそろ地底が近いのです。あたしに任せるのです。」


 妖精が魔術を放つと、まるでふわっと、布団の上に落ちたかのように、地面に降り立ったのです。

 さすが妖精さんです。完璧な魔術です。


 すでにタツヤさんと霞さんは、地面に到着していたようでした。

 ただ、若干、顔面が蒼白になり、睨むように妖精さんを見つめています。


「おい、アリエル。。。。」

「アリエルちゃんね。。。。」

「勝手に先に行くからなのです。ほら、ご覧なさい。こんな風に、あたしに任せれば、綺麗に着地できるのです。」

「お前な。。。」

「アリエルちゃんね、。。。。」

「。。。」

「。。。」

「。。。」


 そのあと、タツヤと霞は妖精さんとしばらく口論をしていたようです。

 その間に、あたしは、地面に降り立ち、ゆっくりと顔をあげました。


「えっ。。。。」


 その目の前にあったもの。


 背後ではタツヤ、霞と妖精さんが、激しく口論をしていますが、その光景を見た瞬間に、口論なんて耳に入らなくなりました。


 確かに、霞さんやタツヤさんから事前に情報は聞いていました。

 ですが、聞いていたのと、実際に目にするのはこうも違うものなのでしょうか。

 今、私の目の前に広がる光景、薄暗い大迷宮の中のですが、広いホールになっているようです。ですが、私の目をひいたのは広いホール何かではありません。そのホールの地面、そして、壁、岩、亀裂、といったあらゆるところから、数えきれないほどの無数のレッドダイヤの結晶がニョキニョキと生えていたのです。

 それも小さな結晶ではありません。人一人ぐらいの大きさはあろうかという巨大なレッドダイヤの結晶が無数に生えて、光苔の光でうっすらと照らし出されて輝いてるのです。


 そして、すでにその風景ですら、私の常識を凌駕しているすごい光景ですが、さらにその背景にあったもの。

 それは、重力に逆らうかのように、天井から斜めに建てられた立派なお城。

 まるで、中世のヨーロッパを彷彿させるような、立派なお城があったのです。


「な、、、、なんですか、これは。。。」


 しばらく、あたしは、背後の雑音を忘れ、その光景に見蕩れていました。


 昔、ベベルはあたしにこう言ったのです。


「なぁ、お前は、この大穴の底には財宝があると思うか?」


 もし、ベベルがここにいたのならば、あたしは声を大にして言ったでありましょう。


「ありましたよ。この大穴の底に、財宝はありました。それも、信じられないような、とんでもない程の財宝です。財宝でしか表現できないことが残念なほどに、すばらしい財宝です。」と。

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