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『腫れ物扱いの先輩が、私には優しい』  作者: もんじゃ
『腫れ物扱いの先輩が、私には優しい』
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第88話


 大学の夜間授業の前に労働をする。山吹先生の教え子が社長をやっている会社に入った、かなり大きな会社だった。社員と言ってもそんなすぐに即戦力になれるはずもなく、雑用などをこなしながら少しずつ仕事を覚えていく。

 社長はともかく、他の社員からはコネ入社と思われ冷たく扱われることもあったが本当のことなので仕方ないと黙々と働いた。徐々に話しかけてくれる社員も増えてはきたが……一人、どうしても俺に強く当たる上司がいた、俺より十歳年上の社長のお嬢さんだ、美人なんだけど性格がキツイ人だった。

 

 そんな職場に招かれざる客が来た。今時、総会屋なのか……明らかにその筋の者とわかる連中がやって来て居座った。会社の人達は皆、怖がってしまい……お茶を持っていこうとしている女性は脚が震えていて……お約束でお茶を連中にこぼしてしまうだろうと思って


 「……私が持っていきますよ」


 と代わりを申し出た。


 「失礼します」


 と部屋に入ると連中の視線が俺に注がれる。気にせずお茶を差し出したら


 「……アンタ、ここの社員か?」


 と連中の頭だと思われる男が俺に尋ねてくるので「はい」と答えたら


 「……なぁ、榊創司って名前に心当たりはあるか?」


 ……ここでも叔父の名前を聞くのかと内心驚いたが


 「……知りません」


 とこちらを見詰める目を見返して言ったら


 「……そうか」


 とだけその男は言って「……今日のところはアンタに免じて帰らせてもらう」と帰っていった。「知らない」と言ったのに……何だったんだ?


 そんなことがあった日から何故か社長のお嬢さんの態度も軟化してきたのだが……後程、それが少し困ったことになるとはその時の俺は思いもよらなかった。

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