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『腫れ物扱いの先輩が、私には優しい』  作者: もんじゃ
『腫れ物扱いの先輩が、私には優しい』
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第87話


 大学の入学式が終わり、クラスに分かれガイダンスが行われる。該当するクラスの教室に入ったら……ヤバいと感じた。これは肌感覚としか言えないものだったがクラス内を見渡し、一目見てこいつだと確信した。

 一目見てこいつには勝てないと思わされた男がいた、そいつもこちらを一目見て視線を反らした。

 ……若い頃の……全盛期の叔父さんでも勝てるかどうかわからない……と考えている内に「……何を考えてるんだ俺は、ここに喧嘩しに来た訳じゃないだろう?」と気付き、……関わることもないだろうと頭を切り替えて席についた。


 サークルの勧誘とかもあったが俺は働かなくてはならないので全て御断りした。本当は参加した方が友人とかできるんだろうが仕方ない。


 授業が始まったら、教授によっては演習の練習のように一年目から数人で資料を作成して発表する講義があって……よりによって初日に見た男と組むことになった。その時は少し頬が引きつった。向こうも向こうで「何でこいつと!?」という顔をしていたのでおあいこかもしれない。


 「……神宮寺じんぐうじ 真一郎しんいちろうだ、よろしく」


 神宮寺と名乗った男を間近で見ると無駄のない身体つき、無駄のない動きをしていた。恐らく何らかの武術でもやっているんだろう。勘がアラートを鳴らしているが……単位の為だ、とりあえず仲良く頑張ろう。


 アパートに帰り、携帯を見たら蛍からのメールがきていた。


 『先輩、お誕生日おめでとうございます。お時間のある時にお電話ください』


 そう書いてあったのでこちらから電話をかけて蛍と話す。


 「……先輩、お誕生日おめでとうございます。プレゼントを送りました」


 「プレゼントか……箱を開けたらリボンを着けた蛍が入っていたら嬉しいな」


 勿論、俺の妄想の中の蛍は全裸だ。


 「……私も本当なら先輩に直接お会いしたいです」


 すぐに会える距離では無いことはお互いわかっている。それでも声が聞けるだけでも幸せを感じられた。


 「……先輩、一年待ってください。来年のお誕生日は一緒に過ごしましょう」


 蛍はご両親を説得して俺と同じ大学を志望し、受かれば一人暮らししても良いと許可を得たらしい。


 「……あぁ、待ってる。愛してるよ蛍」


 「……先輩、私も愛してます」


 名残惜しいが勉強を疎かにしてはいけないので「それじゃ、また」と電話を切る。


 電話を切ったら左手で画像のページを開き、去年撮影した蛍の水着姿を見る。


 「……蛍、可愛い……可愛いよ」


 そう呟き、一人で寂しさを慰めた。


 後日、届いた蛍からのプレゼントは……レトルトカレーや缶詰が一杯入っていた……やっぱり蛍は母親っぽいなと思った。


 



 

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