第28話 3/27 ツチヤ
3/27(金)
ということで、さっそく送別会です。
将来への不安が全くないかと言われると、実際のところ不安な要素はてんこもりだけど、乗り切るしかないかなって思っている。
一度きりの人生だから、意外とホテル住まいのハローワーク通いも悪くないかなって思い始めてる。
送別会では、色んな皆から励ましの言葉をいっぱい貰っちゃった。
お別れ用の大輪の花束を、二十八部長と書いてツチヤ部長からいただきました。
また三十日にも渡してくれるらしいんだけどね。
「朝倉は、これからも頑張っていきます」
皆にそう言って拍手されて、これまでの感謝の言葉を告げられた。
すごく元気になっちゃったよ~~。
ということで、帰り。
最近定番の課長とトウヤ君が、私の帰りについてきました。
三人で談笑しながら帰るのも、もう今日で最後かな、なんて思うと寂しくなってきちゃった。
繁華街の途中で、トウヤ君と別れた。
そう言えば、トウヤ君にこの前の告白のお返事もしなきゃいけないな。
課長と二人で帰っていたら、彼から声が掛かった。
「朝倉、あのさ……」
なんだろう? と思っていた時、何やら見たことがある人が視界に入ったので、そちらに目をやる。
そこに立っていたのは、なんと――。
「ユーイチ?!」
「マドカ?!」
かつての婚約者ユーイチが、三メートルぐらい先に立っているではないか。
そして彼の隣には、お腹の膨らんだ女性が立っていた。
噂は本当だったようだ……。
やっぱり目の前で、本当だと言うことが分かるのはショックだな。
早くその場を離れたい。
「課長、行きましょう」
気を取り直して、課長の腕を掴んで、ユーイチたちとは逆の方向に歩き始めた。
すると、後ろからユーイチの声が聴こえた。
「マドカ、お前のことだから、またファッション感覚で男を選んだんだろ? 見た目ばっかり気にしてたもんな」
何やら悪口を言われているのが分かった。
ついつい立ち止まって振り返ってしまった。
「次の男も選んだ基準は、顔と金だろ? 表面しか気にしないマドカらしいな。まあ、結局、その男の金も使いつぶして、嫌がられるだろうけど」
かなりむっとした。
ちょっと結婚したらユーイチのお金を使っちゃおうかななんて思ってたけど、これまで彼のお金で洋服を買ったり色々したことなんて一度もない。というか、むしろ彼が司法修習生の頃なんて、私がずっとご飯代とか彼の生活費だって払ってたんだけどな……。
「洋服も着回しが好きなお前らしいな。この間は別の男と遊んでるのを見たし。結局、男も着回して、本当にクズ女だよ」
なんでそこまで言われないといけないんだ。
だけど、元々好きだった人にそこまで言われて、衝撃が大きすぎる。
お酒も回っているしで。ふらふらして来た。
「女、着回してんのはお前の方だろ? 弁護士様か何か知らないが、今まで色々金出してもらったあげくに捨てて、別の女と出来婚してるような男に言われたくないな」
課長が私の身体を支えながら、ユーイチに向かって話し始めた。
「こいつは、褒められたもんじゃないが、仕事の時だろうがなんだろうが、いつでもあんたのことを楽しそうに話してたよ。着飾ってたのも、あんたに可愛いって言ってもらうためだって。結果、貯金は出来てなかったみたいだけど、別に借金を作ったわけじゃない。一途に自分の事を好きでいてくれた相手に暴言を吐くあんたの方が、よっぽどクズ男だよ」
課長は、この数年、私が色々言っていたのを覚えていたんだ……。
「よし、行くぞ」
ユーイチがまだ後ろから何か叫んでいるようだったけど、私はもう振り返らず、課長と一緒にマンションへと帰ったのだった。




