084⚫️震える声を隠して
「マニュアルの解説どおりなら、なんとかなるかもしれません。」
「その’エネルギー転送弾’って名前からして怪しいぞ!」
「いえ、バーバラ大佐、これはわたしがつけた’愛称’。・・・それはさておき、こいつは、いわゆる’栄光の宇宙時代’の’ワープ理論’を応用した弾でして・・・。」
「技術長、ワープって、ドラマや映画に出てくるあれか?本当に昔はできていたのか?」
「ここは信じよう、ボビー。’愛と恋と青春と 夢とロマンと冒険を’だ!」
「トーマス、こっちに来てから、そのドラマにハマってるなあ・・・。」
緊張で張り詰めていた艦橋に、わずかな笑いが広がった。
「で、艦長。問題はどうやって最適箇所に撃ち込むか、ですね。」
赤く濁った海中で、噴火直前の脈動の中心を遠距離から特定するのは不可能だった。
さらに上空はプラズマ嵐で接近は不可能、海中は酸性濃度の暴走で、
複数艇を出せば互いのソナーが干渉する。
精密探知は、近距離の一箇所から行うしかない。
つまり、海中から複雑な隆起を見せる岩礁をすり抜け、
近づき、着弾点を特定しなければならないのである。
従って唯一の方法は、小回りの効く戦闘艇を水中に投下し、
広帯域ソナーを最大出力で稼働させ、
火山性振動の位相差から最適ポイントをリアルタイムで算出すること。
「わたしが行こう。艦長としての責任だ。」
「待て、マチルダ!こんなおもしろいことは、わたしがやる!」
「はいはい、お二人が言い争っている時間はありません。中庸を取って、わたしが行きます。うまくいった後の対応や中央への報告は、大佐級以上が複数いないと務まりませんからね。」
ボビーはすでにヘルメットを掴んでいた。
「お前、一人で艇を動かして、探査して、ロックして撃つ気か? 無茶だ。もう一人は必要だろ。オレも行く。」
トーマスは笑っていたが、その目は真剣だった。
・・・マチルダは一瞬の沈黙の後、静かに決断した。
「ボビー・・・いや、ロバート・ウィルフレッド中佐。行ってくれ。トーマス・ベルナー中佐もだ。必ず戻ってくるのだ。約束だぞ。」
その声は、わずかに震えていた。




