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魔導書ライラと集めましょう?  作者: 十六夜の懐中時計
第三章『火打ち箱』を集めましょう?
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魔導書との抵抗

「さぁ、お姉ちゃんと一緒に登校しましょ?」

 カレンさんが笑いながら、僕たちの右手を引っ張る。

「ど、どうするんだ、この状況!?」

 僕は一緒に引きずられている二人をクレーマーのように問い詰める。

「も、もっかい昨日みたいにやってみるの、『蒐集』?」

 グースが不安そうにライラに尋ねる。

「え、ええ! そうするしかないでしょ、『子守唄』、略式詠唱でいいから、昨日の自動小銃出しなさい!」

 威勢よく彼女はそう答えた。

「分かったんだよ。叶え、童たちの願いよ(マザーグース)!」

 グースが短く唱えると昨日公園で見た重機関銃が現れる。

 ただし、大きさは以前より少し小さく現れたのも一挺だけだ。

「略式なので少し小さめだけど、腐ってもブローニングだから威力は抜群なんだよ!」

「私自動小銃って言ったじゃない! 私たち引きずられてるんだから、昨日みたいに三脚の前に立って撃てるわけじゃないのよ?」

 昨日、ライラはあれを撃ったのか。

 反動によく耐えられたものだ……

「大丈夫なんだよ! ブローニングだって私がステッキをふるえば勝手に焚書官を狙って撃ってくれるの」

 そう胸を張って言う彼女の右手にはステッキが握られていた。

 グースだけ見ていれば、日曜朝のキュアキュアしたアニメのようにファンシーでほほえましいのだが、操作するものが血生臭(ちなまぐさ)すぎる……

 あと、彼女は非常に重要な問題を忘れているのだが大丈夫なのだろうか?

「あんた馬鹿なの!? 何で掴まれてるほうの手にステッキを出すのよ! それじゃステッキが振れないじゃない……」

 僕が口を出す前に、ライラがグースに叫ぶ。

「あ…… どうしようなんだよ!?」

 そう言いながらグースが慌てる。

「全く魔導書(グリモア)とは思えないアホさ加減ね……」

 ライラがあきれ口調でそんなことをのたまっているが、アホさで言えば彼女も相当なものだと思う。

「どうするんだい、この重機関銃?」

 僕がそう尋ねた丁度その時だった。

「あ、若葉。『蒐集』、私の手を見るの! 焚書官の手が外れたんだよ!」

 そうこちらに嬉しそうに彼女が報告してきた。

 よく見れば僕らの手はいつの間にかカレンさんの手から解放されていた。

 これ幸いと、グースがステッキを振りながら笑う。

「アハッ、とりあえずこれで解決なの! ってあれ? 何で銃声が聞こえてこないんだよ?」

 その後何度もグースがステッキをふるっても、ブローニングの銃声が響くことはなかった。

 僕らも不思議に思い、ブローニングのほうを向くとそこにはカレンさんが立っていた。

 彼女の手にはブローニングの砲身だったであろうものが握られている……

「もう、若葉君ったら。魔導書(グリモア)の管理はしっかりしなきゃだよ! 若葉君は罰として今晩私の抱き枕になってもらうんだからね!」

 恋愛ゲームで出てくる世話焼きの年上のお姉さんみたいなセリフを言いながら、彼女はブローニングを鉄くずに変えていた。

「何あれ、人間ってあんなにぶっ飛んでるものだったかしら?」

 顔を青くしながら、ライラがつぶやく。

 君らがカレンさんに何かしたからこんなことになっているんだと思うんだけど……

「『蒐集』、あれは人間じゃないと思うんだよ……」

 引き気味にグースが言った。

 まぁ、普通の人間は重機関銃を潰しながら、萌台詞を言う事はないはずだから、彼女の意見に僕も同意する。

「これもう、諦めるしかないんじゃない? 抵抗しても労力の無駄よ」

 まだ一日が始まったばかりなのに、疲れ切った口調でライラがそう言う。

 確かにデメリットもなさそうだし、諦めるのもありかもしれない。

「でも、若葉を独占されるのは困るの! 私たちが抵抗しなかったら、若葉の貞操は一瞬で散ると思うんだよ!」

 グースはライラにそう強く主張した。

 前言撤回、デメリットしかなかった。

 グースの言葉を聞いてみてよく考えてみると、僕は諦めたら「カレンお姉ちゃん(遠い目)」の相手をさせられ続けることに気づいてしまった。

 そんなことになれば、僕の精神は崩壊するだろう……

「じゃあ、どうしろって言うのよ?」

 ライラがふて気味にグースに尋ねる。

 彼女ですら、今のカレンさんは持て余してしまうようだ。

「あれと同盟を結ぶんだよ!」

 グースが鼻息を荒くしながら、ライラに言った。

「えぇ、あれに話って通じるのかしら……」

 珍しくライラが否定的な意見を言う。

 まぁ、カレンさんのあんなヤバい姿を見たら誰だってそう思うだろう。

 それを予期していたのか、グースがすかさずどういう方法でカレンさんとコンタクトをとるか話す。

「若葉をダシにすれば絶対食いついてくからうまくいくと思うの!」  

「なるほど、『子守唄』にしてはナイスアイデアね!」

 は?

 グースの出した案にライラが賛同しているが、どこがナイスアイデアなのだろうか?

「それに上手くいけば、アレに便乗して若葉に接近できると思うんだよ……」

「途中で焚書官を眠らせておいて、私たちだけで若葉を楽しむってのもありよね……」

 彼女たちはすっかりその気になってひそひそ打ち合わせを進めている。

 冗談じゃない!

 僕はそう思い、二人に口を出す。

「ち、ちょっと二人とも待ってよ! そんなことしたら僕はカレンさんに襲われちゃうよ」

 自惚れでも、何でもなく僕は彼女に喰われる自信がある……

「大丈夫なんだよ! 決して二人きりでイチャイチャさせないの」

 グースが堂々とそう言いきる。

 本当に大丈夫だろうか?

 そんな不安が顔に出ていたのか、ライラがグースに続いて僕に言う。

「何で不安になってるのよ? 二人きりを阻止できなかったら交渉の意味がないじゃない! 少しぐらい考えて話しなさいな。だから、若葉はモテないのよ」

 ド正論が僕の胸に突き刺さる。

 打ちひしがれている僕を尻目に、彼女達はそう言って意気揚々とカレンさんの方へ歩いていくのであった。


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