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魔導書ライラと集めましょう?  作者: 十六夜の懐中時計
第三章『火打ち箱』を集めましょう?
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焚書官との対話

「ど、どうしたんですかカレンさん! そんな格好して?」

「どう? 可愛いでしょ? 頑張って着飾ってみたんだー!」

 彼女は僕の疑問に疑問文を返してきた。

「控えめに言ってすごくかわいいです」

 彼女の意外な姿に見とれていた僕は思わずそうつぶやいてしまった。

「本当!? 若葉君がそういってくれるなんて……」

 カレンさんはよほど嬉しかったのか、腰が抜けた警察官たちを踏みつけながら、キャッキャと笑って飛び跳ねていた。

 違う、そうじゃない。

 そう思った僕は気を引き締めて口を開く。

「一体突然どうしたんですか? 決心がつきましたか? あれ、でも少し時間がほしいと言ってた気が……」

 少しまくし立てるように彼女に尋ねる。

 本当はキャラぶっ壊した挙句そんな戦闘に向かない服を着て敵陣にやってくるとか頭大丈夫ですかと聞きたかったが、流石に聞けなかった。

 いけない、こんな発想が出る時点で相当ライラ達に毒されているようだ……

「だって、拠点に戻ったら、部下たちが慌てて私に「要注意人物『熊野 若葉』の住居に日本の警察が押し寄せてます」って報告してくるんだもん。急いで若葉君を助けに来たんだよ!」

 そんな可愛い口調で言うことでもないし、さっきまでの威厳にあふれた話し方は何だったのか。

 しかも焚書官が魔導書(グリモア)の契約者を助けに来たってどういうことなのだろうか?

「それで警察の腰を抜かしてくれたわけですね。それに関してはありがとうございます」

 まぁ、助かったことは事実なのでしっかり礼を述べておく。

「いいの、もっと私を頼ってくれていいからね。私は若葉君のお姉さん何だから!」

 ムフーッと言いながら大きな胸を張って、彼女は言った。

 僕に姉がいた記憶はないし、今後エロ同人のように義姉が増える予定もない……

 しかし、最初出会った時もカレンさんはポンコツ臭いと思ったが、ここまで酷くなかったはずである。

 そう思った僕はオブラートに包みながら、彼女に質問をぶつける。

「そういえば、まだ口調治らないんですね」

「もうこっちのモードを知られちゃったから、若葉君相手には仕事モードでしゃべる必要ないかなぁと思ったんだ。若葉君はあっちのほうが好きなら、あっちに戻すよ? 違った戻すぞ?」

 どうやら今の方が素のしゃべり方らしい。

「いえ、素で話すカレンさんのほうが僕は好きですよ」

「そうなの? じゃあ、このままにしよっと」

 そう彼女は言うが、ここは二人きりの空間ではない。果たしてこのままで大丈夫なのだろうか?

 こんな口調で男としゃべっている姿を部下にでも見られたら、上司として終わりそうなのだが……

「でも、間に合って良かった。若葉君は私の弟とヴァチカンの同盟者になるんだし、家を警察に占領されたままじゃ問題だもんね」

「そうですね。警察も撤退を始めましたしね」

 いつの間にか、カレンさんに踏まれていた警察官たちはパトカーに乗って現場から逃走を図っていた。

 これで一安心だ。

 ん? ちょっと待て、僕。

 今僕は恐ろしい文言を聞き流さなかったか?

「か、カレンさん今なんておっしゃいました?」

「若葉君は私の弟になるって言ったんだよ? だから、これからはカレンお姉ちゃんって呼んでね」

 ウィンクしながら、カレンさんはそう僕に言う。

 そこの部分も問題発言ではあるが、それよりやばい文言が聞こえた気がする。

「さ、さっき、僕がヴァチカンの同盟者になるっていってませんでしたか?」

 僕は震えながら彼女に問う。

「うん、そうだよ。あ、そういえば、公園での提案の返事してなかったね。和解の件は謹んでお受けするよ!」

 三つ指をつく新妻のように彼女はそう言った。

「え、でも時間がほしいって」

「あれは、若葉君がじっと見つめてくるせいだもん…… すっごい焦ったんだからね!」

 いや、急にラブコメに路線転換されても困るんですけど……

「あと僕が提案したのはカレンさんとの和解ですよね。なのにどうして、僕はヴァチカンの同盟者になるんですか?」

 肩に乗せた二人の重みによる痛みを忘れて、僕はカレンさんに詰め寄る。

「だって、私一応上級焚書官だし、和解する相手もそれ相応の立場がいるんだもん!」

 もんで済む話じゃない。

 どうしてライラにしろ、カレンさんにしろ、アホの癖に重要なポジションに居るのだろうか?

 杏仁豆腐馬鹿が全魔導書(グリモア)を統べるとかギャグだろ。

 そんな考えが浮かぶぐらい、肩の重みと疲れで僕は気が立っていた。

「それに若葉君がその立場だったら、私と結婚できるようになるし……」

 おかげで、彼女がぶつぶつ言っている内容が全く聞こえない。

「すいません。カレンさん今なんて言いました?」

 そう尋ねると彼女は顔を赤くしてこたえる。

「何でもないよ! それより私のことはお姉ちゃんって呼ばなきゃだよ、若葉君?」

 何言ってんだこいつ。

 思わずこの言葉を口に出しそうになった。

「何言ってるんですか、カレンさん。もう肩が限界なので、家に帰りますね」

 最後の力を振り絞って、自分のセリフにオブラートを包み、僕は歩き始める。

 僕がkeep outのロープをくぐり抜けて壊れた玄関に向かおうとしたとき、頬を膨らましたカレンさんが僕の行く手を阻む。

「駄目だよ! 私のことお姉ちゃんって言わない限りここは通さないからね」

 この時、グースを起こして銃を作らせて彼女を撃たなかった僕を褒めたたえてあげたい。

 何とか我慢した僕は怒りに震える唇をさらに震わせ、渋々言う。

「お、お姉ちゃん! これでいいでしょう? 肩が死にそうなんです。早く通して」

 完全に自暴自棄というか投げやりに僕は彼女に言う。

「えへへ」

 彼女は締まりのない笑顔をさらして膝から崩れ落ちた。

 もう反応する余力がない僕はそれを無視して、家に入って行くのであった。





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