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魔導書ライラと集めましょう?  作者: 十六夜の懐中時計
第三章『火打ち箱』を集めましょう?
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魔導書との安堵

「あ、若葉が目を覚ましたわよ!」

「本当なの!? もう体は大丈夫なの?」

 僕が目を開くと、視界に二人の少女が写り込んだ。

 僕はいつの間にか、公園のベンチに寝そべっているようだ。

 彼女達は心配そうに僕の顔を(うかが)っている。

「うん、もう痛みもないし大丈夫そうだよ。これはグースのおかげなのかい?」

「そうなんだよ! 治療がうまくいってよかったの……」

 そう言って彼女は安堵の息を漏らす。

「ありがとう、多分グースが治療してくれなきゃ僕は危なかったんだろう。なんせ、意識を失ったわけだし」

 そう言って彼女の頭をなでる。

「ちょっとちょっと、私だって頑張って焚書官倒したんだから誉めてくれたっていいじゃないのよ!」

 ライラが顔を膨らましながら、僕に向かって主張する。

「そうだよ! カレンさんとの戦いはどうなったんだい?」

 僕は急いで体を起こして、二人に尋ねる。

「大丈夫、万事うまくいったわ!」

「ほら、あれ見るの。あそこでぶっ倒れてるんだよ!」

 そう言って彼女たちが指差した先にはあおむけに倒れているカレンさんがいる。

 ただし戦闘中とは異なり、頬の土埃や擦り傷などは消えていた。

 おそらくグースが治療したのだろう。

 彼女達が人道的配慮をできたという事実に感動しつつ、確認しなくてはならないことを彼女たちに問う。

「じゃあ、禁書は『蒐集』できたのかい?」

 そう言った瞬間、グースの顔が青ざめ、ライラは目を見開く。

「忘れてたの……」

「そういう大事なことはもっと早く言いなさいよ、若葉!」

 そんな無茶な……

 ライラ達はそう言って、慌ててカレンさんのほうへ駆け出し、その衣服をまさぐる。

「あったの! って傷だらけなんだよ!?」

「これは少しまずいわね…… その子を貸しなさいな、『子守唄』」

「うん、分かったんだよ」

 そう言って彼女はライラに釘だらけの本を手渡した。

「名を縛られし哀れな禁書よ、求めて至れ我が病室に!」

 ライラが数秒禁書に触れた後、詠唱をする。

 例のごとく、禁書は光の粒子となって彼女の胸元に収束していく。

「これで3冊目蒐集完了かい?」

 僕が尋ねると、彼女は首を振って言う。

「まだわからないわ……」

「どういうことだい?」

 もうライラの中に入ったのだからこれで解決ではないのだろうか?

 するとその疑問に彼女が答える。

「禁書って言うのはヴァチカンがその真名を縛って無理やり作ったものなのよ。その呪縛を解いてやらない限り、私の中の物語として『蒐集』できないわ」

 彼女が真剣な声音で告げる。

「つまり、その呪縛が解けるかどうかまだ分からないということかい?」

「いえ、呪縛は時間さえあれば必ずこの私の力で解けるの。問題は解けたときに禁書だった子が物語として生きているかどうか」

「なるほどね。最悪の場合、魔導書(グリモア)の残骸ができるだけっていうこともあり得るなら、諸手を挙げて歓迎もできないね……」

 残骸が現れて名前を確認したら、顔なじみの魔導書(グリモア)だったなんてこともあるのだろう……

「禁書の心配をするのも重要だけど、今はとりあえず焚書官の処遇について考えたほうがいい気がするの」

 沈痛な空気に包まれた僕らの間に、グースの声が割り込む。

 僕らはハッとして、カレンさんのほうへ顔を向ける。

「ウッ、うーん?」

 僕らの視線の先では、ちょうど彼女が呻きながら目覚めようとしていた。

「カレンさん、目は覚めましたか?」

 一応先ほどまで敵だったので、かける言葉が見つからずあたり触りのない言葉を僕は彼女に投げかける。

 だが、立ち上がるのが大変そうな彼女を見て、結局僕は近づいていって手を指し伸ばしてしまった。

「あ、ありがとう少年」

 少しぎこちないながらも返事をしながら、彼女は僕の手をつかんで立ち上がる。

「すいません、カレンさん。少し魔導書(グリモア)について貴方と話したいんです」

 僕は彼女にそう求める。

 確かに魔導書(グリモア)は危険だけれど、カレンさんたちヴァチカンのように無差別で燃やし尽くしていい存在ではないと思うのだ。

 だが、彼女はそんな僕の言葉を聞いてはいないようだった。

「ひぃ、いや、もう嫌だよぉ…… 怖いよぉ、助けてよぉ若葉君」

 彼女は突然涙を流しながら、僕の後ろに回って僕にしがみつく。

 何が起こってるかさっぱりわからない。

 僕が対話を要求したら、いつも気丈なカレンさんが幼女のように泣きじゃくって背中に抱き着いてきた。

 あまりの事態に、「カレンさんって僕の名前覚えてたんだ」とかいうどうでもいい感想しか浮かんでこない。

 そんな僕に向かって投げられる声が二つあった。

「ねぇ焚書官、貴方なんでそんなに若葉に密着してるのかしら?」

「多分私たちに対する挑発なんだよ!」

 彼女達が怒気を(にじ)ませながら、こちらに近づいてくる。

 彼女らとの距離が短くなればなるほど、カレンさんは体を震わして必死に僕にしがみついてくる。

 その行動が、ライラたちの怒りを増大させているようだ。

 だが、彼女らが起こっている理由も、カレンさんが震えてて少しかわいい理由も何もわからないままなのである。

 結局何がどうなって何が原因でこんなカオスになっているか分からない僕は、考えるのを止めた。


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