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魔導書ライラと集めましょう?  作者: 十六夜の懐中時計
第三章『火打ち箱』を集めましょう?
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魔導書との準備

 ゴーレムは鈍重な見た目とは裏腹に、軽快なステップで住宅街を駆け抜けていく。

「凄いのー! 高くて楽しいんだよ!」

「本当ねー! せっかくだし、もっとスピード上げましょうよ!」

 一応今天敵に追われている立場にあるのだが……

「とは言ったものの、まだ焚書官は追ってきてないし、ゆっくりできそうよ。ケガはない、若葉?」

 彼女は後方を確認しながら、僕に質問する。

「大丈夫だけど、色々展開が急で頭が追いついてないよ。何でカレンさんは急に襲ってきたんだろう?」

「アレの鼻が良かったのよ。私の匂いは『火打ち箱』の道具のおかげで消せるから気づかなかったんでしょうけど、『子守唄』の匂いを嗅ぎ付けちゃったんでしょうねー」

 いつぞやの魔導書(グリモア)を匂いで見つける焚書官という話は本当だったのか……

「それで杏仁豆腐のおかわりが欲しくなったから、私が玄関の様子を見に行ったら、焚書官の若葉に対する殺気がダダ漏れだったのよ。だから『子守唄』を呼んでぶっ放してもらったわけー」

「なるほどね、僕は気づかないうちにピンチに陥っていたのか」

 ただ、杏仁豆腐に救われたと思うと少し釈然としないが。

「でも、私の能力を耐える焚書官なんて珍しいの。大抵あれで死ぬか命乞いをしてくるんだよ」

 グースが可愛らしい口調でもの凄く物騒なことを口にする。

「あれ、僕にあたったらどうするつもりだったんだい……」

「大丈夫なんだよ! 私の能力は『想像』だから、若葉の頭ぐらいなら作り直せるんだよ!」

「というわけで、これからは自爆も視野に入れて作戦を練れるわよ、若葉!」

 そんなもの視野に入れたくない……

 というか、自爆って作戦に入るのか?

「あら、あっという間に着いたわねー」

 僕が暢気にくだらないことを考えていると、ライラが声を上げて、前方にある公園を指差した。

 それは前に僕らがゴーレムの試運転をした公園だった。

 ただ以前と違って、公園にはkeep out と書かれたロープが至る所に張られていた。

「なんか、凄惨な事故現場って感じだね……」

「まぁ、一応『人払い』を張っとこうかしら。保険は重要よねー」

 そう言って、彼女は『人払い』の詠唱を始める。  

「人の子よ、我らが聖域を犯すというのならば、容赦はしない。疾く去ね!」

 元々人がいないせいで効果が分からないが、彼女は『人払い』を張り終えたようだ。

「カレンさんに『人払い』は効くのかい?」

 効いてくれるなら、これからは家に『人払い』を張っておけばカレンさん対策が可能になる。

 御近所さんとかもこれなくなるので、生活に支障は出そうだけれども……

「いや、あそこまで化け物じみてると効かないわよ。ただ、アレの部下とか他のヴァチカンの連中が入ってこれなくなるかもしれないわ」

「なるほど、じゃあ戦闘は確実に発生するわけだ」

 ████市の財政担当には悪いが、僕は戦闘の覚悟を決める。

 命のやり取りが近づいていることを僕は再確認した。

 死ぬかもしれないのも、人を殺すかもしれないのも怖いが、『火の鳥』の後のライラの言葉が僕を奮い立たせてくれる。

「そういうことよ。だから、迎撃の準備をしましょうか」

「迎撃?」

「『子守唄』、ありったけのクレイモアとブービートラップを用意して頂戴!」

「オッケーなの! 若葉を殺そうとした奴には殺意全開のお手製トラップを用意してやるんだよ!」

 そう言って彼女は詠唱を始める。

「さぁさぁ、ともに歌いましょう? 唄は貴方の目の前にあるのだから。声を枯らしても、血を吐いても、喉が焼き付いても歌い続けましょう? ステージは貴方の目の前にあるのだから。叶え、童たちの願いよ(マザーグース)!」

 詠唱が終わると、公園の入り口付近に大量の三脚とそれに付随してワイヤーが現れる。

 同時に空き缶やらヘルメットやらも現れる。ただしこちらは数が少ない。

 いつの間にか、グースの手には赤いボタンのついたスイッチのようなものまで握られていた。

「こっちは準備オッケーなの! ワイヤーでも、遠隔でも起爆可能なんだよ!」

「アレが入り口を通るのが楽しみだわ。ウフフ、若葉を殺そうとした罪は重いわよ!」

 殺意全開の言葉通り、嫌らしいトラップがこれでもかというほど張られている。

「いや、やりすぎじゃない、これ? こんなの死体も残らないような気がするんだけど……」

 あまりの光景に先ほどの戦闘への決心が揺らぎそうになった。

 まぁ、あちらもこちらを殺しに来ているのだから仕方がない面もあるが。

「大丈夫よ。『子守唄』がいるんだし、復活させて拷問すれば心だけを的確に折れるわ!」

「いい考えなんだよ! 私の能力フル活用で親指つぶし機、ブレストリッパー、スカベンジャーの娘に鉄の処女まで全部用意するんだよ!」

 何を持って大丈夫といえるのだろうか?

「ファラリスの牡牛も頼むわよ」

「了解なんだよ!」

 彼女達は殺すよりもえぐいことをする気満々のようだ。

 良く見れば、二人とも目が据わっている。

「これであとは、カレンさんを待つだけかい?」

「いや、まだよ! 油断はできないわ。相手は化け物なのよ。さぁ若葉、ゴーレムで落とし穴を作るわよ」

 僕は生まれて初めて、殺意を向けてきた相手に同情した。



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