表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書ライラと集めましょう?  作者: 十六夜の懐中時計
第三章『火打ち箱』を集めましょう?
38/63

魔導書との性癖

「んー! 美味しいわ! でも若葉のくせになんか生意気ね」

 晩御飯を済ませ、妹が風呂に入っている間にライラとグースが僕特製の杏仁豆腐を食べている。

 ライラのコメントに関しては、流石に理不尽すぎると思う……

「そこは素直に若葉へ感謝すべきなの、『蒐集』」

 グースがライラをそうたしなめる。

 僕には、ライラにそんな殊勝な心がけができるとは思わないのだが……

「なんでよ? 若葉は(あて)なる私の下僕なんだから、これくらい当たり前よ」

 僕は彼女の下僕になったつもりはないのだが。

「そんなこと言ってると次こそ若葉に捨てられるの」

「い、いやそんなことないわよ! 『法の書』のときもあんたのときも若葉は私を選んでくれたのよ」

 ライラは必死になってグースの言葉を否定している。

 僕は彼女を捨てる事なんてありえないが、面白そうな会話なので黙って聞くことにする。

「次も選んでくれる保証はないんだよ。次出会った魔導書(グリモア)が『ドグラマグラ』とかだったら、若葉がコロッとやられちゃうかもなの」

「あの天然おっぱいオバケの話はやめなさいよ!!」

 たった十文字程度の言葉なのに、僕はどんな魔導書(グリモア)か興味を持ってしまった。

 それをグースに悟られたのだろうか? 彼女はライラに向かって言った。

「若葉は大きい方が好きかもなの」

「そ、そんなこと若葉に限ってないわよ、多分……」

「案外、若葉はムッツリだからあり得るかもだよ?」

「確かに、若葉なら隠れて『法の書』に欲情しててもおかしくないわね……」

 いつの間にか、僕の性癖談義になっている。

 これは面倒臭い質問が来そうだ。

 それを回避するため、僕は彼女たちの会話に割って入ろうとする。

「せっかくライラも本調子になったことだしさ、夜風にあた――」

「ねえ、若葉! 若葉は無駄に乳の大きいホルスタイン女と慎ましくてスマートな体型のレディのどっちが好き?」

 馬鹿デカイライラの声が僕の提案は遮る。

「庇護欲をそそる小柄な女の子も選択肢に入れるべきなんだよ!」

珍しくグースも声高らかに主張してきた。

 これはどれを選んでも、僕の変態認定は免れそうにない。

 ここは綺麗事を言って誤魔化そう!

「僕は胸の大きさとか体型関係なく、ライラを選んだんだよ。だからそんなこと気にしなくていいよ」

「騙されちゃ駄目なの、『蒐集』! 男はみんなそう言うけど、いざ自分のタイプの女性が現れるとホイホイついていくの。今までの契約者は妻子持ちなのにそうやって浮気ばかりしてたんだよ」

「じゃあなおさら、若葉のタイプを把握しなきゃならないじゃない! ということで、さっさと吐きなさい、若葉」

 本当にグースは契約者に恵まれなかったようだ。

 だが、今はそんな人の心配をしている場合ではない。僕は今窮地に陥っているのだ……

「そう言われても、僕は元来そういうことに疎いから何とも言えないよ」

 カマトトぶって僕はどうにか逃げようとする。

「『蒐集』、今すぐ『法の書』を出すんだよ! 男の人って性欲に正直だから一番好みの体型の魔導書(グリモア)が目の前で誘惑して来たら興奮するに違いないの」

「『子守唄』、ナイスアイデアよ! そうと決まれば早速アレを限定開放しましょう」

 そう言って二人は恐ろしいことを実行しようとしだした。

 彼女らは異性というより家族、というか手のかかる娘ぐらいの感覚で接することができるから問題ない。

 だが、エルさんは流石にまずい。性欲旺盛な男子高校生にあんなご立派なたわわをおしつけたら、如何に我慢強い僕でもどうなるか想像に難くない。

 そんな切羽詰まっていた僕に救いの手を差し伸べたのは、玄関のインターフォンの呼び出し音だった。

 ちょうど妹は風呂に入っているし、ここから脱出する大義名分として非の打ち所がない。

「おや、誰か来たようだね。僕は少し失礼するよ。風呂は二人で先入ってていいからね」

 白々しく僕は彼女たちに告げて、一目散に玄関口へ向かう。

 この時、僕は焦っていたせいかインターフォンのモニターを見ていなかった。

 ここで来客が何者かを確認していれば、次なる災難にもう少しはうまく対応できていたかもしれないのに……

 僕は多幸感を覚えながら、ドアを開く。

「やぁ、少年。また会ったな!」

 ドアを開くとそこには魔導書(グリモア)の天敵その1が立っていた。

 燃えるような赤銅色のポニーテールを風にたなびかせ、儀礼剣を腰に帯刀する様はよくフィクションで見る女騎士そのものであった。

 彼女の姿を視認した瞬間、僕の頭の中でニーチェが「神は死んだ」と叫んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ