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魔導書ライラと集めましょう?  作者: 十六夜の懐中時計
第二章『マザーグース』を集めましょう?
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魔導書との蒐集2

「で、結局用件はなんだったのよ、『子守唄』?」

 数十分かけて杏仁豆腐を味わうことで冷静になった彼女がグースに問う。

「つまり貴方に『蒐集』されたままでも、若葉と一緒にいられる方法はないかってことなの」

 グースはライラに答える。

「質問なんだけど、必ず彼女を『蒐集』しなきゃまずいことでもあるのかい?」

 彼女が『蒐集』されないほうが、他の魔導書(グリモア)と会わなくて済むし安全に思えるのだが。

「何言ってんのよ!? 魔導書(グリモア)を『蒐集』しなかったら、世界なんてあっという間に壊れちゃうわよ。こっちはまだ、世界の再構築ができるあの子も見つけてないんだし……」

 それでもまだ不自然な点がある。それが気になった僕はさらに質問を続ける。

「じゃあ、何で今までは崩壊しなかったんだい? 君が眠っている間は他の魔導書(グリモア)は野放しだったんだろう。それに再構築の子もいないのならどうやって世界は存続したんだい?」

 なぜ今になって『蒐集』が必要なのか。

「今までは世界がうまく連中を隠せてたのよ。目の前に例外がいるけど…… 奴が目覚めるまではね」

「奴?」

偉大なる昏き魔導書(グリモワール)のことよ。正式名を『アル・アジフ』というのだけれど、そいつは異常なほど強大な力を持っていてね。漏れた力が他の魔導書(グリモア)を強化したり活性化させるのよ」

 なんということだろうか。もうやばそうな匂いしかしない……

「貴方と契約する時言ったでしょ? 私としても困ってるって。私が目覚めた理由は主にあいつよ。おかげで夢の中で杏仁豆腐食べてる最中に因果律が私を起こしに来やがったのよ!」

 怒るところはそこではないと思うのだが。

「あれが目覚めている状態が続けば、契約者を得た魔導書(グリモア)だらけになって世界はおじゃんね」

 軽い口調で彼女はおぞましいことをのたまう。

「なるほどね、こりゃ『蒐集』が必要なわけだ」

「ちなみに最終目標は『アル・アジフ』の『蒐集』だから、戦力増強もしたいっていうのもあるわ」 

「勝手にやばい最終目標を立てないでくれるかな……」

 まぁそうしないと世界が滅ぶのでやるしかないのだろう。

 僕だってまだこの世界には未練はあるし……

「話は終わったの? 結局、『蒐集』は私を出し入れできるの?」

 グースはしびれを切らしたのか、少しまくしたてるようにライラに尋ねる。

「あら、この私を誰だと思ってるの? 数多の魔導書(グリモア)を統べるという肩書は伊達じゃないの!」

「つまり、できるんだね」

「無論よ! 条件はあるけどね」

 フンスと胸を張りながら彼女は答える。

「「条件?」」

 僕らは声を合わせてライラに尋ねる。

「セキュリティの関係で基本的に『市街』以上のクラスの子たちだけしか出し入れはできないわ」

 まぁ、当たり前の待遇差であろう。『牢獄』の連中を好き勝手に外に出していたら洒落にならないだろうし。

「ちなみにグースは前どの階級だったんだい?」

「えーとちょっと待ってなさい。古い情報だから、んー『煉獄』ね。貴方昔やんちゃでもしたの?」

 エルさんより酷いとこにいたんですけど……

「『蒐集』こそ覚えてないの? 私が貴族に騙されてるときに会ったよ」

「あー あのぼろ雑巾みたいになってたの、『子守唄』だったかしら。確かにあの時はデブ伯爵に洗脳されててめっちゃ危険だったから『煉獄』に入れたんだわ」

「いくら、700年前だからって『煉獄』に入れた魔導書(グリモア)ぐらい覚えてくれていても良いんだよ……」

 700年前って言われても実感が全くわかない。人には理解できない話である。

「あんた、すっごい似てる妹がいるせいでこんがらがるのよー」

 姉妹って基本そんなもんだと思うのだが。

「でも、今回は危険じゃないからグースを『市街』に入れられないのかい?」

 100年単位の世間話が始まる前に、僕は話を戻すためライラに尋ねる。

「攻撃系の魔導書(グリモア)なのよ? それに幻影世界(ファンタズマゴリア)に引きずり込まれといてなんで危険じゃないっていえるのよ。中で殺されかけたんじゃないの?」

 彼女の言う通りである。具体的には4回ほど死にかけた。

「殺されかけたけど、それは彼女のせいじゃなくて今までの人間が悪いと思うんだ」

 彼女の根は優しいと思う。そうでなければ、彼女は幻影世界(ファンタズマゴリア)の最深部にこもるのではなく、復讐に走っているだろうし。

「危険なことには変わりないと思うんだけど」

 彼女が僕に指摘する。

「そこは僕が教えて更生させるさ。人に何かを訴えたいときは幻影世界(ファンタズマゴリア)じゃなくて言葉でいいんだって」

 時間はかかるだろうが、それぐらいやる覚悟はある。

「相手は魔導書(グリモア)なのよ? 若葉がそんなに優しくする必要はないの」

「そうやって傷つけられたのがグースじゃないか!」

 僕は声を荒らげながら、主張する。

 しばらく沈黙が部屋を支配する。

 やがて考えがまとまったのか、ライラが口を開く。

「若葉ってこういう時無駄に頑固そうだから、今回だけは折れてあげるわ。いい? 今回だけよ!」

 口を渋らせながら彼女は言う。

「ありがとう、やっぱり君は最高の魔導書(グリモア)だよ!」

 そう言って、グースにハイタッチをする。

「若葉と一緒にいられるのね!?」

「えぇ、私も若葉のやさしさに助けられたんだし……」

 ライラがグースにごそごそとつぶやく。

「それを素直に若葉に言えばいいと私は思うの……」

「ん? グースどうかしたのかい?」

「いや、何でもないの。それより、早く私を『蒐集』しなくていいの?」

 グースがライラに告げる。

「そ、そうね。じゃあサクッと行っちゃいましょう」

 そう言って彼女はグースに手を触れる。

 数秒してライラが詠唱する。

「哀れな『子守唄』よ、辿りて至れ我が市街に!」

 彼女が唱え終わると、グースは光の奔流となって吸収されていった。

「よし。順調に2冊目終了ー! これで攻撃力がグーンと上昇したわね」

 ようやっと、まともに戦力がそろい始めた。

 まだまだ課題はいっぱいあるけれど……


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