魔導書との発見
少し短めです
「わ、若葉!?」
驚いた様子でグースは僕に尋ねてきた。
「そうだよ、これでかくれんぼは終わりだ。外に帰してくれないかい?」
僕は、早急に用件を伝える。
「あ、うん。そうだよね…… 今帰すね」
彼女はそう言って、僕に手をかざす。
「でも、その前に話を聞いてほしいの。時間なら大丈夫、幻影世界の時の流れは外とは違うから」
そういうと、僕は浮遊感に襲われた。
思わずつぶった目を開くと、僕は辺り一面にテディベアが積まれている子供部屋にいた。
目の前には、哀しそうな顔を浮かべたグースがいる。
「ごめんなさい、若葉がすでに契約しているのは分かっているの。でも、もう私縋る人がいないの……」
そう言って、彼女はポツリ、ポツリと自分の過去を話し始めた。
人に裏切られ続けたこと、人が怖くて幻影世界にこもったこと、だけれどいつしか寂しさに押しつぶされそうになったこと、本当は人と楽しく笑って過ごしたかったこと。
多分、ここに来る途中のテディベアは彼女自身を表しているのだと気づいた。
人々はとっくに死んでいるが、彼らは彼女をいまだに傷つけているのだ。
「今までの試練も、若葉が信頼できる人か見るためのものよ。貴方は試練を『蒐集』への思いと魂の善良さで乗り越えた。だから、こんな話をしてるの」
「なるほどね」
「そんなの都合のいいことだって私もわかってる。でも、私は貴方の善良さに付け込んで、すがろうとしてるの」
彼女は悲痛な顔を浮かべながら、僕に嘆く。
「お願い、どうかこのような私と契約して側にいて……」
彼女は言った。
僕は逡巡したが、はっきりと彼女に告げる。
「ごめん…… 僕にはライラがいるから契約することはできない」
絶対に僕はライラを裏切ることができない。
その思いは、エルさんの誘惑の時から変わらない。
むしろ思いが強くなっている気すらする。
「そうよね。ごめんね、むちゃくちゃなこと言っちゃって。何言ってるんだろうね私」
そう言って彼女は自嘲した。
「今、現実世界に帰すね。わがまま言って本当にごめんね……」
空元気を出して、彼女は僕に向かって手をかざす。
「君との契約はできない。でも、一緒にいることならできるかもしれないよ!!」
僕は叫んだ。
僕はライラを裏切ることはできないが、ライラを説得することならできる。
一旦『蒐集』しておいて、そのあと制限時間付きで現実世界に出て遊ぶこととかも可能かもしれない。
ライラは基本的に能力や設定を後出しする癖があるから、それぐらいできると思う。
「……本当?」
か細い声で彼女は僕に尋ねる。
「もちろん、といってもライラ次第だけどね」
「若葉が説得してくれるの?」
「うん、一緒に説得しよ? 大丈夫、ライラは基本的に杏仁豆腐でどうにかなるから」
というか、彼女の物事の判断基準は大抵杏仁豆腐である。
「本当に私の味方してくれるの? 私は貴方を殺そうとしたクズなのよ?」
「僕はね、馬鹿なんだよ。たとえ良心に付け込まれようが、すがられようが、幻影世界に引き込まれようが、泣いている女の子をみたら結局手を伸ばしちゃうんだ」
だから、ライラに童貞とか言われるのかもしれないけど……
「あ、あ、本当に……」
そう言って、彼女は泣き崩れた。
僕は近づいて彼女の頭をなでる。
「うえ、私頑張ってたのに、うらぎらえて、きずついえ、それで、さびいくて」
泣きながら、彼女は僕に訴える。
「うん、グースは頑張ったよ。だから今は僕に甘えて全部吐き出しちゃお」
「あん、あいがとう、わたい、ひとりでいきてきて、つらくて――」
僕は彼女の気が済むまで、ずっと話を聞いてあげた。




