第90話:八方塞がり
北・南部隊が魔物と交戦中だが、数からしてこちらの劣勢は明らかだった。
西側部隊も東に移動を開始しているが、大砲など重量のある武器全てを西に設置していたため、武器を運ぶのに時間がかかってしまっていた。
その様子を確認し、総司令部でも動きが出てきた。
「4・5班は屋上に5門設置してある大砲を使って北南部隊を援護してくれ!」
団長が言い終えるとすぐに、4・5班全員が屋上へと向かった。
「それから校長の護衛も必要だ。奈由、そして彩香。2人に任せていいか?」
「「はい!」」
奈由も彩香もルナと同じ、桜の班に所属している強者だ。2人は並の団員が束になってかかってきても、逆に倒してしまうほどの実力者。校長の身は安心だ。
「おい団長。俺たちも早く戦場に向かう方がいいんじゃねぇのか?」
拓が腰の横に下げている剣が納められている鞘に手をかける。
「いいや、今精鋭部隊を派遣させても、あの敵数では疲労し、せっかくの実力も活かせない。精鋭部隊をいつ投入するかによってこの戦いの勝敗が決まると言っても過言ではない。よってまだ出動させるわけにはいかない」
「……わ、分かった」
団長の言葉に拓は少々不満ながらも、納得したようだ。
と、その時!
/ドゴォォン‼︎‼︎/
激しい爆発音とともに、総司令室の天井が揺れた。
「この揺れはなんだ⁉︎」
団長がわけがわからないと言いたげな目で天井を見つめる。
「4・5班に無線をつなげてくれ」
「了解」
無線係が5班の応答を待つが全く反応がない。
□これは数分前…□
屋上についた4・5班は大砲の弾を詰め、いよいよ発射しようとしていた。
「発射準備完了です、班長」
「よし、それでは絶え間なく発射するために順番に撃つんだ!」
まず、1つ目の大砲が撃とうと点火した。
が………
「班長、点火したのですが、発射されません!」
班員がなかなか発射されないのを不思議に思い、班長に報告した。
「ほ、本当か⁉︎ 何か詰まってるんじゃないのか?」
班長が焦り、急いで大砲の発射口を覗く。すると、中には黒いつっかえ棒がはさまれてあった。
その棒を取ろうとするが、なかなか取れない。
そして……………
「みんな逃げろ! 暴発するぞ‼︎」
/ドゴォォン/
大きな音とともに中の弾によって大砲が爆発した。その隣にあった大砲も爆発によって連鎖的に次々に爆発していく。
その結果、4・5班全員が爆発に巻き込まれ、死んでしまった。
「団長!」
先ほどの爆発音を調査するために屋上に行っていた団員が帰ってきた。
「どうだった?」
「大砲全てが爆発していまして、4・5班全員がその爆発によって…………」
最後の方で言葉を詰まらせる様子が、悲惨なものを見てきたのだろと想像させた。
「なんですって! 整備は決戦直前に済ませてあるハズなのに……」
桜副団長が不思議そうに声を荒げる。
「あぁ、その通りだ。しっかり点検も行って異常はなかった。ということは、何者かが細工をしたとしか考えられん!」
団長は総司令室にいる団員全ての顔を見回す。団員たちはそれぞれ「違う」と首を横に振ったりしていた。
「すまん、皆を疑ってしまった。」
仲間を疑うのに申し訳ない気持ちになったのか、団長が頭を下げた。
一方、東側戦線にはようやく西側部隊が到着し、北西南部隊は総力で壮絶な攻防戦を繰り広げていた。
これまで、攻撃も全く歯が立たず苦戦していたゴーレムも西側部隊の大砲によって、ダメージを与えられるようになった。
「よし、このままゴーレムたちを押しまくれ!」
「「「はい!」」」
鉄壁だったゴーレムたちが押されるのを見て、その場の全員がこの戦いに希望を抱く。だが、その希望はあっけなく散っていくのもまだ誰も知らなかった。
その頃、総司令部でも動きがあった。
「俺が、戦場に行く」
そう言ったのは団長本人だ。
これにはその場にいた全員が驚く。
「ちょっと待って! 拓海くん、あなたは団長なのよ。ここでみんなに指示をしなくちゃ‼︎」
副団長である桜が止める。
「すまんが無理だ。それに今、俺が行くことによって戦場での団員たちの士気は上がるハズだ。3班を借りていく。ここは副団長であるお前に任せたぞ」
団長はそう言い終えると、すぐさま走り出した。
「ハァ…………ほんとに身勝手なんだから」
呆れたように苦笑する桜は、空白の団長の席に座り、指揮を代わりに務めることにした。
団長率いる3班は学校の裏口から外に出ようとしていた。
「団長、なぜ裏から?」
「先ほど龍樹に調べてもらったのだが、表の生徒玄関には魔物のなんらかの罠が仕掛けられている可能性が高いらしい。この裏口から出たら安心ってことだ」
この言葉に3班の班員たちは安心したように口々に「なるほど」と呟いた。
だが、その安心はすぐに消えてしまった。
団長が裏口の扉を開き、外へ出る。班員も続けて外へ出た。
「ひぃっっ‼︎」
1番後ろにいた男子の班員の1人が驚いたような声を上げた。
団長や他の班員が男子班員の方を振り返ると、男子班員の横に魔物の顔があったのだ。
その魔物は男子班員の顔を長い舌でひと舐めすると、一度顔を引っ込めた。
「今のは⁉︎」
「校舎にも魔物が⁉︎」
「ど、どうします⁉︎」
班員がビビりまくる中、ドシンッと地面が揺れた。
その揺れの正体はいきなり現れた魔物たちの仕業であった。団長と3班全員が30体もの魔物たちの円陣に囲まれてしまう。
「だ、だ、団長!囲まれました‼︎」
「慌てるな!武器を持て‼︎ これくらいの相手に負けるな‼︎」
「「「「「了解!」」」」」
皆、武器を構えるが時すでに遅し………
まずはじめに先ほどの男子班員が首をチョンパされてしまう。
それを見て、恐ろしさのあまり悲鳴をあげる女子班員も同じくクビチョンパ。
団長を入れて残り4人の3班はお互いに背中を預け、防御体制をとった。
「どうします、団長」
「銃を持て。一気に乱射する!」
4人で銃を構える。一人一人、額から緊張と恐怖の汗が吹き出るのを感じていた。
「撃てーー‼︎」
団長の号令がかかり、たった4丁の銃でできる限り連射する。
4人のうち、男2女2だったのだが、女子班員の1人が目線を足元に移してしまった。それは、あまりにも恐ろしい形相の魔物がいたからである。たとえ、精鋭班の一員でも女子に変わりはない。お化けだって怖いし、おっかない形相の魔物が出れば怖がるのは当然だとも言える。
「足元を見るな! 前だけをしっかり見てろ‼︎」
「ですが‼︎ 怖す……………キャー‼︎」
いくら団長でも、流石にその命令は聞けないと反論しようとした彼女だったが、足元を見ていても魔物を見ているのとさして変わらなかったのだ。
そう、足元には、ついさっきクビチョンパされてしまった女子班員の生首が転がっていたのだ。そして、さらに恐怖を煽るように目が彼女とあってしまった。
驚きと恐怖で思わず銃を投げ出してしまった彼女をこれ見逃しにと魔物たちは襲いかかってきた。それによって、全方位をカバーできていた防御態勢が一気に崩れてしまう。
3秒もかからずに4人の命はこの世から消え去ってしまった。
せっかくの夏なのにこんなシリアス話だらけではつまらないと思い、いくつか夏の番外編としてラブコメ回を投稿する予定です!
どんな話がいいかなぁ………




