第89話:戦いの幕開け
今回から三章に入ります!
校舎の3階にある会議室が総司令室として使われることになり、総司令室には団長、副団長、そして精鋭班の実力者が集まっていた。
「魔物の侵攻は始まった!だが、我々も準備は万端だ。すぐに皆を持ち場につかせ、魔物との戦闘に備えろ‼︎」
五十嵐団長は威厳のある声で皆に命令を下した。
討伐団には40の班がある。一班5、6人体制で1〜5班が精鋭班、残りが通常の班となっている。
作戦としては、ルナの情報により魔物軍が侵攻してくると思われる常和高校の西側入り口に11〜40班までを配置し、残りの北東南は北が6〜7班、南が8〜9班、そして西の反対の東には10班を配置した。
「魔物の数は?」
五十嵐団長が、双眼鏡で外を確認している凛に問いかけた。
「正確には分かりませんが、千体以上はいると思われます!歪みは今もあり、これからも援軍が来る恐れも」
「そうか、一か八かではあったが、ルナの言う通りに西側に兵を固めておいてよかった」
もし、念のためということで全方位に均等に兵力を分けていては、敵の兵数に勝てるわけがなかった。そのため、ルナを信じ、一点集中で西に兵を集結させたのだ。
{応答願う}
総司令室に設置してある無線に連絡が入った。
「どうした?」
五十嵐団長が応答する。
{西側部隊、総員準備完了しました!}
「よし、あとは敵が射程距離に入るまでは待機していてくれ。射程距離に入った瞬間、攻撃してくれてかまわん。頼んだぞ、西村」
{了解}
西側部隊の指揮長である西村は20班の班長であり、頭が良く、策を練ることを得意としている。いわゆる策士だ。そのため、この大事な西側部隊のリーダーに選ばれたのである。
北では6班班長の北川。南では8班班長の南原。東は一班だけなので、その班の班長である東野が指揮を務めている。
「五十嵐団長、本当に勝てるんでしょうか?」
ルナは不安のあまり、率直に聞いてしまった。
「作戦は十分に練ったつもりだ。西側部隊と魔物軍が交戦中に、北南東にあらかじめ待機していた皆が魔物軍をサイドから挟んで攻撃する。これで、向こうにも大ダメージを負わせている」
そう言い終えた後に
「いいか、ルナ。この戦い、勝てるかじゃないんだ、何としても勝つんだ。そのくらいの覚悟を持たなければならない!」
この言葉はルナだけにではなく、周りの不安そうにしている他の団員に喝を入れるためにも言ったのだろう。団長は皆を不安にさせぬよう、堂々としていた。
一方、西側部隊ではいよいよ魔物軍が射程距離に入りそうになっていた。
「大砲部隊、いつでも撃てる準備をしておけ。敵の最前列はゴーレムだ。防御が硬いだろうから、大砲が1番有効だろう」
「「「はい‼︎」」」
10門の大砲にスタンバイしている20人の団員は大砲に玉を込め、発射準備万端だ。
残りの団員たちもランチャーやガトリングガンなど、通常の銃よりも強力な遠距離武器をそれぞれ構えている。
一人一人の緊張の面持ちと額を伝う汗がその場に漂う緊張感を伝えてくれる。
「射程範囲内に入るまで、残り30メートル……20メートル……10メートル………0メートル‼︎」
西村指揮長は真上に上げていた手を振り下ろし……
「総員、攻撃を許可する‼︎」
号令をかけた。
/ドゴォォン/
10門の大砲を駆使し、できうる限りの早さで次々に発射していく。
たった10門なので大砲の雨とはいかないものの、魔王軍に降り注いだ。
「先頭のゴーレムたちに命中!」
西村の隣に立つ、報告係の団員が双眼鏡に目をくっつけながら、すぐさま報告した。
「そうか……で、効いてるのか?」
「いいえ、ゴーレムたちはダメージを受けた様子はなく、いぜん侵攻中です……といいますか、砲弾が体をすり抜けていくようにも見えるのは気のせいでしょうか?」
「どういうことだ?」
西村は報告係から双眼鏡を借り、ゴーレムを細部まで確認する。すると、飛んできた砲弾がゴーレムの体をすり抜けて地面に着弾するのを確かに見つけたのだ。
「お前の言う通り、奴らに砲弾は効いてないどころか、当たりもしていない。まるで幽霊のようだ」
砲弾がすり抜けていくゴーレムたちが侵攻してくる姿に西側部隊の団員たちは恐れ慄く。
「怯むな! 総員、一旦攻撃中止」
西村は命令を下し、無線で総司令室へ事の次第を説明した。
{なにっ、攻撃がすり抜けるだと⁉︎}
「はい。ですので一旦攻撃を中止し、団員数名に魔物軍に近づき、実態を調査させようと思っているのですが」
{西村、お前に任せる}
「はい」
西村は数名に魔物軍にギリギリまで接近させ、砲撃がすり抜ける原因を特定することにした。
「原因を見つけてきてくれ、君たちに任せたぞ!」
「「「「「はい!」」」」」
だが、次の瞬間に魔物の軍勢は蜃気楼のようにフワッと消えてしまった。
「なっ………どういうことだ⁉︎」
策士と言われた西村もこれには驚いた。
総司令室でも、西側で魔物軍が突然姿を消したことを確認していた。
「なぜ、消えた?」
「さぁ?」
「ルナ、なぜか分かるか?」
「えっ、俺にはサッパリ……」
総司令室でも全員が混乱し、まとまりがつかない状態になっていた。
そんな総司令室へ無線がはいった。
{東側班の東野です。団長、こちらに魔物の大軍が突然現れました‼︎}
この報告で皆が理解した。西に偽の軍勢を置いていたのは、西側に討伐団のほぼすべての戦力を偏らせ、手薄の東を一気に叩こうということが。もっとも、それに気づいても、もう遅い。
「くそっ! 北も南もどちらも西側部隊のサイドについている。これでは、東でたった5人の班で千体以上の敵とぶつかることになる」
団長は無線で北東西の部隊に東へ向かうようにすぐさま指示した。
{早く、早く応援をお願いします‼︎早くしないと、また1人また1人………}
東側ではすでに戦闘状態になったようで、東野の声の他に、大きな足音や団員の叫び声などがはいってきていた。
{お願い、早く‼︎ いや、やめて‼︎ あたし……まだ死にたくないよぉ‼︎‼︎ ギャーーーーー……………}
東側班の無線がプツリと切れた。今の東野の声でおそらく10班は全員やられてしまったのだろうと容易に想像がついた。
大地を揺らすような魔物たちの行進の足音。魔物軍は以前無傷で学校へ突入しようとしていた。
そこへ、
「それ以上行かせてたまるか‼︎」
北側部隊と南側部隊の両部隊が左右から駆けつけたのだ。
「「全員、魔物を蹴散らせーー‼︎」」
「「「「「おぉーーーーーーー‼︎‼︎」」」」」
北川と南原の号令のもと、両部隊の団員が、ある者は接近戦である者は遠距離武器で攻撃を開始した。
「お願いします‼︎」
緊迫の戦場を見守る総司令室では、1人の少女が団長へ戦闘に参加したいと志願していた。
「ルナ、ダメだ。お前はこの戦いで相手の出方や能力、力を唯一把握しているんだぞ。ここにいてもらう!」
「そこをなんとか、お願いします‼︎ 黙って見てられないんです。お願いです‼︎‼︎」
ルナの必死の懇願に団長はやれやれと困ったような仕草をした。
「仕方ない。ならば、お前はリベロだ。自由に動いて構わない。だが、俺が戻ってこいと言ったらすぐに戻ってきてくれ、いいな?」
「はい、ありがとうございます!」
ルナはオッケーをもらうとすぐに総司令室を出て行った。
しかし、この行為がのちにルナの立場を不利にすることにルナは気付くはずもなかった。
魔物たちとの大規模な決戦がいよいよスタートです!
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