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目覚めると吸血鬼少女に  作者: らーめんま
第二章 つかの間の休息・文化祭編
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87話 ピュアハート誕生秘話


「ルーナ、カッコいいね。まぁ、可愛い女の子ってのがちょっとアレだけど……」

絵梨のピンクのペンダントから現れたリス型のモフモフした生物がいきなり話した。


「い、いきなり何⁉︎ 妖精?……ていうか、俺、ルナなんだけど」


「君の予想は的中だよ、せいかーい!ボクは妖精のプリンっていうんだ。エリーまたの名をピュアハートのパートナーだよ」

妖精に関しては反応してくれたが、名前の訂正にはぜんぜん反応が来なかった。


「すごいな、さすが魔法少女だ」

妖精がパートナーとは、ザ・魔法少女というかんじだ。


「キミには感謝しなくちゃね。うちのエリーを勇気付けてくれてありがとう」


「いや、親友として当然のことをしたまで」


「まぁ、それはそれとして……。エリーの親友の君には、これまでに何があったのか、過去を話さなければなるまい」


「絵梨の過去?」


「そうさ、君は昔のエリーと今のエリーの違いがわかるかい?」


前と今の絵梨の違い。俺は頭の中で過去と現在の絵梨を結びつけてみる。すると、1つわかったことがあった。

「気弱で大人しくなってる?」


「うん、その通り。あの子は表でこそ昔と変わらない口調や態度をしているけれど、内面は昔とはかけ離れている」


「それは、あの出来事のせい?」


「それもある。でも、それだけじゃないんだ。あの出来事はすべての始まりだったんだよ」


「すべての始まり……?」


「あの子が君に怪我をさせてしまってから、あの子は深い心の傷を負ってしまった。でも、それは序章にしか過ぎなかったんだよ。あの子は中学を卒業した後、春休みに妹を失ったのさ」


「絵梨の妹って亡くなったの⁉︎」

絵梨の妹とは数回会ったことがある。といっても最後にあったのは中一の頃だ。


「正確には行方不明になったんだ。エリーと一緒にスーパーまで行ったときにね」


「それじゃあ、絵梨はその事も自分のせいだと?」


「うん、そうだよ。そして……」


「そして?」


「あの子の両親も死んだ」


「なぜ⁉︎」


「あの子の誕生日ケーキを買いに行ったときに……」


「そうだったのか…………」

これ以外に言葉が出てこなかった。あまりにも可哀想すぎる。


「ここでようやくボクの出番さ。エリーが心身ともに弱っていき、誰とも関わらなくなってしまった頃にボクと先代ピュアハートはエリーに出会ったんだ」


「先代?」


「うん、あの子は2代目ピュアハート。先代は心音っていう子だよ」


「ここね……だから、ハートなのか」

絵梨なのにハートって関係ないじゃんという

地味に気になっていたことが解決した。


「エリーが1人になってしまって、ボクと心音はエリーを心音の家に引き取ることにしたんだ。エリーは初めの頃はボクたちを拒絶していた」


「それは、自分の近くにいると、その人が死んでしまうかもと思って?」


「うん。でも、心音は魔法少女だ。その心配はない」


「ん? 魔法少女と何の関係が??」


「あぁ、そのことだね。実は、君が大怪我したのも、妹が行方不明になったのも、両親が死んでしまったのも、すべてエリーのせいではないんだ。犯人は魔物だった」


「どういうこと?」


「エリーは魔物たちに狙われてたんだ。それはなぜかというとね、エリーが魔王サタンだからだよ」


「えっ!絵梨が⁉︎」


「まぁ、正しくはサタンになる可能性を秘めているってことだけど……。とにかく、魔物たちは絵梨を絶望させる事によって、絵梨に眠るサタンの力を覚醒させようとしてたんだ」


「なるほど、じゃあ、絵梨は魔物たちに自分がやったように思わされて悩んでいたのか。本当は裏で魔物たちが引き起こしていたのに」


「で、ボクたちはエリーに真実を語ったんだよ。それによってエリーは少し楽になったようだけど、それでもまだ自分のせいでという罪の意識は変わらなかったと思う。でも、エリーはボクたちに次第に心を開いてくれたんだ。その頃だったよ、さらなる悲劇が起きたのは……」

話していたプリンの顔が一段と暗くなった。

「心音はエリーの大切な人と判断されたようで、魔物たちから襲われるようになった。でも、心音も魔法少女だからそれは平気だったよ。

だけどある日、それまでは直接エリーを攻撃したことのなかった魔物がエリーにも手を出したんだ。心音はエリーを守ることに気を取られ、魔物たちに隙を突かれて殺されたんだ」

プリンの愛らしい瞳に涙が浮かぶ。






◇一年前◇

「ど、どうしよう!心音お姉ちゃんが‼︎」

出会って一ヶ月ほどではあったが、自分によくしてくれ、お姉ちゃんとまで言える仲になった心音が殺されたということに絵梨は動揺を隠せなかった。


「エリー、落ち着いて。君が絶望してしまっては魔物たちの思うツボだよ‼︎」


「うん……わ、わかってる。ねぇ、プリン」

先ほどまで動揺した声色が一段低くなった。


「ど、どうしたんだい?」


「私をピュアハートに変身させて!」


「でも、君は」


「いいから、お願い!」


「うん、わかったよ。緊急事態だしね」

プリンは渋々頷くと、絵梨に両手の手のひらを向けた。

「邪悪を浄化せし聖なる力よ、いまこの娘に与えたまえ!」

プリンが言い終えたのと同時に、絵梨の体はピンク色の光に包まれた。


「この光は⁉︎」


「エリー、君の体がいま、魔法少女へと変わっていっている証拠だよ」


そして、その光はだんだんと収縮していき、絵梨の手首にピンクのジュエルのついたブレスレットとなった。


「エリー、そのジュエルに手をかざして返信するんだよ」


「分かった! 」

絵梨は言われた通り、手首のピンクのジュエルに手をかざす。

先ほどのピンクの光が再び絵梨を包み込んだ。するとピンクと白を基調とするロングローブが手を、ロングブーツが脚を纏っていき、胸元に大きなリボンがついたヘソ出しの服、フリルのついたフリフリの可愛いスカートを身につけた。


「溢れる可愛さラブラブラブリー♡魔法少女ピュアハート誕生!あなたたち悪の魔物の手からみんなを守ります!」

いい覚えのないセリフまで言ってしまった。


「これで、憎い魔物を倒せる」

絵梨の瞳には憎しみの炎が浮かんでいた。それは、正義の魔法少女とはかけ離れた邪悪な眼差し。


「いけない、エリー、我を忘れるな!君は怒りに任せて行動してはいけない‼︎」


「プリン、黙ってて!」

プリンの制止は絵梨には届かなかった。


怒りに身を任せた鬼神のように怒涛の攻撃を仕掛けた絵梨には、もはや周りの様子は見えておらず、魔物に攻撃を回避され、後ろに回りこまれる。


「エリー、後ろ!」

プリンの声でようやく後ろに気がついた絵梨だったが、時すでに遅し、絵梨は腹を一突きされ、倒された。


「やっぱり、エリーには早過ぎたんだ」

プリンは魔法陣を展開し、魔物の攻撃から絵梨を守ると、その場から絵梨を連れて撤退した。








「ん……、ここは」

絵梨が目を覚ますといつもの天井が目にはいった。


「エリー、大丈夫かい?」


「うん、平気。でも、ごめんね、あの時は言うことを聞かずに」


「いいよ、君も必死だったんだよね」


プリンが小さな手で絵梨の頭を撫でた。それと同時に絵梨は大粒の涙を流した。


「私のせいで……私のせいで……私のせいで」


「エリー、君のせいじゃないよ。悪いのはあの魔物だ」


「でも……」


「君のネガティヴ発言をもう聞く気はないよ。それよりも、ボクが聞きたいのは君がこれから魔法少女をしてくれるのかどうかだ」


「私やるよ、魔法少女。心音お姉ちゃんの意思を受け継いで、魔物を倒すよ!」


こうして絵梨は魔法少女ピュアハートとなったのである。

だが、プリンは絵梨に魔法少女になる事を極力避けさせた。それは、さっきのように絵梨が憎しみに任せて暴走しないためだった。


絵梨がプリンの許可をもらい初めて魔物を倒したのが、お祓い屋と出会ったあの日になるというわけだ。





◇◇◇

「プリンが説明してくれた通りだよ、りょーくん」


「よかったな絵梨。絵梨のせいじゃないとわかって」


「たしかに少しは気持ちが楽になったけど、私が悪いことには変わりないの。でも、こうしてりょーくんは元気でいてくれた。これからは自分のせいだということも受け入れ、前を向いていこうと思ったの……だからね、りょーくん……死なないで、いや、死なせないから!」


「絵梨、安心してよ。俺だって魔物とは何度もやりあったこともあるんだよ。俺は絶対死なないから」


「うん!」

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