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目覚めると吸血鬼少女に  作者: らーめんま
第二章 つかの間の休息・文化祭編
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第86話:2人の過去 後編



サッカー部の中総体結果は準優勝。チームメイトは皆、亮太がいれば優勝できたと言う。


結局、亮太は中総体に出ることはできなかった。こうして、亮太の中学サッカーは呆気なく幕を閉じた。








◇◇◇

骨折が治り、学校に行けるようになってからも、亮太は激しい運動をできるだけしないように心掛けていた。


「亮太、学校くるの遅かったな。お前まだ治ってないのか?」


「ひとまず安静ってこともあるし、俺、なんだか運動がだるくてしょうがなくなったんだよ」

サッカー部のチームメイトから聞かれ、そう返事を返す。

もちろん、この返事は嘘だ。本当はサッカーをしたいし、体を動かしたかった。

だが、亮太には運動ができない理由があった。それは、病院から退院する日に医師から言われたことである。


「君の怪我は一応治ったけど、これからは前みたいに部活動で運動が出来ないと思ってほしい」


「なぜですか⁉︎」


「君の怪我はなかなか厄介でね。君はこれから一生、スポーツや運動などの激しい動きは出来ないと思ってほしい。もちろん、私生活では支障はない」


「えっ……う…そ…ですよね?」

亮太には今の医師の発言が理解できない。いや、理解したくなかったのだ。

「俺は……もう……サッカー………出来ないんですか…………」


「大変言いにくいが、出来ないね」


「そ、そんな………うそだ!うそだ!うそだ!」

亮太はその場から逃げ出した。病院を出て、ひたすら遠くへ。ひたすら遠くへ行けば、この現実から逃れられるような気がして……。


「ハァハァ、俺、走れるじゃん」

全速力で走って逃げることができていた。これだけ走れるのならスポーツだってできるに決まってる。

だが、その考えが甘かったと直後に知った。


「ハァハァ……痛い‼︎」

亮太は急に痛みを覚えたのだ。それこそが亮太が運動のできない理由だった。



亮太はそれを心に受け止めるのに、時間がかかった。なので、学校に戻ってくるのも、1週間も伸びてしまった。


亮太はそれから卒業するまでの間、体育の授業もほぼ見学。周りには、ほぼ治っているが運動する気分ではないと言い通していた。





◇卒業式の日◇

中学生最後の日がやってきた。

周りのクラスメイトたちは笑いあったり泣きあったりしていて、嬉しいのか悲しいのか、よくわからない。



なみだなみだの卒業式が終わり、最後にホームルームがあった。

ホームルームで担任からの最後の話、そして皆で集合写真を撮った。


ホームルームが終わり、生徒玄関から出ると、在校生たちが校門まで花のアーチを持って並んでいる。

卒業生はその花のアーチをくぐりながら、在校生たちと言葉を交わしたり、思い出を語ったりしていく。

アーチをくぐり終わると、人気者は制服のボタンがどんどんなくなっていく。肝心の亮太は、そこまでモテない。当然、ボタンは未だにフル装備だ。


「はぁー……少し期待してたけど、やっぱり誰もいないかぁ…………」


ひとり落ち込む亮太だったが、


「あの、亮太先輩のボタン、ください‼︎」


後方から可愛らしい声がし、振り返った。


「え、絵梨⁉︎」

声の正体は絵梨だった。後輩っぽく聞こえるように、可愛く声を出していたらしい。


「絵梨、お前どうして?」


「りょーくんが、誰からもボタンとられないから、かわいそーだなぁーと思って」

普段の明るい表情を見せる絵梨。亮太はあの一件から絵梨が立ち直ったのだとホッとした。

普段の絵梨はしっかりしていて、頭が良くて、リーダー気質で、頼れる存在だ。そんな絵梨に戻ってくれたことが嬉しかった。


「そ、そうか。でも、よかった。俺も絵梨とはこのまま気まずく別れるのはマズイと思ってたんだ」


「私もだよ。りょーくんとはしっかりと話さなくちゃいけないと思ってた」

絵梨も亮太を避けながらも、ずっとこのままではいけないと思っていたのだ。


「絵梨、俺さぁ、常和高校に行くんだ」

あの件があってから、絵梨とは話せていなかったため、今はじめて進学先を言った。


「私は隣の県の高校に行くことになったの。離れ離れになるわね」


「そうだな……」


「うん、そう……」


2人ともぎこちない。あの話題に触れるのが怖いからだ。できれば、話の核まで行きたくない。


「あのさ……」

話を切り出したのは絵梨だった。

「本当はなぜ運動をしないの?」


「な、何言ってるんだよ。小走りとかしてるだろ」


「小走りくらいじゃない。体育だってずーっと休んでるし……。本当は何があったのか教えて?」


「何もないさ。ただ、念のため安静にしてるって程で、運動が面倒くさいからサボってるんだよ」

皆についている嘘だ。これが1番いいと亮太は思っていた。


「嘘でしょ………なんで、なんでそんなに私を庇おうとするの⁉︎」


「かばうも何も、本当だよ」


「嘘だってわかってるわ。本当は一生激しい運動が出来ないんでしょう?」


「ハハハ………やっぱり絵梨には嘘つけないなぁ」

亮太は力なく笑った。いつもそうなのだ。いつでも、亮太は絵梨に嘘をつくのが苦手だった。


「やっぱり。そうやって私のことをかばうのはやめて!

私は…私は私のせいって言われて、りょーくんから怒られて、憎まれて、恨まれた方がぜんぜんマシよ!

りょーくんはあの場に私たち以外誰もいなかったから、私のせいにせずに自分のせいだと言えば、誰からも私が責められずに済むと思ってああいう嘘をついてるのだろうけど、私の心はそっちの方が傷つくよ」


「何言ってるんだよ。俺は絵梨の事を怒ってもないし、憎んでもないし、恨んでもない」


「でも、放課後に教室の窓からグラウンドで練習してるサッカー部を悲しげに見てるじゃない」


「そ、それなだな……」


「りょーくんは、誰もいなくなった後にひとりで見てるから気づかないと思ってたんでしょ。でも、私、たまたま見ちゃったんだ。あの時のりょーくんの表情を思い出すと、私は申し訳なくて……申し訳なくて…………」

絵梨の瞳からどっと涙が溢れ出る。

「うぅ………わたし………グスッ…………こんなんなら、わたしが落ちてた方がよかったよ」

亮太に一生背負っていかなければならない傷を負わせてしまった。それが彼女を自己嫌悪に陥し入れた。


「絵梨、俺はお前を助けたことを後悔なんかしてないぞ」


「………もうやめて! りょーくんのその優しい言葉が嫌なの!こんなにひどいことしたんだから、怒ってよ‼︎」

その言葉に亮太は無言で首を横に振った。


「もう、私に近づかなくていいから……。どうせ、私の近くにいたら酷い目にあうから‼︎」

絵梨はそう言うと、走って立ち去っていった。









◇現在へ◇

「絵梨、俺はお前に謝られたくて助けたんじゃないんだよ」


「えっ……」


「俺は、絵梨が大事だったから助けたんだ。俺の体はどうなってもいいと思ったから……。だから、謝らないで」


「でも……」


「謝られるより、『ありがとう』って言ってもらえた方が嬉しいんだよ」


ルナ(りょうた)は絵梨を優しく抱きしめた。


「絵梨、もうやめよ。そうやって自分を悪く言うのは……。もっと好きになろうよ、自分を」


「いいのかな……」


「当たり前じゃないか。絵梨は、俺が命を張っても守ろうとしたくらい大切な存在なんだから」

少しありがちなラストだったのかもしれませんが、いちおう絵梨の過去編は終了です。にしても、運動したくない、めんどくさいと初期のころに言っていた亮太にこんな過去があったなんて‼︎


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