第81話:凛のメイド喫茶
ヨーヨー釣りを完売させた俺は結果、討伐団に豊富な利益を得させたことになる。
さてさて、次はどこへ行こうか。ヨーヨー釣りので店を後にしたところで、凛と出会った。凛はメイド服を身につけている。
「あ、ルナ先輩!やっぱり本物のルナ先輩の方がいいですね‼︎」
凛はそう言うと、手に持っていた本と俺を見比べる。
一体、あの本はなんなのだろうか?
「凛、その本は?」
「これですか? これはルナ先輩が主人公の漫画……いわゆる同人誌ってやつですかね」
「えっ⁉︎ 俺、そんな話聞いたことない‼︎」
「そうなんですか⁉︎ てっきり許可とってたのかと思ってたんですけど」
これは許せん!俺の肖像権の侵害だ‼︎
凛に案内してもらい、同人誌の売ってある出店へたどり着いた。
ん、漫画研究部?
どうやらこの出店は漫研部がやっているらしい。
「どうぞ、いらっしゃい! 学校で人気の夜月瑠奈が主人公の甘酸っぱい青春ラブストーリーがオススメだよ‼︎」
堂々と俺の名前を使い、売り込みしてやがる。
「なにが甘酸っぱいだ‼︎」
つっこんでやった。
「えっ⁉︎本物だ‼︎‼︎」
売り込みの1人がそう騒ぐと、漫研の部員たちが続々と集まってくる。
皆、俺にサインを求めてきている。サインなんか持ってねぇーよ‼︎
「でも、ありがとうございます。夜月先輩のおかげで漫研部は生き残れますよ!」
「というと?」
「部費を漫研部には出せないという生徒会に、どれだけ漫研部が必要なのかと見せつけなければならなかったんです。なので、今年は夜月先輩にかけました‼︎」
「かける?」
「はい。1,000部刷って、今のところ500部売れました。まだ、文化祭は始まったばかりだし、完売は間違いなしです!」
漫研部のみんなは俺を崇め始めている。
それならしょうがないと思い始めたのだが、手渡された俺が主人公の漫画のある一コマを発見してしまった。
「これはどういうことだ‼︎」
なんと、俺のシャワーシーンが描いてあるではないか!
「サービスシーンもあったらいいかなと思いまして。それに大事なとこは隠してますよ」
「そういう問題じゃない‼︎それに、俺の裸見たことないくせにどうやって」
「それはみんなの妄想です♪」
/ボコッ‼︎/
数発殴っておいた。
さてさて、次はどこへ行こうか。
「マサキ、次どこ行く?」
「それなら!」
と、威勢良く手を挙げたのは凛だった。
「私たちのクラスがやっているメイド喫茶に行きませんか?」
「どうする、マサキ?」
「悪いが、オレも少し準備があるんだ。だからちょっとパスだ」
マサキが行かないということで、かなりテンションが下がってしまった。
「そんなにテンション下げないでください!きっと楽しいですよ‼︎」
◇◇◇
校舎の3階、通常は3年生がいる教室でメイド喫茶をしていた。
そしてそして、なんと女子たちの中に男子たちもメイド服を着て混じっている。その異様な光景に思わず声を出して笑いそうになってしまった。
凛に聞いたところ、このカフェは1年2組の凛のクラスの女子、そして3年3組の男子のどちらもメイド喫茶という案を出したので合体させてらしい。3年の男子は高校最後だということでノリで企画したのだろう。たしかに男子が女装をして「いらっしゃいませ」と言っているのは滑稽だ。
「お帰りなさいませ、ご主人様。では、ルナ先輩。メニューは何にします?」
「んーと、サンドウィッチとコーヒーで」
凛は注文を取ると奥の方へ行ってしまった。
数分して、凛ではなく、3年の男子が注文の品を運んできた。そしてそして、その男子は真司くんだったのだ。
「真司くん⁉︎」
「あっ、瑠奈! なんか恥ずかしいな」
真司くんが頭をかきながら恥ずかしいそうに言った。
真司くんには悪いが、真司くんのメイド服姿は実に似合っていない。ま、そりゃ、番長とも言われているごつい男がメイド服を着れば、滑稽な姿になるのは仕方のないことだ。
「笑いたければ、笑え。オレも今の自分の滑稽さは理解してるからな」
顔がどんどん真っ赤になっていく。
「そんな人を笑うほど、俺は悪い奴じゃないよ。それに、むしろ可愛いよ。顔真っ赤で」
本当に可愛いと感じた。いつも怖い顔の印象の真司くんとのギャップがそう感じさせているのだろう。他の女子だって、全員一致で可愛いと思うはずだ。この姿を見れば、クラスの人たちの見る目も変わるんじゃないなぁ。ギャップ萌え的な?
「そ、そうか?オレ、可愛いとか言われた事ねぇから、変な気分だ……」
真司くんはカフェで忙しいらしく、戻っていった。
それにしても、このメイドカフェは大繁盛だな。真司くんが忙しそうにしているのも納得だ。
と、そこへ
「ルナ先輩、頼みがあってきました!」
凛が再びやってきたのだ。
「断る‼︎」
「えっ!まだ、何も言ってませんよ」
「だが、断る‼︎」
「ルナ先輩がその気ならいいですよ。みんなしゅーごー‼︎」
凛が号令をかけると、10人ほどのメイド服を着た女子生徒に担ぎ上げられてしまった。
「ルナ先輩、人手不足なので手伝ってください!」
「別に俺の他にもいるだろ?」
「いますけど……ルナ先輩しかいません‼︎」
「いやいや、今、いるって言っただろ?」
「私だって、ルナ先輩のメイド服姿を拝みたいんです‼︎」
ここにきて本音が爆発した。どうせそんな事だろうと思ってはいたが、ここまで素直に思い切って言ってこられると驚いてしまう。
抵抗はしたが結局のところ、メイド服を着させられた。
「これはスマホの待ち受けにしなければ‼︎」
凛がメイド姿の俺に向けて連写をしている。
「さぁ、ルナ先輩!注文を取ってきてください‼︎」
連写を終え、思う存分俺の写真を撮った凛が俺に指示を与える。
「ご主人様とか言わなきゃならないんでしょ?恥ずかしいよぉ」
さすがにこれは恥ずかしいよ。俺だって元は男だったんだ。さすがにそれは………。
「いいですから、早く‼︎」
凛に強引に押され、やむ負えず注文を取る事に。
新しく席に座ったお客さんのところへ注文を取りに行かなければならないのだが、恥ずかしすぎるため、足元を見つめ、客に目を合わせないようにしていた。
そして
「……お帰りなさいませ、ご、ご主人様」
少しずつ目線を上にあげながら、
「ご、ご注文は何になされます?」
相手の顔を確認する。すると………
「マ、マサキ⁉︎」
「準備が早く終わったから来てみたんだ。でも、まさかルナがメイドをやってるとは……。それに、上目遣いで『ご注文は何にします?』って完全に男を誘惑してるだろ」
「ち、違う!それは恥ずかしかったからなかなか上を向けなかっただけで‼︎」
俺がそんなに破廉恥な奴だとは思われたくない。
「でも……すごく可愛いよ、ルナ」
「えっ………///」




