第78話:「好きだ」
遅れて申し訳ございません。そして、もう一点お詫びがあり、文章中の段落を開けれなくなってしまいました。お読みにくいと思いますが、ご了承ください。
気がつくと自室のベッドに横になっていた。
「あれっ?なんで家にいるんだ??」
俺が最後に覚えているのは、座席が空いてたから座って……そのあとは覚えていない。きっと、眠ってしまったのだろう。それからどうやって家まで来たのかもわからない。俺が自分で帰ってきたのなら覚えているはずだし、真司くんは俺の家を知らないから送ってくれたとも考えにくい。
「ひとまず、下に降りてみるか。リリムだったら何か知ってるかもしれない」
1人で考えても埒があかないため、リリムに聞いてみることにした。
自分の部屋を出ると、美味しそうなカレーの匂いが漂ってきた。きっとリリムが夕食に作ってくれているのだろう。
階段を下り廊下をまっすぐ進み、リビングにつくと、やはり、リリムがオープンキッチンでカレーを作っていた。隣に、マサキもいる。
「あ、ルナさん。目が覚めたんですね」
「良かったな。今度、中村先輩に礼言えよ」
「え、真司くんに礼……もしかして真司くんが送ってくれたの?」
「そうですよ。玉ねぎが足りなかったので、スーパーに行ってたんです。そこでマサキさんと偶然会って、それからマサキさんに付き合ってもらってたんです。そしたら、ルナさんをおぶって歩いてる顔が怖い男の方が歩いていたので、その方からルナさんを引き取ったんです」
リリムとマサキに聞いた話によると、どうやら、真司くんが眠ってしまいまったく起きない俺を背中に負ぶって、歩いていたようだ。真司くんは俺の家を知らないため、どうしていいかわからず、とりあえず夜月とかかれている表札を片っ端から探していたらしい。その途中で、リリムとマサキに出会い、引き渡したというのが事の真相だった。
「でも、起きないのも無理ないですね。ルナさんは血切れだったんですよ」
「ちぎれ?」
「魔力切れみたいな感じで、ルナさんに必要な血が足りてなかったんですよ」
「なるほど、それでどっと疲れて、いつの間にか寝てたのか」
「まぁ、寝てるっていうよりは、気を失ってると言った方が適切ですけどね」
「たしかに……。でも、なんで血切れに気づいたの?」
「いろいろあるんですが、1番確実だと思ったのは、顔の怖い方がルナさんをおぶっている間、ずっと首筋にルナさんが噛みつこうとしていたとおっしゃっていたので」
「なるほど、納得したよ。真司くんには迷惑かけちゃったな……」
「あ、でも、中村先輩がルナにありがとうって伝えておいてくれって言ってたぞ」
「え、そうなの? というか、みんな番長って呼んでるのに、なんで中村先輩?」
「前に、いろいろとお世話になったんだ。だから、中村先輩がすごくいい人だってことは知ってるよ」
「そうなんだ……」
真司くんにはまたもや迷惑をかけてしまったようだ。
「俺、真司くんの血を吸ったの?大丈夫かな、真司くんの血吸いすぎちゃったら、逆に真司くんが倒れちゃうよ」
「それは大丈夫だ。中村先輩はルナが首筋に吸いつこうとしたら、辞めさせてたって言ってたぞ」
真司くんは「オレの首なんかに唇つけちまったら、瑠奈の唇が汚れてしまう」と言ってたそうだ。安定のネガティヴ発言だなぁ。でも待てよ、真司くんが血を吸わせてくれなかったという事は、誰が血をくれたんだろう?リリムかな?
「リリムが血をくれたの?」
「いいえ、マサキさんですよ」
マサキの腕には、たしかにキバの跡があった。
「えぇ、マサキ⁉︎ ごめん、痛くなかった?」
「気にするな。それよりも、これからはオレの血を吸ってくれ。リリムはお前よりも身体が小さいし、血を吸わさせたら心配だ」
「マサキは、その……俺に……血を吸われてもいいの?」
「当たり前だろ、オレたちは親友だ」
「う、うん」
マサキはいつだって優しかった。いつでも俺の味方でいてくれた。だが、その優しさが今は逆効果だった。
あの日から、密かに想いを寄せている相手。その相手が「親友だ」と言ってくれた。だけど、それは「親友以上にはなれない」のだと言われているようにも聞こえてしまう。
やるせない思いが俺の体の隅々まで、覆いつくしていくように感じた。
「そうだ……ルナ、話したいことがあるんだ」
マサキは俺が落ち込んでいるのを気づかない様子で、話を変えた。
「オレ、部活で遠征に行くんだ。帰ってくるのも1週間後なんだ」
「ウソ……だよね?」
「ウソつく訳ないだろ」
「そ、そうだよね。アハハ……」
自分でも自分の顔が悲しみに暮れているのに気付き、無理矢理笑った。
それにしても、マサキが1週間もいないなんてとてもじゃないけど身がもたない。
「お、おい……たった1週間だぞ?それに、電話とかメールとかもあるんだ」
マサキは悲しんでいる俺を慰めようとしてくれるが、俺からすると電話やメールでは意味がない。電話で声が聞こえても、メールで文字が送られてきても、実物のマサキを見ないとダメなのだ。
でも、どうしても行ってしまうのなら……
「マサキ、あの……その……この前してくれたハ…グ……をして欲しい///」
自分で言っていながら、はずかしかった。
「ハグをすれば、1週間耐えれるのか?」
「う、うん。ハ…グ……してくれれば、我慢できる……と思う………」
言ってしまった。こんなこと言って仕舞えば、マサキは嫌われるかもしれない。まぁ、無理もない。なんせ、俺は男でマサキと中学まで親友だったのだ。そんな親友からいきなりそんなこと言われたらひくだろう。俺がマサキだったら絶対ひく‼︎
言ってしまったことだ。元には戻れない。でも嫌われるのは怖い。怖さで目をギュッと瞑った。
沈黙が部屋を満たす。たった数秒だろうに、俺には数時間にも感じられた。
「えっ⁉︎」
その長いようで短かった沈黙を破ったのは、暖かな胸だった。これが誰なのか目を開けて確認するまでもない。この落ち着く優しい匂いはマサキの匂いだ。マサキが俺を抱きしめてくれたのだ。
「ルナ……」
マサキの声のトーンが変わった。
「な、なに……?」
「オレ、お前のことが好きだ!」
驚きのあまり、数秒間の間フリーズしていた気がする。
「え、でも、さっきは親友って……」
「怖かったんだよ。お前に好きだって言ったら、気持ち悪がられるんじゃないかって」
「じゃあ、マサキにとって俺は……」
「あのハグの日からだ。あの日から、オレはお前を亮太じゃなく、ルナとしてみてた……」




