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目覚めると吸血鬼少女に  作者: らーめんま
第二章 つかの間の休息・文化祭編
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第76話:真司くんのお婆さん

 


「降りるぞ」


「え……う、うん」


 真司くんに守られながら、無事に電車で隣町まで行くことができた。


 しかし困ったものだ。今回は真司くんがいたからいいものの、自分1人で乗っていたらと思うとゾッとする。

 おそらく当分の間は、トラウマで電車に乗ることができなくなるだろう。



 列車から降り外へ出ると、懐かしい景色が広がっていた。

 何年ぶりだろうか……この町に来たのは。


 この町は小学生の頃に何度も来たことがある。たしか、この町にあった大きなショッピングモールに親に連れて行ってもらってたんだっけ。

 中学生になってからは、そのショッピングモールがうちの町に移転したから自然と、この町に来る理由も無くなった。




「着いたぞ」

 駅から10分ほどして、目的の病院へ着いた。


「駅から近いんだね」


「そのおかげで、オレもしょっちゅう見舞いに行くことができるんだ」


 病院は決して大きくも無く、小さくもない。

 病院内に入ると受付にいる看護師さんが真司くんに声を掛けた。


「あら、真司くん今日も来たのね。毎日偉いわねぇ〜。うちの子も真司くんぐらいしっかりしてくれると助かるんだけどねぇ」


「いえいえ、オレそんなしっかりしてないっすよ」


 真司くんは頭をかきながら遠慮がちに言った。

 どうやら、この病院の看護師さんたちは真司くんの人柄がいいことは知っているようだ。それもそうだろう。毎日とは言えないだろうけど、週に何度も見舞いに来ているのだ。外見はどうであろうと、根はいいやつに決まってる。


 看護師さんたちと真司くんは世間話に花を咲かせていたが、やがて真司くんの隣にいる俺についての話題に変わった。


「隣の子って、もしかして真司くんの彼女さん?」

「あら意外!真司くんにこんな可愛い彼女さんがいたなんて‼︎ うちの真司をよろしくね」


「ちょい、いつオレは看護師さんの子供になったんすか。それに、こいつ……瑠奈はただの友達ですよ」


 俺も急いでうんうんと頷いた。



「そうだったのね。でも、友達が来ただけでも良いことだわ。きっと、お婆さんも喜ぶわよ」



 真司くんと看護師さんが親しく話している間、俺はその話の輪にも入りきれず、完全アウェーを感じながら、病院内を見回していた。


 受付が妙に慌ただしい。

 誰か、救急車で運ばれてきたのかな?

 そう思いながら、受付の様子を眺めていると、ちょくちょく受付の看護師さんと目があうのだ。その度、お互い会釈をして目をそらす。そのくりかえしだった。



「おい、瑠奈聞いてるのか?」


 肩をトントンと叩かれ、意識が真司くんたちの方に向いた。


「どうしたんだ、ボーッとして?」


「看護師さんたち、忙しそうだなぁと思って」


「きっと、急患でも運ばれてきたんじゃないか?」


「そうだね」


 だが、看護師さんたちの慌ただしい様子は俺の心の中にしこりを残した。





 真司くんのお婆さんの病室は3階だった。3階のナースステーションでも真司くんは声をかけられ、しばらく話していた。暇な俺は、近くの席に腰掛けていた。



 10分ほど経ち、真司くんが戻ってきた。


「また、長話になってしまって、すまないな」


「いやいや、気にしないで」


 3階の廊下をずーっと行った先の端に真司くんのお婆さんの病室があった。

 室内にはお婆さん4人が居た。

 真司くんは周りのお婆さん達に挨拶をすると、窓側にいるお婆さんに話しかけた。


「婆ちゃん、調子はどうだ?」


「おかげさまでだいぶ良くなったよ」


 そこには、上半身だけ体を起こし、読書をしているお婆さんがいた。とても、優しげな顔をしたお婆さんだ。

 俺は、内心すごく安心した。真司くんからは今の病状も詳しく聞いていなかったので、寝たきりを想像していた。予想していたよりも、真司くんのお婆さんは元気そうだ。


「おや、真司。ようやく彼女さんを連れてきてくれたのかい?」


 お婆さんは俺の方を向くと、嬉しそうに真司くんに言った。


「あらまぁ〜、べっぴんさんね」

「お人形さんみたいねぇ」

「可愛いわねぇ」


 周りのお婆さん達も、俺に反応を示した。


「いえ、あの〜……」


 圧がすごい。

 真司くんのお婆さんも喜んでるし、周りのお婆さん達も完全に付き合ってると思ってる。否定すると雰囲気悪くなるし、こんなに喜んでいるお婆さんを悲しませるわけにはいかない。


 ここはひとつ、真司くんの彼女を演じることにするか?


 俺がどうしようかと迷っていると、真司くんが助けに入ってくれた。


「瑠奈は彼女じゃない。ただの友達だ。ほら、婆ちゃん言ってただろ。友達連れてきてくれると元気が出るって」


「あぁ、そうだったのかい。そりゃそうさ、真司は友達がいないからね。わっははは‼︎」


 お婆さんは、真司くんのナイーブであろう部分を容赦なく、えぐってしまう。しかも、爆笑している。


 傷ついているのではないかと、真司くんの顔を覗くが、お婆さんの笑顔を見て幸せそうだ。まったく、どうすればこんなに良くできた子供が育つのだろうか。


 お婆さんとはそのあとも話し、お婆ちゃん直伝料理テクニックをいくつも教えてもらった。とはいえ、その前に料理が上手くないとダメなのだが……





「そろそろ帰らないとな」


 真司くんが腕時計を見ながら、言った。

 時刻は7時半。たしかにそろそろ帰らないといけない。


 すっかり打ち解けたお婆ちゃんと別れるのは名残惜しい。


「お婆ちゃん、また今度」


「いつでも待ってるよ、瑠奈ちゃん」


 別れの挨拶を済ませ、手を振りながら病室を出る。すると


「うちの真司をよろしくお願いします」


 と、お婆さんは言った。

 結局、真司くんの訂正虚しく、お婆ちゃんは俺のことを真司くんの彼女だと思い込んでしまったらしい。


 ま、それでもいいのかなぁと思ってしまう。あのお婆さんがあれだけ喜んでくれるのなら、悪い気はしないし、真司くんだって嬉しいはずだ。






 帰り。

 行きのように真司くんに壁になってもらいながら電車に揺られていた。

 窓から見える夜景を眺めながらも、時々真司くんの顔を覗いてみる。すると、病院に行くまでとはまったく違った、生き生きとした表情に変わっていた。


「ん、オレの顔に何かついてるのか?」


 俺が顔をまじまじと見つめているのに気づいたらしい。


「いやいや、ただ、いい顔してるなぁと思って」


「どういう意味だ?」


「お婆さんと会ってから生き生きしてる」


「そりゃそうさ。瑠奈が一緒に行ってくれたおかげで婆ちゃん、ものすごく喜んでた。それ見るとオレも嬉しくなんだよ。今日はありがとな」


 そう言うと、真司くんはニコッと笑った。

 無邪気に笑う子供のようなその笑みは、見てるこっちまで、幸せな気持ちにしてしまう。



 相変わらず、人でぎゅうぎゅうの電車の中。今日はいろいろあったけど、真司くんと一緒に来て良かったなと俺は思った。


明日も投稿します!明日は真司目線での話になります。

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