第69話:水戸のスペック
どうも!
今回も一人称です。というか、これからとうぶんは一人称です。
「では、尾羽くんは夜月さんの後ろの席へ」
お祓い屋は俺の後ろの席に座ることになった。
にしても、まさかお祓い屋がうちの生徒だったとは……いや、それよりもお祓い屋の名前が尾羽頼也だったという方が驚きだ!まんまじゃん‼︎
4校時が終わり、俺はお祓い屋に話しかけてみることにした。
「おい、お祓い屋」
「何だ?」
「お前、この学校の生徒だったのか?」
「まぁな…生徒になるつもりはなかったんだが、校長から言われてな」
「何を言われたんだよ?」
「お前は知らなくていい…」
「なんなんだよ」
「お二人さん、仲いいんだね〜」
俺がお祓い屋と話していると明里が話に割り込んできた。
「別にそういうわけじゃないよ」
本当にそういうわけじゃないので否定した。
「ふ〜〜ん……、じゃあ、私はお邪魔みたいだから、今日は他で食べとくね」
明里はニヤニヤしながら、他の女子の輪に入っていった。
いつもは、明里と彩香と3人で弁当を食べている。
明里もいつものように俺の席へ来たのだろうが、今日はどうしてもこのお祓い屋と話をしてみたかったので、明里が自ら他へ行ってくれたのはありがたい。
「それで、もう一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「この前、お前と一緒にいた魔法少女はなんなんだ?」
「あれか…まだよく分からんが、ルナ、お前がいなくなったあと、代わりにこの街で魔物を倒している」
「一体誰なんだ?」
「だからそれは分からん。しかし、この学校の生徒で間違いないと思うぞ」
「この学校か……それにしてもなんでこの学校はいろんな特殊なやつがいるんだろう?」
「その特殊なやつの一部がお前だろ!」
「確かに…」
「……、あと、忠告だが、あの魔法少女には気を付けろよ。お前が魔物だと分かった以上、倒しにくるかもしれない」
そう言い終えると、お祓い屋は教室をあとにした。
「それではみんな、課題忘れないようにやってくること!」
終礼(先生の話)が終わり、生徒たちはそれぞれ、部活だったり、家に帰ったりしている。俺も早く家に帰りたいのだが、被服室に行くと言う約束をしてしまった以上行かなければならない。
内心面倒だと思いながらも被服室へ足を進めた。
被服室は職員室や生徒たちの教室がある校舎にはなく、理科室や音楽室などの特別教室が集まった別校舎にある。
うちの学校は生徒数が増加し、だんだんと増築していってるので、他の学校と比べると、やや複雑な形をしている。そのため、移動するのにも時間がかかるし、この学校に来て2年経つ俺でも、時々迷う時があるくらいだ。
5分ほどして着いた。
「着いたは着いたけど… 入りたくないなぁ」
被服室へ来たまではいいが、面倒くさいのでできれば帰りたい。
被服室からは女子のキャッキャ言う騒ぎ声が。どうやら俺に着せる服のことで盛り上がっているらしい。
控えめにゆっくりとドアを開けた。すると、待ってました!というように更衣室にいた女子3人、渡辺さん、木下さん、坂口さんが俺の元に駆け寄ってくる。
「夜月さん、遅いよ!」
「来ないんじゃないかと心配したんだよ!」
「よかった、来てくれて!」
「ごめん、少し遅くなっちゃって」
「いーのいーの、気にしなくて。ささ、こっちに」
渡辺さん達は俺の袖を引くと被服室の端へ移動した。そこには大きな鏡があり、病室にあるようなカーテンレールで周りから見られないように仕切ることができるスペースになっていた。ここで、服を着替えたりするのだろう。
「これから夜月さんの身長やスリーサイズを計測するから」
「え、身長とかならともかく、スリーサイズも⁉︎」
「当たり前でしょ!」
「たしかに当たり前と言われればそうなのかもしれないけども…」
それからテッテー的に測定しまくられました。
「よし、全部測り終えたよ!」
やっと終わったかと俺は胸をなでおろした。何しろ、女子3人が間近で俺の測定をしているのだ。恥ずかしくないわけがない!
「夜月さん、顔赤いよ?」
「たしかに恥ずかしいよね」
「でも、恥じることなんてないじゃん。スタイル抜群だよ!」
「そうなの?」
「うん! 教えようか?」
「あ、結構です」
遠慮しておいた。女の子になってしまった時にはすでに自分のクローゼットやタンスの中は全部女子ものだったし、下着もサイズぴったりだった。だから、スリーサイズなんて測ったことがなかった。測ることで、自分が男から離れていってしまう実感が湧いてくるのが怖かったからというのもあるかもしれない。
「それにしてもすごいよねー!」
渡辺さんの声で我に返った。どうやら、俺のスリーサイズのことでまだ盛り上がっているらしい。
「うんうん。水戸くんの言った通りだったもんね。」
「確認の意味で測ったけど、水戸くんの予想通りだったね。」
3人とも水戸について話している。水戸といえば、うちのクラスでダントツのスケベ野郎だ。前々からやつの視線は感じていたが無視していた。その水戸が女子の間で話題されるのなら、だいたいの場合は悪口なはずなのだが、今回は3人とも『すごい』と感心している。いったい何がすごいのだろうか?
「3人とも何の話してるの?」
「え、あぁ〜、水戸くんがね、私たちが夜月さんの衣装を作るって話してた時に夜月さんのスリーサイズを教えてくれたのよ。それがなんとピッタリ合ってたの‼︎」
「え、なんであいつが⁉︎」
「見ただけで、分かるらしいよ!」
「じゃあ、俺のも見てわかったの?」
「夜月さん、可愛いのに俺っているのはどうかと思うけど……。うん、そうみたいだよ」
「マジですか」
なんだよ、あの水戸!苗字は立派な感じを醸し出してるくせに、しょーもない特殊スペックを持ちやがって!
俺が1人でキレているのをよそに、3人は衣装のデザインを決め始めた。
「ボロ服衣装はすでに考えたけど、ドレスはどんなのにする?」
「たしか、ドレスは青だったよね」
「そうだった」
「私、背中を見せたり胸元を見せたりするような、少し大人っぽいドレスでもいいと思う!夜月さんに似合うはず‼︎」
「確かに!そっちの方がいいかも‼︎」
「ドレスも黒にした方が大人っぽい魅力が出ていいと思うよ!」
おいおい、だんだんみんなの趣味になってきてるじゃん。もはやシンデレラのドレスでもなんでもなくなってるし。
「あのー、そういう露出があるのはできれば控えさせて欲しいんですが…」
「ちょっと黙ってて」
「私たち、真剣な話をしてるのよ」
「そうよ、夜月さんの魅力をより一層引き立たせるようなドレスを考えてるんだから」
「なんかすみません」
もはや、3人の熱い議論を止めることは出来ない。内心、どんなドレスを着させられるのだろうかと不安になってきた。というか、俺ってもう帰ってもいいんじゃないの?
「あのー」
「どうしたの?」
「もう帰ってもいいかな?」
「いいよ、今日はありがと!」
「気をつけて帰ってね。怪我なんかされたら私たちの頑張った意味がなくなるし」
「楽しみにしててね。とっておきの衣装作っておくから‼︎」




