第65話:異世界侵略会議
今更ですが、ルナの通っている高校の名前を一度も書いてなかったようだったので。
ルナの通っている高校は常和高校という名前であります!
「えー、まずはこの計画の経緯ですが…」
正面に座っている魔物が話し出した。どうやら、司会進行役のようだ。
だが、経緯説明をしようとする進行役にサキュバスが一言。
「経緯はこの場の誰もが知っているはずじゃ。妾も暇ではない。話を先に進めるのじゃ!」
幹部であるサキュバスの発言力はさすがに凄いようで、進行役は「で、では作戦計画の話に進みます。」とおどおどしながら話を先に進めた。
これでは机が円卓なだけで、円卓会議ではないようだ。
ルナは会議のメンバーを見回した。サキュバスもなのだが、メンバーの数人には異様な威圧感のような強力な力を感じられる者が数人存在していた。もしかすると、その数人も幹部なのかもしれない。
「では、この度の侵略指揮はサキュバス様が担当されておりますので、サキュバス様の方から説明を…」
先ほど怒られたせいか、進行役は遠慮がちに言った。
会議参加者全員の視線がサキュバスに向けられる。
「では、妾……」
と、サキュバスが言いかけた途端に1人の魔物が爆笑し始めた。
「ははは!」
「わはははは!」
「わははっ⁉︎ ゲホッゲホッ‼︎」
それに伝染したかのように、周りの魔物たちも笑い出す。(1名だけむせていたが)
笑っていないのは進行役とルナだけだった。
何がなんやらわからない進行役とルナ。2人はお互いに目が合い、2人で首を傾げた。
その2人を見て、先ほどの只者じゃない威圧感を放っている魔物が話しかけた。
「君たち2人は新人なんだろ?」
その問いに2人はほぼ同時に「はい」と答えた。
「あのサキュバスはもともとあんな話し方じゃないんだよ。なのに最近……クスクスッ…似合わねぇ〜」
話の途中で笑い始めた魔物を見て、『なのに最近なんなんだよ』とルナは心のなかでつぶやいた。
あまりにも周りに笑われるため、サキュバスは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「もぉー! みんなひどいよぉ‼︎」
サキュバスから先程までとは全く違う話し方になったことにルナは仰天していた。
「みんながもっと幹部の風格を出せっていうから、喋り方変えてみたのにぃ〜」
どうやらこれが素のサキュバスのようだ。女帝のような素振りからぶりっ子に変わったのは相変わらず驚いたが…
「まぁ、たしかにお前の演技力は凄いと思うぞ。人間の男を誘惑する時や今回のキャラもな。だけどな、普段のお前の素を知ってると笑いが止まらないんだよ」
「えぇー、ひどいなぁ〜」
がっかりした様子で肩をうなだれるサキュバス。どうやらサキュバスはいじられキャラでみんなから可愛がられてる模様。
ルナはサキュバスのキャラを知ってホッとした。『妾』キャラより絡みやすそうだ。
「コホンッ」
威圧感ハンパないっすねな魔物が咳払いをすると全体が静まった。ここから再び会議が始まる。
「えーと、じゃあ改めて私から説明させてもらおうと思いまーす」
皆は真面目な顔つきでサキュバスに視線を集中させる。
「まずは、侵略を進めるための兵を集めるのに一ヶ月の準備期間を設けます。」
真面目に話し始めるサキュバスを見て、ルナは「こいつもやるときはやるんだ」と感心した。
「で、次に、作戦なんですけど、最初に常和高校を攻めようかと。」
「と、ときわぁ⁉︎」
常和高校という言葉にルナは衝撃を受けた。あまりの驚きに声を出してしまい、皆が一斉にルナの方を向く。
皆の視線を感じ、ルナは「すみません」と謝ると心を落ち着つけた。
「で、なぜその常和高校とやらを攻めなければいけないのかを聞いてもいいですかな?」
「えーと、それはその常和高校というところに、対魔物専門の軍隊が組織してあるとわかったからです。」
その発言を聞いてルナは納得した。たしかに常和の討伐団が日本の警察や自衛隊より魔物との戦闘経験に優れている。それに討伐団は魔物専門の軍だ。よくよく考えるとまず常和が狙われることは当たり前だった。
「常和高校の西に一キロ離れた場所にある転移用の歪みから攻め込みます。」
「一箇所だけからで大丈夫なのか?」
「それは心配ないです。こちらの方で歪みはできる限り大きく広げてますし、全方位から攻めるよりも効果的です。」
その後も作戦説明が続いた。
簡単にまとめると、一ヶ月後にサキュバスが大軍を引き連れて、高校から西に一キロ離れた地点から攻め込み、高校を一気に陥落させるというものだった。
作戦が分かり、この世界ともおさらば出来る。そう思っていたはずなのだが………
いくら憎む魔物たちだったとしても、この世界に来てダンやリシュナなどたくさんの心優しい魔物とも出会ってきた。彼らといざ別れると思うと悲しくてたまらなかった。
「ダンやリシュナが魔物じゃなかったらなぁ…」
2人が魔物ではなく、人間だったならば永遠にいい友達でいられただろう。
ルナは部屋に戻った。リシュナは仕事中らしく、部屋には誰もいない。それはかえってラッキーだった。あんなによくしてくれたリシュナに別れを言うなんて辛すぎだ。代わりに手紙を書いて部屋に置いていくことにした。
改めて、思い出の部屋を見渡す。ルナにとって、この部屋はリシュナとの思い出の場所だ。2人で夜遅くまでお喋りをしたり、笑ったり、時にはルナのことを思って泣いてくれたり………
「ダメだ、耐えきれない。」
頬を伝う涙を拭い、ルナは部屋をあとにした。
ダンやサキュバスなどには、一応辞めることを伝えた。
ダンはこの前のアロエのことでルナが辞めるのかとルナを助けきれなかった自分を責めていたし、サキュバスは例のあの性格でオマケに後輩にすごく優しく、2人ともルナが辞めることを惜しみながらも了承してくれた。
ルナは魔城の通路を歩いていく。リシュナと2人で掃除をしていた通路だ。
長い通路を歩ききり、城門にたどり着いた。いよいよお別れの時だ。
「リシュナ、ダン、その他にも色々とお世話になった皆、今度会うときは敵同士だろうけど、今まで……ありがとう……………………」
念のため、帝都からだいぶ離れた誰もいない森の中に行った。
ルナは周りに誰もいないことを確かめると、ディメンジョンストーンを木に設置する。
「頼むぞ〜! 歪み来い‼︎」
ルナの願い通り、ディメンジョンストーンから空間の歪みが現れた。
「よし、戻るぞ!」
ルナは歪みの中に飛び込んだ。久しぶりの歪みにルナは軽く車酔いを起こしていた。
「なんか、気持ち悪い…」
歪みをどうにか超えた。
魔城では感じられなかった日の光がルナのほおを照らす。そして、周りはワイワイガヤガヤと小うるさい。どこか懐かしい場所のような気がする。
それもそのはず、ルナは常和高校の教室の自分の席に座っていたのだ。
まさか自分の座席に転移すると思ってもいなかったルナは驚きの声を上げた。
「えー! いきなりここに⁉︎」
その声に反応し、クラス全員、そして先生が驚く。
「「「えぇー!いきなり現れた⁉︎」」」
ルナは教室全体を見渡した。懐かしい顔ばっかりだ。明里も彩香も、そしてマサキも…
みんながいた。




