第66話:久しぶりの学校
懐かしい仲間が皆、驚きの表情を浮かべている。
「すげー、急に現れた!」
「なんでメイド服着てんだ?」
「スヤスヤ……ッ‼︎ あれっ、もう授業終わったの?」
先生が黒板に板書しているので授業中なのだろう。しかし、ルナがいきなり現れたことによって、授業どころではなくなった。
「ルナー! どこ行ってたのよ?」
明里がルナに駆け寄った。
「えーっと、それは…」
「それに、なんでメイド服着てるの?」
明里は聞きたいことが多すぎて、どんどんと質問をぶつけてくる。
「おい、もういいだろ。ルナだって困ってるじゃないか。」
ルナが回答に困っていると、マサキが助けに入ってくれた。
(ありがとう、マサキ!)
「にしても、突然現れてその服装はどうかと思うぞ。学園祭でもないんだしな。」
「ん?」
向こうの世界ではすっかりメイド服の生活なので慣れていたが、ここは学校。
学園祭でもなく、通常の日の授業中にメイド服で現れるのは普通の女子でも恥ずかしい。まして心は男であるルナには2倍の恥ずかしさが襲ってくる。
(向こうでこればっかりだったからマヒしてたけど…は、恥ずかしい‼︎)
ほおを真っ赤に染め、席を立ち、教室から逃げようとするルナを先生が呼び止めた。
「夜月さん、待ちなさい!」
ビクッとなり、ルナは足を止めた。
「夜月さん、校長先生がお呼びですよ。」
「え、校長先生がですか? 今、学校に来たばかりなのに??」
「校長先生はあなたがこの学校に来た時、すぐに校長室に来させるようにと前々からおっしゃっておられたのですよ。」
「わかりました。」
………とは言ったものの、このまま校長の部屋に行くわけにはいかない。
(1回家に帰って着替えてくるか。)
ルナは廊下の窓を開けると、誰も見ていないことを確認し、吸血鬼に変身して飛び立った。
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ピンポーン♪
インターホンを鳴らす。
(プププッ…リリム、きっとびっくりするだろうな〜♪♪)
ドアの鍵が開く音がし、可愛い少女が出てくる。
「久しぶり、リリム!」
「え、えー‼︎ ルルルナさん⁉︎」
ルナの予想通り、リリムはびっくり仰天だ。
「いったいどうしたんですか?」
「任務を終えて帰ってきたんだ。それと、俺の制服ある?」
「もちろんありますけど……。あー、ルナさんまた『俺』に戻っちゃってるじゃないですかぁ〜!」
「ごめんごめん。リリムの顔見たらホッとしちゃって素が出ちゃった。」
「これからは気をつけてくださいよ! はたから見れば、ルナさんはどう見ても女の子なんですから!」
「それはわかってるけどさ、やっぱりね、俺の思った生き方でやっていったほうがいいと思うんだよ。」
「もー、わかりました。」
ルナの自分の生き様について語られ、リリムはしぶしぶ頷いた。
「ところで、なぜそんな服装を? 自分が男って言ってる割には変じゃないですか?」
少々痛いところをつかれた。
「やっぱりそこ聞いちゃう?」
ルナは少々面倒だったが、ことの経緯を丁寧に説明した。
「なるほど〜、大体わかりました。で、制服ですけど、ルナさんの部屋にありますよ。」
「うん、ありがと。」
ルナは久しぶりの自室に入った。
(この前は、リリムもマサキもいたからなぁ)
やはり、自分の部屋で1人でいるととても落ち着く。
だが、のんびりしている時間はない。
制服を取り出そうとクローゼットを開ける。
「懐かしいな、この制服。」
初めは抵抗感があった女子の制服だが、今ではすっかり慣れてしまった。
「じゃ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
制服に着替えたルナはリリムに見送られながら、再び高校へ向かった。
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「失礼します。」
ルナはそーっと扉を開ける。過去に何度か校長室には来たことがあるが、いまいち慣れない。
「まずはお帰り。さぁ、遠慮せずに腰掛けて。」
校長はルナに来客用のソファに座るように促した。
ルナはありがたく座らせてもらう。
「すまないが、さっそく本題に入ってもいいかな?」
「もちろんです!」
「では、話しておくれ。」
「はい。今回の調査で魔物たちがこの高校、そして国を狙っていることがわかりました。」
「ほうほう。」
「日時は今日からちょうど一ヶ月後。この学校から西に一キロ離れたところから現れて、攻め込むそうです。」
「なるほど。で、相手の戦略もわかるのなら教えてくれないかい?」
「現れた位置から、一気に攻め込むそうです。全体で包囲しながら進んで行くより、一つの槍のようになったほうが相手の防衛も突破しやすいということで。以上です。」
「すまないね。夏休みだし、遊びたいだろうにこんな危険な任務を任せてしまって悪かったね。」
校長は申し訳なさそうにルナに頭を下げた。
「いえいえ、私も魔物を倒すための役に立てて光栄ですよ。」
「そうか。それならいいのだが…」
「お忙しそうですし、私はこれで。」
「君は随分と気が聞く子だね。今回は本当によく頑張ってくれた。これから一ヶ月間は疲れを癒してくれ。」
「いいんですか? これから戦う準備とかは…」
「そこは大丈夫だ。あらかじめ予測はしていたので準備はとっくに済ませておる。」
校長はどうやら忙しかったらしく、ルナと話し終えるとすぐさま出かけて行った。
校長室から出ると、時刻は4時過ぎ。放課後だ。
(そうだ! 久しぶりにマサキと帰れるぞ♪)
すぐに教室へ戻った。
「あれ、マサキは?」
教室を見渡しても、マサキらしい人影はない。
「あ!ルナ先輩‼︎」
背後で明らかに会ったら面倒な奴がいるとルナは確信した。
逃げようと一歩踏み出すと…
「会いたかったです〜」
背後から抱きついてきた。
「おい、こんな場所でやめろよ、凛!」
ルナは凛を背中から引き剥がした。
「せっかくルナ先輩が戻ってきたって聞いたから飛んで駆けつけたのに…」
凛は涙を浮かべる。
「おいおい、そんな可哀想アピールしたって無駄無駄! 俺は忙しいんだ‼︎」
「嫌ですー!私を置いて行かないで‼︎」
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「ということで、こいつも付いてきてしまいました。」
「……そうか。」
ルナがマサキがいないことにがっかりしながら家に着くと、そこにマサキはいた。どうやらルナの姿が学校で見当たらなかったので、家に寄って行こうかとしていたらしい。
今まさにインターホンを鳴らそうとしているマサキとばったり出会ったのだ。
「マサキ、上がっていくだろ?」
「おう。」
「久しぶりだなぁ。マサキとこうして学校から帰ってから遊ぶなんて。」
「確かにそうだな。それよりもこいつ、さっきから俺のことをすごく睨んでくるのだが。」
マサキを睨んでいるのは凛だった。
相変わらずルナの背中に引っ付きながら、マサキを睨みつけている。まるで威嚇しているようだ。
「おい、マサキを睨むな!」
「ルナ先輩! 気安く男を部屋に入れたらいけませんよ!」
その言葉を聞いて、ルナは不思議に思った。遊園地の時にマサキを彼氏と偽って、凛を降参させたはずだ…
「ルナ先輩、まさかあの遊園地でこの男と付き合ってるって、私が信じたと思ってるんですかあ!!」
「え、信じてなかったの!」
「当たり前ですよ、バレバレです。」
どうやら、あの作戦は失敗に終わってしまったようだ。
「いや、でもね、マサキは俺の親友で…」
「ルナ先輩、私はルナ先輩が心配でこうしてるんです!」
「だから心配ないって。」
「いえいえ、男は獣です! 部屋に呼んだら、いきなり襲いかかってくるかもしれませんよ‼︎」
「黙って聞いてたんだが、ひどくないか?」
マサキはずっと黙って聞いていたが、凛から勝手な誹謗中傷を言われ、いささか傷ついているようだった。




