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お酒は二十歳になってから


「きゃはははッ!ん〜〜〜目が回るぅ〜〜〜とりあえずかんぱーい!!!」


 タオさんの店を出た後、リンに誘われ彼女の家に泊まる事となった。

 なんと彼女には持ち家があったのである!

 知らない奴と同じ屋根の下で寝るなんて正気じゃないわね……との事だが俺は良いのだろうか?


「くらくらするぅ。これ二日酔いだぁ。あれ?一日酔い?わかんなーいかんぱーい!」


 銅級なのに家を買える程の蓄えがあるのかとも思ったが、修行がてら盗賊を闇討ちして金を稼いでいたらしい。

 ますます親近感わくなぁ。

 アイツらの蓄えた財産は出所不明だから奪うのに罪悪感ないんだよね。


「ちょっとー?全然飲んでないジャーン。ジャンジャンジャジャンジャーン!ほらかんぱーーーーーー」


「お前誰だよ!!!!!!!?」


 家について部屋に案内されて。

 借りた水桶で身体を清拭し寝巻きに着替え、さて休もうかという時にリンが部屋に入ってきた。

 薄手の部屋着姿で束ねていた髪を下ろしている。

 手には酒瓶とグラス。


「少し話さない?」と。

 

 露骨な思惑に顔を顰めそうになるが、貰える酒を断る理由もなく杯を交わした。

 その次の瞬間これである。

 代謝早過ぎ酒弱過ぎ。


「もームッツリしてないで飲みなよぉ。それとも私のカラダが気になって集中出来ないとかぁ?やらしーー!」


「いたッ!いてえッ!!まじ痛いからバンバン背中叩くのは辞めろ!」


 こんなふざけた動作にもスナップを効かせてきやがる。


 (変態……)


 (お前の語彙は変態しかないのか?)


 (変態。サイコパス。人間のクズ。殺人鬼。命の価値が鳥の羽より軽い外道。清流だと溺死する川魚。カイリ菌)


 皮肉だよ皮肉!あとカイリ菌はやめろ!!!!!


「あなたってさぁ、クズだしセコいしガラ悪いし取っ付き難いし女の子の体をバラバラにするしクズだし――――、」


 クズって2回言った!いや取っ付き難いの人の事を言えるぅ?


「全然性格は似てないけど――――なんだか少しだけお兄ちゃんに似てるのよね、顔が」


「それ逆じゃない?普通は、どうしよう?顔は全然違うのに…………なんだかお兄ちゃんに似てる……キュン!ってなる奴じゃない?」


「ありえねーーー!きゃははははは!」


 またまた俺の背中を叩きだす。あーうざ。

 でも酔っ払ってるなら好都合かもな。これを利用して色々聞き出してやる。


「しかし昼は驚かされた。お前は強いな。美しい流麗な動きに鉄槌の様な一撃。見た事もない動きだった。なんていう武術なんだ?」


「美しい!?うれしーーーーー!!!えーーーどうしよっかなぁ。カイリならいっかぁ。本で読んだんだよ。それで覚えた!家にあった奴!名前はわかんない!!!」


 ほう。武術書とは興味深いな。

 本読んだだけで理解出来るとか舐めてんのかとも思わんでもないが、俺も似たようなものだしな。

 ミサト図鑑に死体図鑑。


 武術書には技術や修練方法だけではなく、生み出された経緯や思想、身体作りの為の料理のレシピ、過去の担い手についてなど記されている物もある。

 一つの歴史書だな。


「へぇ、良ければ見せて貰ってもいいか?本には目がないんだよ」


「もう無いよ?燃やしたし」


「もやッ!?」


「覚えたしねー。弱点書かれた本残しておくとかバカじゃん。ばーかばーか!」


 この野郎……貴重な書物になんて事を。

 だが行動自体は合理的で間違った事をしてるわけではない。ぐぬぬぬぬ。

 まあいい、結構オープンだし直球でいってみるか。


「凄まじい技術だったしな。でもそれだけじゃないんだろう?とっておきがあると見た」


「ええーそれは乙女の秘密だよぉ。カイリのえっち!」


「いてえ!!!!」


 デコピン!?今デコピンくらったの!?いや本当にデコピンなの!?痛すぎっ!ってか血が出てる…………。


「まっ、まあ一方的に教えろとは言わないぜ?俺のとっておきを見せてやるからさ。気に入ったなら教えてくれよ」


「えっー!なになに楽しみー!」


 俺は額をタオルで拭いほくそ笑む。

 よーし、この流れなら上手く行くぜ!


「よく見てろよ。――カーボネイト・ウィンド」


 俺は空気中の二酸化炭素を分離。リンのグラスの葡萄酒に炭酸ガスを浸透させた。

 どうだ!酔っ払いには最高の魔術だろう!!!


「すごいー!!!しゅわしゅわだああああ!それじゃあかーぱーーーーい――――スヤァ」


 酒を煽って一瞬で撃沈するリン。

 嘘だろ?え?情報は?


 (ばか……)



 


 そして翌日である。

 お約束のようにリンは何も覚えていなかった。

 俺はテーブルに伏せったリンを放置し、隅っこに敷いた寝具で眠った。

 万能アラートのミサト様がいるので仮に不意打ちをされても安心安全。

 リンが起きたら直ちに起こすよう伝えておいたが杞憂だった。

 ちなみに妙な勘違いは起きませんでした。


「久しぶりに飲んだから頭が痛いわ………」


 こめかみに指を押し当てるリン。

 久しぶりの問題なのかなぁ。


「これから冒険者ギルドに行くのに大丈夫なのか?別に明日でもいいぜ」


 ヘマされても困るしな。


「大丈夫よ。本当に辛かったら死ぬから」


「さよですか」


 命の価値が羽より軽い奴だな。


「じゃ、確認するぞ。これからギルドで銀級昇格の申し込みをする。リンがな」


 まず冒険者になったら銅級として登録される。

 これは簡単だ。僅かな金さえ払えればいい。

 次の銀級だが、こちらは申し込み費用に加えて審査がある。

 

 1に戦闘能力審査。ギルドの指定した人物と戦い能力を示す。

 勝たなくてもいいが殺したら駄目。

 冒険者には手加減を求められる時もあるからだそうだがそれは建前だ。

 無駄に殺して人員削るような危険な奴は銀級に出来ない。当然の理屈ではある。


 2に特別依頼。強制的にギルドが指定した依頼をクリアしないといけない。

 依頼の種類は多岐に渡るから一概には説明できないな。こちらの方が厄介だ。


「なんで私だけなの?別にいいけれども」


 不満そうに溢すリン。


「リーダーが銀級ならそれで銀依頼は受けられるからな。目立つ必要があるのはお前だし。何よりめんどくさい」


「……納得はしたけどね」


 ジトっと半目で睨むリン。

 ははっ、顔がいい奴にそれやられてもなんともないぜっ。

 

「ところでパーティ名はどうするんだ?リーダー?」


「どうするって……昨日決めたじゃない?イカれ仮面をぶっころ……」


「ああそうだった!《鋼鉄の風》だったな!俺たちコンビを表した最高のパーティ名だぜ!!!」


「いやだからイカれ仮………」


「ギルドについたぜ!リーダー!!!これから俺たちの伝説が始まるんだ!!!」

 

 流石に許容出来ない。ネーミングセンスが壊滅的過ぎるだろ……。


 (私はディザスター・プリンスとかがいいと思うよ?ふふふ)


 もうやめて。

 

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