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ギフトの使い方


 首につけられた縄が皮膚を擦りむいて痛いこの痛みすらもう感じる事が出来なくなるのか…………さむい酷く寒さを感じる今から死ぬのか俺はどうしてなんだこれは現実なのか死にたくないどうして俺が強盗なんてよくわからない死にたくないあの人が良い提案があるっていうからみんな興奮して俺も興奮してどうして?なんてことをしてしまったんだわからないどうしてなんだあの日は弟の誕生日だったのに死にたくない死にたくない死にたくないあっ背中を押され………………さむい。


「ッ!…………ふぅ」


 俺はカイリ。19歳。男。読書とご飯が大好き。アクアパレスを拠点にしている銀級冒険者。現在は冒険者を休業してアムスネツィアで臨時で先生業を営み中。正直めんどい。ここはカサンドラの泊まっているホテル。広くて清潔。二人で長椅子に座りながら情報交換中。

 よし。リセット完了。


「何か見えましたか?」


「いや、前の二人と同じだな。誰かにけしかけられた様だが詳細はわからん。操られていたのかも不明だ」


 ご本人様はやった事に納得がいっていない様だが犯罪者の思考としては珍しい事でもない。現実逃避して事実や感情を捻じ曲げたりとかね。

 クラウディ先生の"殺人貴婦人"なんかもそういう感じだったし。


「唆したであろう()()()の事も分からないしな。そもそもそいつ自体が操られている可能性もある。今回は三人ともスカだな」


「そう簡単にはいかないんですね。初めて聞いた時は探偵や憲兵が涎を垂らしそうな力だと思いましたけど」


 殺した犯人を探るってんならそこそこ使えるけどな。

 だがあくまで視点は死体の一人称。その時死体が考えていた事しか映し出さない。手放しで信じられるものでもない。


「そう便利な力でもないさ。なんならお前も見てみるか?この()()()の記憶を」


「えっ、出来るんですか?」


 えー?思った反応と違うぞぉ。てっきり嫌な顔して断ってくると思ったのに。凄い嬉しそうな顔してる。

 まあカサンドラだしな。物騒が特攻服着てる様な奴だ。


「出来るよ。この力は殆ど使い道ないし、ギフトバレのデメリットが大き過ぎるから数える程しか見せた事ないけど。見たいのなら俺は構わないが」


「…………お願いします」


 そわそわしながら肩を寄せてくるカサンドラ。

 彼氏とホラー映画見るんじゃないんだぞ。まったく。

 まあいいか。こいつは俺のギフトを知っているからな。それに予想以上に話が長くなったから眠い。休みたい。好都合だ。


「よし。目を瞑って俺に背を向けろ。…………動くなよ」


 俺は右手で眼球を握りながら左手でカサンドラの頭部に触れる。瞬間、


「ッ!?————————おぇっ……げほっ…………おえええ…………はぁ……はぁ……」


 おうおう派手に吐いたな。背を向けさせておいて本当に良かった。

 ショックで幻影が解けたのか、着物から椿柄が消えてただの黒地になっている。こいつ東方服自体は普通に着ていたんだな。

 しかし胃液ばかりで残渣物は少ないな。少食でもなかったと思うが。夕食は軽食で済ませたのかな?忙しそうだしね。


「…………はぁ、すみません。すぐ片付けますので」


「いや、俺がやるから口拭いて休んどけ。今回は控え目だが()()()()()のは堪えるだろ?」


「すみません。…………ありがとうございます」

 

 長椅子から離れるカサンドラから布巾を奪い片付けてやる。本人はベッドの前まで歩き、一瞬枕に視線を向けたのちそのまま着席した。

 視線を向けると恥ずかしそうに俯いている。好きな男にゲロの始末されるのは恥ずかしいよね。今夜えっちするムードじゃなくなっちゃったね。残念。


 (この男ゲロカス過ぎる…………)


「あれが控え目…………?」


「綺麗に死んだだろ?怨嗟もマイルドだ。だが慣れていないとキツいかもな」


「…………今夜は眠れないかもしれません」


 不快感が抜けていない様だね。

 まあ気にするなよ。眠れない理由が変わっただけだ。

 俺はゲロ布巾を綺麗な布巾で包み、ゲロ現場に強めの酒を掛ける。即席消臭である。


「そこはちゃんと寝とけ」


「カイリッ…………ぁ」


 ベッドの隣に座ったら逃げる様に距離を離そうとしてきたので腕を掴んで阻止する。


「キスは明日までお預けだな。午後の予定はお前の為に空けておいてやる」


 まだ聞けてない話もあるからな。なんで先生頑張ってたの?とか、なんで代わりに俺を指名したの?とか。


「…………嬉しいです」


 俺の有難いお言葉を受けて感涙一歩手前な表情ですね。

 最初は利害の一致の関係だった。互いに相手の中の自分を大きくする為に寝た。

 だがいつの間にかこいつは俺に狂ってしまった。

 もちろん利害が先にあるけどな。それがリンとの違い。付き合いやすい理由だ。

 服の上から背中をさすってやる。上質な絹の肌触りだ。光沢も素晴らしい。


「言い忘れていたけどお前によく似合うよ。本当に東方服を着ていたのは驚いたが。そんなに好きだったっけ?」


 尋ねると照れた様に首を振った。


「急いで買って着付けをして貰いました。飲み会にはアクアも来ると聞きましたからね。…………上書きしてやりたかったんです」


 あーそういう理由で時間なくて軽食だったのね。

 俺の東方好きは知っているからな。

 飲み会ではアクアは東方服を着てくるだろうし、俺がそれを見てあいつを気に入るだろうと思ったのか。

 それで上書きね、子供みたいな作戦だな。

 どこでその事を聞いたのかは怖くて聞けませんけど。


「可愛い嫉妬だな。だが明日は普通の服でいいぞ。俺は着付け出来ないしな。…………脱いだ時困るだろ?」


「ッ!…………いじわるです」


 衝動的に抱き付きそうになるも寸前で我慢するカサンドラさん。ゲロについて思い出したらしい。


「くくっ、じゃあ俺は帰る。昼前に迎えに行くから食事も一緒に取ろう。帰り際にホテルマンに掃除を頼んどくからまだ寝るなよ」


「はい。ありがとうございます」

 

 カサンドラに背を向け退室する。

 明日ここでえっちするのにゲロいスメル空間なのは勘弁だからな。こいつとやるのは気持ちいいし、どうせなら何の気兼ねもなく楽しみたい。


 (外面と内面の差ヤバ過ぎ。ラッコみたい)


 誰も損してないからいいの。ってかなんでラッコ?


 (ぽけっとしてて可愛いけど鮫を襲って喰い殺すくらい凶暴。繁殖期には興奮し過ぎてメスを水中に沈めて溺死させてしまう事もしばしば)


 マジで!!!!!!!!!!!!?

 


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