久々の彼女
「今日は楽しかったわ!みんな気をつけて帰るのよ〜〜〜!」
「負けた…………私が負けた…………」
「ほらジェイス先生帰りますよ。いつまでもしょぼけてないでくださいよ」
「ククク…………うっぷ。…………きもちわるい」
特に問題もなく宴は終了した。
料理も酒も美味かったな。刺身は出なかったが、アクアが言うには裏メニューであるらしい。
滞在中にリピート確定だな。
(その時は私にも食べさせてよねぇ)
余程チェスが楽しかったのかミサトは上機嫌だ。
リンやギルドの人達とは打つものの物足りなそうだったからな。対戦ゲームで実力差があり過ぎるのも虚しいのだろう。
(まあそれはそれで楽しくはあるけどね。でも今回の対局は白熱したよ)
「僕らは飲みに行くけど君達はどうする?」
「次の店は私のおすすめです!可愛いカクテルがあるんですよー」
明日が休みとはいえ女性陣の体力が凄い。
美人二人に囲まれて飲むのも楽しそうだが、これ以上は俺も飲めない。酒は強い方じゃないからな。
「いくーーー!いきまーーーす!!まだシュワシュワ飲んでないから帰れマセーーーン!」
「ちょっとリンさん!もうベロンベロンなんだから踊り出さないでよ。…………折角のお誘いですけど今日は帰ります」
「まあ連れがこんなだしな。また今度誘ってくれ。今日は楽しかったよ」
泥酔状態でふらつくリンをアンジュが支えている。
ジェイスとの対局が終わる頃にはこうなっていました。
まあ丁度いい理由だ。
「残念ですけど仕方ないですねー。また学園で会いましょう」
「またね。…………あの約束は社交辞令じゃないから」
去り際にアクアが耳元で囁く。
約束ね…………それは楽しみだ。
「…………相変わらずだなー君は。一体何人引っ掛けてるのさ?」
「何の事やら。普通に話を聞いて普通に話をしているだけだがね」
「君との出会いが最悪な物で本当に良かったよ。…………リンさんは少し不憫だけどね」
「すゃぁ…………」
そのリンさんはいつの間にかアンジュちゃんの腕の中で眠っている。
そのまま起こさない様にかゆっくりと背負うアンジュちゃん。
「見てないで代わってくれてもいいんだよ?というか君の役目だろ」
「そうしたいのは山々だが俺も酔っ払ってしまってな。酔い覚ましに風に当たるから先に帰っててくれ」
「…………あの二人を追いかけるんじゃないだろうね?」
同僚からの疑いの眼差しが悲しい。
だが酔っ払ってるのは本当だ。ほろ酔いだがな。
「ないない。あの二人とはもっと頭がクリアな時に仲良くなるから」
「はぁ…………いつか刺されるよ」
「ははっ、ミイラ女に鉈で襲われたばかりだよ」
溜息を吐きながら背を向けるアンジュちゃん。
重いし暗器が当たって痛いだろうに大層なイケメンっぷりである。
さて俺も向かうか。
突発の飲み会に驚いたが結果的に良い時間だな。ちと眠いが。
向かう先は都の南側。外壁付近にある絞首台だ。
先日覆面ズの残り物の処刑が行われたらしい。
見せしめとしてまだ吊るされているはずだ。そいつらのパーツを切り取ってお話しようって算段ね。
監視の目はあるが夜中だからな。どうとでもなるだろう。
(ギフトを使うんだね。お前はあいつらも操られていたと見ているわけだ)
さあ?それが分からんから調べに行くのさ。
後手に回るのは趣味じゃないからな。
しかしここからだと遠いよなぁ。歩くの面倒くさくなってきた。
「————そこのお兄さん。私と遊びませんかぁ」
声の方を向くと派手な格好の女性が街角に佇んでいる。
丈の短い赤いワンピース。肩紐を下ろしてこちらを誘っている。この季節に相応しくない気合いの入った薄着だな。
娼婦さんかな?見てみるとたぬき顔の可愛らしい女性だ。結構タイプ。
でも残念ね。商売女の買物はしない事にしてるんだ。病気怖いから。
無視して通り過ぎる。いや残念だ。顔は好みなんだけどな。
「無視しないでよぉ。いい宿とってあるんだぁ」
「ッ!?」
振り返ると女が笑顔で立っていた。この距離を一瞬ね。俺が酔い過ぎたと考えても速すぎるな。
目の前の女はただの娼婦ではない。
「それともこの服が気に入らなかったぁ?ならこういうのはどうかな?」
そう言った瞬間。女の服装が黒い着物に変わる。生地に描かれた大輪の白椿が上品で綺麗だ。
こいつ…………。
「…………悪戯のつもりか?キャシーだろ、お前」
「あらあら。バレちゃいましたね」
着物姿はそのままに娼婦の姿がカサンドラに変わる。
アクアのコスプレか。幻影能力で衣装チェンジもお手のものだな。
悪戯が成功した子供みたいに舌を出すカサンドラ。その口塞いでやろか?
「隠す気も無かっただろ?…………んで何か用事が?ずっと覗いていた様だが」
「ちょっとしたプレゼントがありましてね。…………気に入ると思いますよ」
そう言いながらカサンドラが笑顔で巾着からプレゼントを取り出す。
「どうです?美味しそうなお団子でしょう?」
串に刺さった三つの塊。これは眼球だな。
やっぱこの女はイカれてやがる。
「…………はぁ。どこまで知っているんだよお前。助かるけどどうせなら指が良かったなぁ。キモいし触り辛いし」
「指がとれてたら問題ですよ。眼球なら鳥が食べたって思われますしね」
お団子を巾着にしまい腕を組んでくるカサンドラ。
柔らかくて気持ちいいし良い匂いもするけど学園で聞いたヤバエピソードがヤバ過ぎて素直に喜べない。
「ささっ、行きましょう。良い宿ってのは本当なんですよ。そこで情報交換をしましょう。…………それにプレゼントのお返しも欲しいです」
カサンドラが熱を帯びた顔で見つめてくる。
目が合うと長い舌の先で自身の指の腹を舐めた。
はーーー寝不足なんですけどー。
まあ信賞必罰は大事だ。死体カッティングの手間も省けたしな。
「ふふっ、…………ん…………れろ」
カサンドラの顎に手を添えて唇に触れる。
嬉しそうな表情に変わり俺の指に舌を這わせた。
すぐに口から指を抜くと、喜悦の瞳が寂し気な色に変わる。
その瞬間に顎をこちらに引き寄せてやる。
「ッ!………………ちゅる…………んっ…………お酒の味」
「あの時と同じ味だろ?」
「………………はい。私我慢できないかもしれません」
潤んだ目で下腹部に手を当てている。
カサンドラはおっかないけど女の部分を刺激してやれば割と素直だ。
独占欲はあるが分別はある。意外に付き合いやすい奴だ。こわいけどね。
「今夜は好きにさせてやる。だからその前に知ってる事を話せ。どうせ向日葵達の事も調べているんだろう?」
「わかりました。…………貴方には逆らえませんね」
まあいいか。肌を重ねるのは嫌いじゃない。
リンとは出来てないから正直不完全燃焼だったし。
…………でもこいつのパパさん怖すぎるんだよなぁ。
いつかバレないか不安だ。
(もうバレてるよ。知らなかったの?)
え?




