制圧戦
扉を開けた瞬間。覆面姿の男がナイフを持ち突っ込んできた。
「ぎっ…………」
そしてその一瞬でリンに小太刀で首を斬られてお亡くなりになりました。
覆面が倒れた事で塞がれてた視界が明らかになった。
外観より3割ほど狭い。奥に部屋がある。光源は中央天井のシャンデリア。目視で覆面の人数は5。他4。
覆面どもは仲間が倒れた事で硬直している。素人か?
「スカウティング・エア」
「風っ!?なんなんだ!?」
店内を突風が吹き荒らす。
わずかに怯ませるくらいの子供騙し。
だが魔力がのせてあり、俺の気体感知能力を高めてくれる。要するに探査用の魔術だ。
これで呼吸している生物の場所を探る事が可能になる。
よし。この空間においては隠れている奴はいないな。
「5-4。"B"でいく」
リンは姿勢を低くし転がり込む様に移動。
それと同時に扉を閉めつつ、酸素操作でシャンデリアの火を消す。これでまず敵の視界を封じる。
窓枠より大きいカーテンの色は遮光性を考えられていて漆黒だ。生地も分厚い様で外の光を通さない。貴金属の為かな。
「なっ!」
突然の暗闇に驚く覆面さん達。いきなり見えなくなるとびっくりするよね。
「誰だ!何処にいやがるッ!?」
仲間が倒れ、突風、暗闇。
混乱のフルコースみたいな感じに慌てる覆面。
だがこのままではいけない。外から来た俺たちよりも、薄明かりの中にいた彼等の方が暗闇に目が慣れやすいからだ。一部カーテンの端が捲れていて完全に遮光出来ていないしな。
なので俺たちに有利な状況にしよう。
ポケットに忍ばせてある小瓶を二つ出す。内一つに入っている砂を空中にばら撒き、それらを圧縮空気に乗せてカーテンを切り裂く。圧縮空気の粒子チェンソーである。
「なんっ…………くっ!?」
音に注意を向けた先には光輝く燦々太陽だ。もう雨は止んだし角度もドンピシャ。実に眩しそうだね。
"B"とはBLINDの事だ。どうだ明るくなったろう?
中央で間抜けに立っているリーダーっぽい奴は背後を取ったリンに任せるとして、他四人の処理を担当しようか。
人質を抱っこしてたり、オブジェ越しだったりでやり辛いが今の俺には便利なアイテムがある。
一週間前に不良生徒から押収した小物だ。
俺は四方に手離剣を投擲する。————そして、
「ブリーゼ・ガイスター」
突如発生した風に吹かれ手離剣の軌道は歪曲。
通常ではあり得ない角度から覆面達に刺さった。
もちろん刃には毒を塗ってある。もう一つの小瓶の中身だ。麻痺毒だが即効性には自信あり。
「あれわたしの…………」
モルガナがぽかんとしている。
すまんな、術も手離剣もパクらせてもらった。
術のアイデア自体は元々あったが、手離剣の性能に納得できずお蔵入りしていた。
ところがモルガナ君所有の手離剣はびっくりする程高性能だった。オーダーメイドかな?
だからちょめちょめで服を脱がす際にこっそりプレゼントして貰いました。
敬意を込めて術名はそのままにしといてやる。
だからまたその剣頂戴ね?
「がっ…………」
リンの方を確認すると覆面リーダー君が首の骨をへし折られていました。チョークスリーパー技あり一本。
さすが相棒。殺しに躊躇なさ過ぎて怖す……頼もし過ぎますね。
ともあれフロアにいる覆面チームは全滅である。
「おいっ!なんの音…………」
そして奥の扉から追加発注されたと思ったら、直後に胸に氷の剣が突き刺さって無事死亡なされた。即死である。
「よかったぁ。せんせぇ達すごすぎてやる事ないんだもん。最後にお仕事見つかって嬉しぃ!」
きゃっきゃと喜んでいるゴスロリ一名。
高過ぎる…………周りの女子の殺意が高過ぎる…………。
殺意は良いとして気を抜きやすいのはお前の欠点だぞ。
「おい、覆面は何人いた?七人倒したけどこれで全員か?」
「えっ、あの…………」
店員らしい女性に尋ねるがショックがおさまらないのか返事がしどろもどろ。悪いけど必要な情報なんだよなぁ。
「七人で合っている。彼女はずっと脅しを受けていたんだ。休ませてやってくれ。必要があるなら私が代わりに話そう」
そう言って金髪の男性が立ち上がる。腕には手錠。マジカル糸電話で聞いた声だ。…………何処かで見た顔だな。
「聞いたな?大丈夫だろうが一応奥を確認しろ。モルガナはマリーゴールドの様子を見に行け。問題ない様ならそのまま憲兵を呼んでこい」
「ええ」
「はぁい」
俺の指示に従い、リンとモルガナがこの場を離れる。
ふぅ、とりあえずは解決だな。折角の休日が台無しだ。
店長さんはおいくら包んでくれるだろうか?
この覆面どもも賞金首だったりしないかな?…………しないか。能力は素人丸出し。武器はナイフナイフ安物の剣ナイフナイフナイフ。お前らはナイフ愛好会のメンバーか?色々とお粗末過ぎるだろ。犯罪歴があってもコソ泥がいいとこだろうな。金にならん。
俺がアンニュイな気分になっていると金髪が目の前までやってきた。そういや話するって言ってたっけ。
「まず救出に感謝する。鮮やかな手並みだった!流石は我が学園に推薦される程の実力者だ。本当にありがとう!」
90度の角度で礼をする金髪。背中に手錠がかかった両手を置いている為非常に締まらない。
我が学園?そしてこの残念さ…………まさか!
「ジェイス先生?」
「ああ、恥ずかしい所を見られてしまった。魔術ばかり優先して修練していた事のツケだ。もっと他も鍛えなければな」
いつもの黒縁眼鏡をしていなかったから分からなかったな。服装もキャラメル色のロングコートに黒いインナー。全然ダサくない。
「手錠が邪魔だな。——————コンセントレイト・ブレイズ」
ジェイスは大鏡の前に立ち火術を使用。鏡越しに手錠を焼き切った。
良い腕だが火術師か。室内では戦いにくいな。人質もいた様だし。
そのままポケットから黒縁ダサ眼鏡取り出し装着。
あっ、ジェイス先生だ!こんにちは!
「さて、何から聞きたい?」
「敵がいないならもう良いですよ。モルガナ君に憲兵を呼ばせましたからお話はその時に。お疲れでしょうし楽にしていて下さい。…………先程はすみませんでした。焦って口調が乱暴になってしまって。貴女に怪我がなくて良かった」
「ッ!いえっ、私こそ話せなくて!」
店員Aにも謝罪しておく。ジェイス君の目の前だしな。
配慮は見せておこう。
店員二人、ジェイス、客一人。へたり込んでるが怪我は無さそうだ。覆面はサツバツ女子達により三人死亡。手離剣の刺さり所が悪く一人死亡。他三人は昏倒中。
まあ、上出来だろう。これ以上仕事を増やすつもりはない。
「…………そうか。人格者だな君は。授業内容も非常に良いし生徒人気も高い。非常勤にしておくのが勿体無いくらいだ」
ね?こういう小さい作業が評価に繋がり、果てにはお金を生み出すんですよ。
「…………しかしモルガナ君の実力も素晴らしいな」
ジェイスはサツバツ女子Bの作品に近寄り品評中。
氷や死体にペタペタと手を触れ、時折唸っている。
まあ学生レベルでここまで水術を使える奴はいないからな。
殺しにも躊躇ないし、そもそも初対面で俺を殺しに来た奴だ。他にも相当殺ってそう。
大商会の三女らしからぬ様だが人にも色々あるからね!せんせぇは多様性を認めるので深入りしません。
(お前は面倒なだけでしょ)
面倒じゃないわけねえだろ。
「奥には店員が一人いたわ。殴られたみたいだけど軽傷ね。金庫を開けさせようとしたみたい」
死体を避けながらリンが歩いてくる。
ジェイスはいつの間にか場を離れて直立。邪魔にならない様に移動したのね。
ふと窓の外を見るとギャラリーが集まっている。この騒ぎだしね。
上に昇った太陽が眩しい。もう昼時か。お腹すいたなぁ。これから憲兵が来て事情聴取するわけでしょう?正直めんどいなぁ…………せや!
「くっ…………」
「カイリ先生!どうしたのかね!?」
急にふらつき片膝をつく俺。腹部を抑えて苦しむ俺に驚愕の視線×4。胡乱な視線×1(リン)。
「準備不足の戦闘のせいか低血糖状態になったみたいです。すぐにグルコースを経口投与しないと…………」
(訳: クズ「お腹が減って力が出ない。早くご飯食べたいなぁ」)
嘘はいってないもーーーん。
「テイケ?分からないがどうすればいい!?何が出来る事はないか!?」
「…………幸いグルコースを生成出来る物質を提供してくれる施設が近くにあります。申し訳ないけどリン。後は頼むよ」
俺たちはパーティだしリーダーがいれば聴取作業も問題ないだろ。何より現行犯で一人も逃してないし。
「…………この日の埋め合わせはして貰うわよ」
「勿論。いつもすまないね…………店長さんにもよろしくね」
謝礼金をよろしくね。
足を引き摺りながら店を出る俺。
照りつける日差しの眩しさが心地良いぜ。
よっしゃ何食べようかなー!
ネックレスの件も有耶無耶に出来そうだし軍資金も三枚ある。充分羽を伸ばせるね。
午前は色々あったが午後はゆっくり楽しめそうだ。
休日って素晴らしい!!!
(ほんこのクズは…………)
おん?機嫌がいいから少し体を貸してやろうと思ったのになぁ?ご飯にお箸を突き立てるだけで満足するタイプなのぉ?
(えっ!ごめんごめん!何食べる?私お魚がいいなぁ。お刺身とか無理かなぁ?無理だよねぇ)
生魚は無理なんじゃないかなぁ。




