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カワミサキとヤマミサキ


 液体操作の【ギフト】が私の力だ。

 皮肉にも死んでから発現した事に気付いた。肉体が無ければ使えないのに。

 何故このタイミング?とも思ったがリンの記憶を見て得心が行った。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「私に切札を切らせたんだ。生きて帰れると思うなよ」


「………………」


 視線をヘンリーに一瞬やり、無言で俺に短剣を向けるアレス。大分離れてしまったからね。主人の安否が気になるよね。

 地下室はさっきの攻撃の余波で水浸しだ。賢そうなこいつなら状況はわかっているだろう。

 俺が指を曲げる。それに呼応し空中に水が集まり滞空する。


「————freeze」


「………………ッ!?」


 水は棒状に変化し凍結。氷の槍の出来上がりだ。

 さてこれを今からヘンリー君に向けて投げようと思うの。


「死んじゃえ変態」


「伏せなさいッ!?」


 ヘンリーへの槍の射出を見て、焦った様に主の下に走るアレス。お前の走力なら間に合うだろうな。

 だが————、


「ぐっ!?」


 突如槍は後退。標的をアレスに変え猛進。先程のように飛び退くも今回は避け切れず、氷槍は右腕を掠めた。

 まずまずのダメージ。一塁に走塁を決めた気分だね。

 そのまま自然に槍を融解させる。氷は水に戻り床に染み込んだ。


「えっ?私狙われたの?」


「逃げなさいッ!そこは恐らく射程内だ!!」


「やだよ?セバスちゃんが苦戦してる所とか中々観れないし」


「本当にお嬢様はゴミクズですねッ!!!」


 焦る執事の忠言虚しく平常運転のヘンリー。しかしお嬢様ねぇ。

 まあ焦るアレス君だが元々ヘンリーを殺すつもりはない。

 どうやら主を守る理由があるみたいだからな。

 いるだけで動きが鈍ってくれるんだから殺すなんてとんでもない。むしろ殺した後の反応が怖い。

 さて、これで安易にヘンリーから離れられなくなったでしょ。

 俺の液体操作は強力だがこの状態にも弱点がある。

 (カイリ)(ミサト)の境界を曖昧にして能力を使っているわけだが、私の戦闘能力は低い。元々女子高生だから当たり前だ。

 それに引き摺られ近接戦闘能力が大幅に下がってしまうのだ。脳の信号がうまく連動しない感じ?

 幸い碌に近接戦を見せていないし、ヘンリー君という御守りもいる。このまま誤魔化せるだろう。


 

「…………流ッ!」


「すばしっこい……めんどうくさい……」


 リンの方は絶賛ステゴロ中。

 我ながら結構驚きのシーンだったと思うんだけど割り切って戦闘に集中しているようだ。流石だね、私には真似出来ないや。

 俺もこちらに集中しよう。ボロが出ないうちに始末しないとな。


「…………まさかこんな力を隠していらっしゃるとは」


「言ったでしょ?切札なんだ。氷使いと戦うのは初めてかい?」


 ゆっくり立ち上がるアレス。何でもない様子だが、短剣を左腕に持ち替えていて右腕はぶらんと垂れ下がっている。

 折れたかな?出血が少ないから心配したけど予想以上のダメージだ。やったね。


「水術使いとはありますが【ギフト】となると初めてですな。いや厄介極まりない」


「その言葉そっくり返すよ」


 慎重に水溜まりを避けて位置取っているアレス。

 それでいて視線は常に俺の挙動を窺っている。抜け目が無い。


「過分な評価ですが有り難く頂きましょう。ところで額の腫れは大丈夫ですかな?お身体も大分お疲れの様子ですが…………」


「全然平気へっちゃらだよ。額については治療費を請求するつもりだが」


「承知致しました。支払いは主人に」


「ちょっとー!」


 ここに来てよく口が回る。露骨な時間稼ぎだ。

 それに疲れているのは本当。戦いなど無縁の俺だ。気疲れが半端ない。

 さっさとやっつけちゃうか。準備も出来た。

 私は水溜まりを掌で掬い、そのままアレスに向ける。


「——————ice bullet」


「ッ!?」


 凍結した水の弾丸。回転させ速度と貫通力を上げてある。

 しかし難なく避けこちらに距離を詰めるアレス。


「攻撃のレベルが落ち過ぎだ!やはり疲労も大きいと見える。——————好機ッ!!」


 井戸からの鉄砲水。氷の槍。氷の弾丸。グレード下がってるもんね。おまけに私は肩で息してるし。疲れているのは本当だし。

 でもまあここまで作戦通りだ。


「————steam shower」


「なっ!?熱っ!」


 床下に浸透した水を加熱させ蒸発させた。()()()()()()()()()()()()だ。氷ばかりに気を向けていたからビックリしたでしょ?

 別名湯けむり地獄その名前ダサいから絶対呼ぶな。


「しまっ()()がッ!!!」


 これが本当の狙い。

 アレスは常に俺を視界に入れていた。恐らく魔力を視る事が消失の条件。モノクルも目潰し等で能力を阻害させない為に装着しているんだろう。

 そして現在蒸気で奴の視界は隠れている。


「じゃあ後はまかせた」

「あいよ」


 肩が楽になり疲労も嘘の様。頭の中もスッキリ爽やか。

 あーしんど。憑依なんてやられるもんじゃない。

 それじゃあトドメだ。


「——————エアロ・ブラスト」


「がはっ!」


 圧縮空気の炸裂によりアレスは吹き飛び、壁に打ち付けられる。

 あーきもちー!

 水もいいけどやっぱり一番格好いいのは風だよネ!!!

 

 


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