親善試合
「帰った矢先に山歩きとはなぁ」
ぼやきながら山道を歩く俺。返事はない。
ただ一定の距離を保ってついて来ている。人目のない方がリンにも都合が良いのだろう。
「女の子とハイキングなんて初めてかも…………すまん何でもない」
急に圧増して来たよこいつ。案外余裕あるな。
(ふざけないで。漸く………、漸く辿り着いた手掛かりなんだ。真剣にやれ!私の復讐のために!!!)
俺の逆襲だっての
右手でこめかみを抑えながらリンを見る。
あいつの記憶の中の仮面。俺の仇と同じ姿だった。
ミサトの時はいつ頃か分からなかったが、リンの記憶を見るにそこまで昔の話ではなかった。せいぜい10年くらい。
仮面のご存命確率が上がって嬉しいね。
既に死んでいて殺せないとか困るから。
「さて、ここらでいいかな」
ヒゲどもを殺した場所程奥ではないが人気はない。
ここなら派手な事態になっても騒ぎにならないだろう。
「何故………知っている?」
「何を?」
とぼけた仕草で応える。もっと怒れ。冷静さは失わせた方がいい。
「ふざけるな!この体の事だ!何故知っているの!?【ギフト】の能力か?それとも…………アイツらの仲間などと言わないでしょうねぇ!?」
「あいつらね…………」
どんどん情報が出て来て胸が弾む。クソ仮面君には仲間がいるのか。
しかしいきなり正解を言い当てられるとは面白くないな。存外冷静らしい。
揺さぶるか。
「あんな悪趣味な仮面よくつけられるよな。付けろって言われたら自殺するぜ。あんたもそう思わないか?」
「…………嬉しいわ。漸く見つけた仇の手掛かり。無理矢理にでも暴かせてもらう!!!」
「親近感湧いちゃうなぁ。まあそう言うノリとルールでいいね。勝った方が情報を得られるって事で」
「望むところよ!」
リンが構える。徒手空拳か、だがまあ
「これでおしまい。ウィンド・ミンス」
「かはッ…………!」
無数の風の刃に研磨された塵が混じり、リンの身体をバラバラに切り刻んだ。
集中高圧空気刃 + 粒子研磨。
いやぁ異世界科学は恐ろしいですなぁ。
(それはこっちの台詞だけど)
ミサトの言葉を聞き流しリンの死体に近づく。
悪いがこれが一番早い。冒険者の失踪なんて良くある話だ。疑われる事はまず無い。死体さえ残らなければな。
何より死体は嘘をつかないから。
さっきは誤発動だったからか、記憶が霞みがかっていた。
もう一度だ。と近づいた瞬間、
「疾ッ!」
「くッ!!エアロブラスト!」
いきなりの攻撃に後ずさる。
右眼球への攻撃。咄嗟によけたが右頬に擦り出血。痛い。
狙ったのは俺の利き目か?よく見てやがる。
そして魔術も当然の様に躱すか。見えない風の攻撃をどうやって察知したんだか。
まあいい。距離は取れた。
リンは構えは解かず目には殺意に溢れている。
体には傷一つない。服すら破れてさえいない。
「なるほどな。だから死体判定だったわけだ」
(不死身の【ギフト】!?)
「忌々しい力よ。いきなりバラバラにするなんて酷いわね。流石はあいつらの仲間って所かしら?」
「それ最高の煽り文句。死ね。ウィンド・ミンス」
リンの力は未知数だからな。
もう一回バラバラにしてよく考えよう。
「馬鹿ね」
踏み込みこちらに突進するリン。嫌な予感。
————キンッ。
金属同士がぶつかり合う様な音と同時に魔術が解除された。
こいつ同じ技は通用しないのか!?
「インチキかよッ!」
「お互い様でしょ?」
リンの拳が風を斬りこちらに向かってくる。拳による突き技。狙いは胸か!
俺は腕をクロスさせて背後に跳ぶ。
この相手にツーアクションは無理だ。動きが速過ぎる。悔しいが体術では勝てない!
覚悟を決めて腕を襲う衝撃に備える。
「ッ!」
体の芯に拳を受け吹っ飛ばされる俺。馬鹿力かよ!?
つーかいってえええええええええええ!!
折れたか?折れただろ!?こいつが銅級?嘘だッ!詐欺もいいとこだろうがッ!!
「流ッ!」
着地も束の間。追撃の為にリンが駆け出す。
独特の歩法だ。柳の様に捉え所がない上に速い。
魔術は間に合わない。ならば————、
チャリーーン――――
「くッ!」
俺のばら撒いた銅貨に警戒し足を止めるリン。
ただの銅貨だがな。手の内が分からないのもお互い様だろ?
そして隙が出来たな。
「オキシア・ヴォイド」
「な……にっ」
急にふらつき膝をつくリン。
殺したら復活するならば殺さなければいい。
空気分布を操り低酸素状態にしてやった。おねんねしてな。
「はぁ……、はぁ……、毒まで使うなんて…………でも私は…………負けないッ!!!」
「やばッ」
小太刀を頸にあてるリン。
自害でダメージをリセットする気か!それは困る!
「わかった!俺の負けだ!全部話す!!!」
「何ッ…………を…………」
小太刀を落とし倒れ込むリン。
勝利条件を決めてなかったからな。いきなりの降参発言に戸惑っただろ?
加えて俺の美しい土下座の姿勢。
気が抜けたら意識も保てまい。
「と言う事で俺の勝ちだな」
(せっこ………………)
うるせえ。




