決闘
俺の魔術に驚愕している主人公君。
追撃がないなら手番は変わってもらうぞ。
「次は俺の番だな——————ザント・シュトゥルム」
俺は意趣返しに風を操り砂を巻かせ叩きつける。
切断魔術と仕組みは似ているが違う術だ。ていうかあれだと殺しちゃうからな。
「————サンド・スッ!?」
どうやら砂の制御を奪おうとした様だが、即座に中止し転がり避ける主人公君。良い判断スピードだ。
「クッ、どうして!?何故砂に干渉できない!あんなちっぽけな魔力しか感じなかったのに!!!」
ちっぽけとは失礼な奴だな。
俺のは作業効率が良いんです〜〜〜低燃費なんです〜〜〜。
さて。瞬殺してやってもいいが、こいつは(リンに)気絶させられても食ってかかる様な奴だ。
分かりやすく戦って分かりやすく切り札を破ってあげないと納得してくれないだろう。
しばらく遊んでやるか。
回避できるスピードに抑えて砂塵を追わせる。
自分で使うだけあってこの術の危険性を理解しているのか、必死に避ける主人公君。
「飛んだり跳ねたり忙しいな。そろそろ攻撃してくれてもいいんだぞ?」
「クソッ!馬鹿にしやがってッ!!!」
しかし良い身のこなしだ。
魔術師は肉体トレーニングを軽視しがちだがこいつは違うらしい。
柔らかくしなやかな筋肉をしている。
俺より若いクセに銀級になっただけの事はあるか。
「その余裕面をぶん殴ってやる!————アイアン・フィスト!」
地面から黒い煙が立ち上り、主人公君の右手にグローブが形成されていく。
あれは砂鉄か。
リンの話では奴の得意技は鉄を操り武器化させるというものだったが…………。
「嫌味な戦い方だ!《ウツボカズラ》の二つ名通りに陰湿な奴だな!」
「デカい声で相手の悪口を言うのが快活な戦い方になるのか?」
「クッ!減らず口を………」
俺の様なご当地有名人をよく知っているな。
まあ別に隠してるわけでは無いから調べればわかるか。
「…………はぁ、確かにお前は強い。それは認めよう。だがそれでもリンさんがお前と組む理由が分からない。何故なんだ?」
答えを求める様に掌を差し出す主人公君。
今までと打って変わって落ち着きのある様子。
そりゃあ理由はありありだがお前に話す事でもない。
返答代わりの魔術で終わらせようと思ったが——————嫌な予感。
「フィンガー・バレット!」
「ッ!エアロ・ブラスト!」
あぶねえええええええええ。
人差し指から飛んできた砂鉄製の弾丸。
至近距離で風を破裂させその衝撃で無理矢理体を逃す。
攻撃準備をしていたから助かった。ほぼ勘だが。
ベースは金属を飛ばす一般的な地術なんだろうが速過ぎる。
砂鉄…………磁気斥力を利用して加速させているのか!
何が鉄の武器化だよリンの野郎!くそ厄介じゃねえか!!!
というか掌差し出して質問してきた癖に間髪入れずその指飛ばしてくるとかセコ過ぎだろ!
開幕に目眩し狙ってきたし、熱血一直線みたいな性格しといてやる事は不意打ちか!!!
「避けられたッ!勘のいい奴め。なら今までのお返しだ————サンド・スモーク!」
再び砂煙が俺に向かってくる。あんな速度の射撃があるなら迂闊に魔術で対処は出来ない。
なら近寄るしかないな。
俺は低姿勢で駆け抜け接近する。
ずぶっ——————。
「はぁ!?」
いつの間にか地面がぬかるんでいた。
「考えが単純だな!————フィンガー・バレット!」
「くっ!」
想定外の事態に一瞬思考が止まり隙を突かれた。
正面から迫り来る弾丸を確認。体を転がすが回避動作が間に合わず肩を掠める。ダメージは軽微だ。そのまま大袈裟に転がり、奴との位置を整える。
俺の進行方向を予測して泥化させていたのか。ご丁寧に砂で隠して。
なるほど。使える物全部使って勝ちに来ているわけか。
そういうのは好きだぜ。好感度上がっちゃうなぁ。
しかし焦り過ぎたな。
「ふん、泥化の通りにくい地面だったか。運も良いみたいだな」
「…………どうかな?これまで運が良かったと思えた事なんて一度も無いよ」
俺は立ち上がり肩の砂を払う。靴も汚れちまったな……。
違和感。今の弾丸は遅すぎた。
一発目は勘で避けただけだ。それ程に速かった。しかし今回は目視からで回避が間に合った。
さらにニ回目の砂煙の魔術。あの速度の弾丸が放てるのに何故使った?使う必要があったからだ。
「狡いなぁ。同じ名前で使い分けてるわけだ」
「ッ!?」
その反応は当たりだな。
こいつは同じ魔術に見せかけて通常の砂鉄弾と斥力弾を使い分けている。
何故か?斥力弾は溜めに時間がかかるからだろう。
途中でお話してきたのも不意打ちの為だけではなく時間が必要だったから。
砂煙を使ったのもおそらく同じ理由だ。
「チャージに時間がかかるんだな。なら俺の勝ちだ」
「だからその減らず口をやめろォ!!!」
主人公君が叫びながらグローブを構える。
でもいいのかなぁ?撃っちゃって。
俺は姿勢を低くして奴に教えてやる。
俺の後ろには青ざめた顔のリンがいるんだぜ?
「あ…………」
一瞬の硬直。だがその一瞬は致命的だ。
「コインバレット」
————ガシャァン!
構えた腕に銅貨を飛ばしグローブを粉砕。銅は磁気を受けないので安心して放てる。
直接顔に撃っても良かったが分かりやすくぶん殴らないとな。
君が良い奴で助かった。リンは本当に便利な仲間だな。
砂鉄弾でも斥力弾でも撃てなければ関係ない。
痛みと音で怯んだ隙に駆け出し接近。
これで終わらせる。
「————ッ!アイアン・ヘルムゥ!!!」
壊れたグローブが砂鉄に戻りヘルムが形成される。そう言う事も出来るのか。
そしてガードを上げている。
腹の方は無防備だが、"絶対に耐えてやる"そんな意志を眼光から感じる。
耐えた後で何かを狙っているのかな?だが俺にはこんな技もあるんだぜ。
俺は奴の鳩尾に手を当てる。
「ん?」
「なっ!!!?」
うーん?まあいいか。
俺は地面を強く蹴る。その反発エネルギーが足を伝い腿まで駆け上がる。骨盤を回転させ増幅、筋肉をしならせ肩から腕に力を伝え集約させる。
「かはッ…………!」
ゼロ・インパクト。
密着状態で放たれた掌底は迷走神経に浸透。
脳への血流を遮断され彼女は意識を失った。
【ギフト】で盗んだ達人の技だ。
気合いで耐えられる様なものではない。
「という事で俺の勝ちでいいよな?」
「はい。カイリの勝利です。しかし魔術師同士の戦いにしては地味でしたね。私好みですけど」
近付いてくるカサンドラと言葉を交わす。
そうだよね。ステゴロ好きそうだもんね君。
「ところでさー。こいつの名前なんていうの?」
「アンジェリーナさんですが。知らずに決闘したんですか?」
やれやれといった表情で苦笑するカサンドラ。
あーやっぱりね。そんな気はしてました。
リンとも距離が近めだったのに許されてたし、髪は長いし、身体も柔らかいし
(パイタッチ神拳も気持ちよかったし?)
まあほどほどに。




