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賢者様の小間使い  作者: 玉雪 芙泉
第1章 城塞都市エオドール

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4話 Eランク任務


 ゼイドは思わずこぼれそうな欠伸を噛み殺す。

 

 暇だ。暇すぎる。

そりゃそうだ。Eランクの任務といえば、10歳前後のガキでもこなせる任務だ。

基本は城壁内の清掃、店や家庭のお手伝い程度、城壁外の任務だとしても城壁近くの魔獣がほぼ出ない森での薬草採取。

よっぽどのことがない限り、ゼイドが手を出す隙もないほど簡単な任務だ。

 三の門から城壁外に出て、しばらく歩いた先で見つけた薬草の群生地。受付嬢の言葉通り、魔獣の影もないその場所で採取をする兄妹を少し離れたところから監視していたゼイドは本日何度目かのため息を吐いた。


 こりゃあ、貧乏くじをひいたかもな。


 そうゼイドが内心で独りごちたのは、ここまで観察してきた目の前の受験者2人に対する総評であった。


 どう見てもこりゃあ訳アリだ。

衣服も上等だが、何より1つ金貨10枚以上はしそうな魔石の耳飾りを2人して両耳につけている時点で相当裕福な家庭出身だとわかる。

妹の堂に入ったカーテシーから見てもしっかりとした教育を受けているだろう。

 裕福な商家か貴族の出か……

どちらにしても、護衛をつけてないってことは家出か家が没落したかのどちらかだろう。

お忍びでギルドに登録しにきた物好きな兄妹ならまだマシだったが、護衛や従者もつけてないなら、親の監督下にいないのは間違いない。

 妹と名乗った方が実は従者か護衛の可能性も考えたが、よくよく観察するとあの傲慢そうな兄の方がガキの面倒をよくみてやがる。

興味の赴くままに道を逸れそうになるガキの手を引いたり、躓く度に体を支えたりと存外甲斐甲斐しい。

 では、男の方が実は従者か護衛、というのもまぁないだろう。

あの態度じゃ道行く先々でトラブルを起こして主人を守るどころじゃねぇ。

 

 まぁ、凄腕の護衛で主人以外への態度は度外視のパターンはあるか、とゼイドは兄の方に目を向ける。

 

 あの男、相当の実力者だ。

背負った槍は使い込まれているし、動きを観察していたが、どんな体勢でも重心がぶれない。

ランドルフが言っていた通り、歳の頃は同じに見えるが、俺よりも背は高く、かなり鍛えられている。

まぁ、体の鍛え方に関しちゃ負けてねぇがな。

 ガキの方は何もない道でも躓く鈍臭さに鍛えた様子のない体。魔法杖を持ってはいるが、 10を超えてるか怪しいガキだ。使えたとしても初級魔法くらいか。


 途中脱線したが、おそらくこの2人は本当に兄妹。

裕福な商家か貴族の出だが、現在家出中もしくは家が没落してこのエオドールまでやってきた。

ということは、家出の場合は家の人間がやってきた時に面倒なことになるし、家が没落していた場合はどこかで恨みを買っている可能性がある。

 どちらも杞憂に終わる可能性はあるが、そんな可能性が頭をよぎる時点で面倒なことこの上ない。

 やっぱうまい話に飛びつくもんじゃねぇな。


「ゼイドさん、薬草の採取終わりました!

 これで良いでしょうか?」


 黄昏るゼイドの前にやってきたクロシェがにこやかにカゴの中を見せる。

そこには、規定の量は十分ありそうな薬草が種類ごとにきれいにまとめてあった。


「几帳面だな。Eランクの採取じゃここまでしなくてもいいんだぞ」

「そうなんですか?でも、後から選り分ける手間もないので、このやり方を続けようと思います!

 あっ、でも、やり方が違うとお手間になったり、何か問題があったりしますか…?」

「いや、問題ねぇよ。丁寧に採取されてるし、依頼人も喜ぶだろ」

「ありがとうございます!よかったです!」


 ふわりと微笑むクロシェの素直さに『マジで似てねぇなこの兄妹』とクロシェの後ろで冷ややかな顔で立つアロイスを見たゼイドは思った。


「にしても、薬草以外は混じってねぇし、綺麗に採取されてっけど、薬草採取ははじめてか?」

「いいえ、私たち北の方の森で育ったので、薬草はよく採取していたんです!

 薬草の採取はいつもこうしてまとめていたので、無意識にいつものやり方でやってしまいました」

「は?森育ち…?」

「はい!ずっと森で暮らしていたので、街での生活が不安でしたが、森での暮らしが役に立ってうれしいです!」

「森で暮らしてたって森の麓の屋敷とかってことか?」

「いえ、森の中ですよ?豊かな森だったので、キノコや果物も採取しては私が食事やデザートの一皿にしていたんです!

 薬草だけでなくキノコの目利きもお任せください!」


 得意げにむんっと胸をそるクロシェにゼイドは思わず頭を抱えた。


 おいおい、誰だよ。裕福な商家か貴族の出が〜とか家出か没落が〜とか言ってたのはよぉ。

どこの世界に森でキノコや果物をとってきて調理するお嬢様がいるってんだ。

 

 ランドルフに文句を言う前でマジでよかった…

 

 とりあえず先ほどまでの考察が脳内で完結していたことにゼイドは安堵しつつ、新たな疑問がわいた。

 


 お嬢様な身なりとそれに近い教育を受けつつも農民みたいな暮らしをしていたというアンバランスなこいつらは、一体何者なんだ─────?

 

 

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