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賢者様の小間使い  作者: 玉雪 芙泉
第1章 城塞都市エオドール

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36話 脅威


 開拓の失敗を目論む何者かがいる。

それも、おそらくエオドールの上層部の中に。


 とんでもない厄介事にゼイドは頭を抱えた。

まさか、ランドルフが言っていた末端の腐敗の大元とも繋がってるのでは?といつぞやの会話を思い出す。

しかし、これ以上巻き込まれてたまるかと思考を一旦切り離した。

 

 とりあえずクロシェあたりの言質を取られる前に、新たな厄介事を持ち込んだケネスを追い返したゼイドは、パーティーメンバー+レイで緊急会議を開いた。


「おい、お前らはさっきの話知ってたか?」

「いや、はじめて知ったよ」

「私もです」

「…アロイスはどうだ?ケネスは被害の要因についてお前から聞けるって言ってたが、」


 むっつりと黙り込んでいたアロイスは渋々口を開いた。


「魔法兵装の件は知らなかったが、魔導具で散布していた薬品についてはさっき壁に行った時に確認した。

 あとは、兵士達の会話が耳に入ってくるから薄々内情には勘付いていた。」

「なるほどな」


 アロイスの聴覚が異常に優れていることを直属兵の奴らは知らない。

奴らがこっそりと話していた機密情報も筒抜けだったわけだ。

 ゼイドはケネスに被害の要因を尋ねる前に、アロイスから確認すべきだったと内心舌を打った。

先にアロイスから内情を聞き出せていれば、薮をつついて蛇を出すこともなかっただろう。

 顔を顰め黙り込むゼイドに「そうそう、」と声をかけたのはレイだった。


「さっきゼイドに聞かれた遺跡調査を諦めてエオドールに引き返す理由だけど、遺跡を含めた森の奥が立ち入り禁止になったからなんだ」

「はぁ!?立ち入り禁止って何があったんだ?」


 目を見開くゼイドに眉尻を下げたレイが口を開く。


「それが、───────」



 ・



「リュッカ山脈の谷でドラゴンが巣作りしている上に卵を抱えてる!?」


 そう素っ頓狂な声を上げたのは、エオドールの冒険者ギルド 副ギルド長のランドルフだった。


 冒険者ギルド2階の応接室。

防音結界と防御結界がはられたこの部屋には、現在4名の男女が椅子に腰を落ち着かせていた。

 ギルド側の2名───ランドルフと受付嬢が何事かと当惑する中はじまった話し合いは、早々にランドルフの対面に座る男が語った情報によって空気が一変する。

ランドルフが思わず声を上げるのも無理はないほど、それは想定外の凶報だったからだ。


「まさか、開拓中の森の奥にドラゴンが巣篭もり…最悪だ…」

「そうなんだよ…リュッカ山脈ではここ数百年ドラゴンの目撃情報はなかったのに、こんなタイミングで現れるなんてね……」


 そう言って頭を抱えたのは、ランドルフの対面に座る男───エオドールの領主代行を務めるバレット・ウィートリー。

熊のような巨躯を小さく縮こませたバレットは、眉尻を下げて小さく息をつく。

そんなバレットを横目にランドルフは静かに思考を巡らせていた。


「だが、なるほどな…

 最近の魔獣の動きが活発だったのはドラゴンの影響か」


 1年ほど前からはじまった謎の1つが解明され、ランドルフは思わず喉の奥で唸り声を上げた。

 

 魔獣討伐や護衛依頼を請け負うギルドには、周辺の魔獣の情報が自然と集まる。

本来いるはずのない場所に現れる高ランクの魔獣やら群れの移動やら、1年ほど前から魔獣の動きがどうもおかしかった。

 異常がはじまった時期が古い魔法陣が見つかった時期と重なることから、何か繋がりがあるのかと気を揉んでいたのだが、まさかその理由が、ドラゴンがリュッカ山脈の谷に棲みついたからだったとは……

 魔獣の中でもヒエラルキーの最上位に位置するドラゴンが巣を作ったとあれば、当然周囲の生態系は変わらざるを得ない。

本来、リュッカ山脈の谷付近は高ランクの魔獣が多く棲みついていたのだが、ドラゴンの脅威、狩場から離れようと大半が山を下りる。そして、高ランクの魔獣がやってきたことで元々棲みついていた魔獣たちも棲家を離れ…とその影響は連鎖していったのだろう。


「しかも、棲みついただけでなく、卵を抱えたドラゴンだ。

 今後、卵から孵ったドラゴンの幼体を連れて狩りをし出すと考えるとさらに頭が痛いよ…」

「…ただでさえドラゴンは行動範囲が広いからな。

 いつエオドールに襲来するともわからねぇとなると、とんでもない脅威だ。

 エオドールは横からの攻撃には強いが、空からは弱いからな…」


 青白い顔で呟いたバレットに向き合うランドフルもまた、最悪の事態を想像し、背筋に冷たいものが走った。

 エオドールをぐるりと囲む城壁はあの大厄災を耐え切ったまさに無敵といっても過言ではない守りだが、弱点も存在する。

城壁外、つまり壁よりも高い上空からの攻撃には無防備になる点だ。

しかし、そんな弱点はわかりきっているため、上空からの攻撃対策はもちろん講じているはずだが、ドラゴン相手にどこまで通用するか……ランドルフがそう考えたところで、目の前の2人の狙いに気がつく。


「ここまでお2人がわざわざいらしたのは、うちのギルド長に頼み事ってことですか?

 ギルド長が先遣隊から戻ってくるって連絡は受けていますが、あいにくうちにはまだ来てないですよ」

「いや、ギルド長、バーナード様にはすでに依頼済みだから、今日は君たちにお願いがあって来たんだ」


 てっきり、冒険者ギルドの現ギルド長であり、聖国の英雄バーナードへの依頼かと思いきや、バレットの答えにランドルフの当てが外れる。

しかし、それならば何故とランドルフは首を傾げた。

 

「それでしたら、尚更何故お2人がここまでいらしたので?

 ()()()()からの依頼でしたら、我々を城に呼び出せばすむ話では?」


 ランドルフの疑問に、バレットの隣に腰掛けた女性がゆるりと小首を傾げると、艶やかなブルネットがさらりと肩から流れ落ちる。長いまつ毛が影を落とす、夜の森を思わせる碧色の瞳が緩やかに細められ、瑞々しい薔薇の花弁のような唇が弧を描く。

 匂い立つような美しさと気品を携えた女性───城塞都市エオドールの領主 オリヴィア・ウィートリーは、艶めく唇をゆっくりと開いた。


 

「だって、私はまだエオドールの外にいることになっているのですもの」



・城主→領主に変更しました(26/04/17)

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