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賢者様の小間使い  作者: 玉雪 芙泉
第1章 城塞都市エオドール

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26話 古代と現代の魔導具


「ゼイドさんは魔導具の仕組みはご存知ですか?」

「魔法陣と魔石を繋いでるってことくらいだ」

「そうです!おっしゃる通り、魔導具は魔石の魔力を魔法陣に通すことで、誰もが魔法を使える、とっても便利な道具なのです!」


 そこまでは言ってないが…とゼイドは内心呟きつつクロシェの熱弁を黙って聞くことに徹した。


「魔導具において何よりも重要なのはこの魔法陣です!

 古代文明の魔導具はこの魔法陣が現代の技術よりも並外れて優れているのです!」

「へぇ。つ〜か、そもそも魔法陣ってなんなんだ?」

「え?」

「学院じゃ魔法陣も魔工学科に進むやつ以外必要ねぇから知らねぇんだよな」


 その言葉にクロシェに衝撃が走る。

こんな衝撃、ティア様のお仕事は空に虹を描くことだと教えてもらった時、あるいは、ティア様から実は子どもが100人いると嘘をつかれた時、いや、ブレナからヴィ様が魔法を失敗したと聞いた時以来の衝撃……!!!


 あまりの衝撃に頭が真っ白になるクロシェを、ゼイドはこいつ本当にわかりやすいなと白けた目で見つめていた。


「人類で、いえ、魔法使いが魔法陣を知らないなんて、人生の彩り、感性の損失です……」

「自分を基準にすんな。お前それ他所で言うなよ」

「で、でも、ゼイドさんも魔法を使う時、魔法陣から魔法を発動しているのに、気にならなかったのですか…?」

「まぁ、いつも勝手に出てくるだけだし、そういうもんだと思ってたからな」


 2度目の衝撃にクロシェはよろめく。

なんてことなの…こんなことがありえるというの……??いえ、なんとしても、なんとしてでも、魔法陣の、魔導具の素晴らしさをお伝えせねば……!!

 決意に燃えたクロシェはキリリと顔を引き締め、立ち上がった。

 

「ゼイドさんはご自身が使う魔法について、…そうですね、以前使用されていた風の鳥の魔法はどうやって発動させたのか理論的に説明できますか?」

「いや、理論的って言われても…体内の魔力を使ってそうなるようにイメージして…ぐらいか?

 まぁ、魔法は基本イメージだしな」

「そうです!魔法はイメージなのです!

 そして、このイメージを理論的に説明した図式が魔法陣なのです!

 いうなれば、魔法陣は魔法のレシピや手順書のようなものでしょうか…

 私たち魔法使いは、イメージを魔法陣に変換し、この魔法陣に魔力を適切に流すことで魔法を発動しているのです」

 

 なるほどとゼイドは内心で納得しつつ、浮かんだ疑問を口にした。


「なら、古代文明の魔導具がすごいってのは、それだけ昔の方が優れた魔法使いが多いってことか?」

「いえ、そうとも言い切れないのです」

「は?」

「う〜ん、まず前提として、魔導具に使われている魔法陣と魔法使いが魔法を行使する時に出現する魔法陣はほぼ別物なんです」

「え、違うのか…?」

「う〜ん…どう説明すればよいでしょうか……」


 クロシェは頭を悩ませた。

というのも、クロシェにとって魔法はいつも習う側で教える側に立ったことがなかったからだ。

さらに、魔法陣については魔法の基礎知識として最初に習った、基本のような知識だったため、改めて説明するのはなんだか難しい…

そう思ったクロシェは、それなら最初から説明すればいいんだと閃いた。


「そうですね…ゼイドさん、魔法を発動するのに必要な三要素といえば?」

「三要素って、魔法陣と魔力、あと魔力操作か?」

「はい!魔法はその3つがなくては発動しません!

 魔法陣は魔法の図式、魔力は動力源、魔力操作は魔力を適切に魔法陣に流すというそれぞれの役割があります。

 魔導具において、この魔力操作が問題なのです!」


 ゼイドはクロシェの勢いに目を瞬いた。

確かに魔法において魔力操作は重要だが、それが魔導具では問題と言われてもピンとこなかったからだ。


「魔力操作は魔法の発動速度や威力は左右するが、魔導具にも関係あんのか?

 魔導具のほとんどは初級魔法程度の魔法しか使えねぇんだ。魔法陣に魔力さえ流れれば発動はするだろ」

「これは、魔力操作から説明させていただいた方がよさそうな…

 う〜ん、何かに例えた方が…お料理…でも、お料理だといろんな食材や器具が……」

「…おい、そんな悩むくらいなら別に」

「そうです!鉄製品に例えましょう!!」


 顔を俯き、うんうん唸っていたクロシェは、いい例えが見つかったと顔を輝かせる。


「例えば、剣を作る場合、原材料や設備と、剣の作り方を知っている鍛治職人が必要ですよね?」

「まぁな」

「土魔法の中には武器を生成する魔法もありますが、土魔法で剣を作る場合、この原材料や設備は魔力、剣の作り方は魔法陣、鍛治職人の腕は魔力操作が担っています。

 魔力操作にセンスや才能が問われたり、魔法の反復によって上達するのは、鍛治職人の腕と同じ理屈なのです。

 センスのいい人は飲み込みが早くて最初からある程度上手く剣が作れます。

 最初は上手く剣を作れなかった人でも、10年間ずっと剣を作り続ければ作業も洗練されて最初に作った剣よりもいい剣が作れるようになるでしょう。

 さらに、ずっと剣を作り続けていれば、鉄や火の扱いにも慣れてきます。その慣れによって剣以外の鉄製品も何も知らなかった頃より円滑に生み出すことができるはずです」


 クロシェのその説明にはゼイドもすんなりと納得できた。

学院でも魔力操作は元々のセンスも問われるが、魔法を繰り返し使うことで上達が見込める。魔法陣や魔力と比べれば技術をのばせる分野だと教わってきたからだ。


「そして、魔力操作が魔法の発動において重要なのは、魔力を適切に流すという部分です。

 というのも、魔法使いが魔法を使う時に使用する魔法陣は確かに魔法の手順書ではありますが、その手順の順序などは振られていないのです」

「は?」

「先ほどの剣で例えると、剣を作る手順はすべて紙に書かれていますが、順序がバラバラにまとまっているため、どの順番でその作業をするのか、工程の順序がわからないのです。

 順序がわからなければ、剣を作ろうとしても最初にただの鉄の塊を研いで、最後に棒状にのばしたり、どれだけ手間暇をかけてもただの鉄の塊のまま終わることもありえます」


 ゼイドの脳裏で必死に鉄の塊をこねくり返して結局鉄の塊ができた図が浮かんだ。悲惨すぎる。


「魔力操作と魔法の発動速度に関係があるのはこの部分ですね。

 1から10の工程を間違えずに進むのと、途中で迷ったり引き返したりするのとでは、当然ゴールの時間───魔法の発動時間は異なります。

 また、発動速度だけでなく、工程を間違えるたびに無駄な魔力が消費されてしまうため、必要な魔力量にも差が生じます」


 ゼイドは言葉が出なかった。

そんな話、学院の魔法学では教わらなかったからだ。

興味のない話はすぐに忘れるゼイドではあったが、魔導具は別としても魔法に関することで忘れたことなどないと言い切れる。

それも個別の魔法の話ではなく、魔法の三要素───魔法の基礎も基礎の話なのだ。

ゼイドにとってはじめて知る知識ではあったが、クロシェのその話は幼な子の妄言というには筋が通っていた。


「つまり、私たちが使う魔法陣は魔力操作がなければ、いくら魔力を流しても魔法は発動しないのです。

 あるいは、魔力を流し続ければいつかは発動するかもしれませんが、それはあまりに非効率です。

 そのため、誰もがスイッチ一つで使える魔導具には、魔力を適切に魔法陣に流せるように、魔法陣自体に魔力操作───魔力を流す順序を組み込んでいるのです」


 ゼイドが衝撃を受ける間もクロシェの説明は続く。


「しかし、この魔力操作を組み込んだ魔法陣の作成は容易ではありません。

 複雑な手順を組み込むことができないため、今の技術では例えるなら型を作り、そこに鉄を流し込んで鉄製品を作ることくらいしかできないのです。

 釘などの単純な鉄製品ならそれでも問題ないでしょうが、ただ型に鉄を流し込んだだけの剣なんて使い物にならないことくらい誰でもわかります。

 そのため、現代の魔導具は初級魔法程度の魔法の再現くらいしかできていないのです。

 しかし、古代文明の魔導具は違います。

 古代文明では、高位魔法レベルの魔法陣さえ魔導具に落とし込むことに成功しているのです」

「…なら、その古代文明の魔導具に使われてる魔法陣をそのまま使ったり、研究すればいいってことか?」


 ゼイドの言葉にクロシェはしょぼくれた顔で口を開いた。


「それが、古代の魔導具は魔法陣を確かめるため、分解しようとすると壊れてしまったり、自動的に魔法陣が焼き切れるように設定されているようなのです…

 分解に成功した事例もあるそうですが、あまりにその魔法陣が高度すぎていまだに誰も解析できていないのだとか…

 他にも分解に成功する魔導具もあるかもしれませんが、古代の魔導具はとても、とっても貴重なので、そんな壊すリスクをとることはなかなかできなくて…古代文明の魔導具の研究は難航しているのです……」


 消え入りそうなくらい悲しげな声が森にこだまする。

 

 ここまできてなんとなく古代と現代の魔導具について理解できたゼイドはすっきりしたが、クロシェはあれほどイキイキと熱弁していた面影もないくらいしょぼしょぼとしていた。


 

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