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賢者様の小間使い  作者: 玉雪 芙泉
第1章 城塞都市エオドール

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24話 手記


 大混乱となったオークションから一夜明けた陽だまりの麦穂亭


 昨日の騒動により、一日休養となったパーティー一行は各々好きなように過ごしていた。

クロシェとアロイスは、メイジーから聞いた美味しいと評判の食堂へ探し人の聞き込みがてら昼食へ。

ゼイドは朝から城壁外の森で修行をし、昼の鐘が鳴ってからは城壁内の街の出店で買い食いをして腹を満たす。

 そして、昼食後宿へと戻ってきた3人は、宿のロビーにてちょうど鉢合わせることになったのだ。

昨日ぶりに見かけたゼイドの姿にクロシェは元気よく声をかける。


「こんにちは、ゼイドさん!昨日はよく眠れましたか?」

「……まぁな」

「昨日は大変でしたね…レイさんもオークションに参加されていたそうですし、大丈夫でしょうか……」


 ゼイドからの生返事さえなくなりつつも、クロシェは話を続けた。

 

「そういえば、遺跡調査は今日か明日の予定でしたが、明日も難しいでしょうか?」


 クロシェがそう口にすると、噂をすれば影というようにレイが2階の客室から下りてきた。


「レイさん!こんにちは!体調は大丈夫ですか?」

「あぁ、うん……大丈夫……」


 しょぼしょぼと疲れた目で現れたレイにクロシェは首を傾げた。


「レイさん、もしかして眠れなかったのですか?」

「いやぁ、この手記の解読をしていたら気づけばこんな時間に……」


 そう言って古書を片手に「あはは」と笑うレイにさらにクロシェは問いかけた。


「それが昨日仰っていたグラウネスの手記ですか?」

「あぁ、うん……多分……」

「「「・・・」」」


 なんとも歯切れの悪いレイの回答に、その場に沈黙が落ちる。

すると、今度はレイの瞳からダバっと涙が流れ始め、3人はぎょっと目を瞬いた。

なかでも、慌ててハンカチをレイに手渡したクロシェは、その後もおろおろと狼狽していた。

クロシェが大人の男性が泣く姿をみるのは生まれてはじめてだったからだ。


「うっ、うぅ……あ、ありが、とう、クロシェちゃん……」

「いえ……あの、どうなさったのでしょうか?」

「…うぅ……実はこの手記、多分、きっと、おそらく……」


 そこまで言って黙り込むレイにゼイドが苛立たしげに「なんだ」と問い詰めた。


「多分…本当に多分なんだけど、グラウネスの手記、じゃない……」


 この世の終わりとでも言うような面持ちのレイに3人は一旦押し黙った。


「えっと、でも多分ということは、本物の可能性もあるということですよね?

 なぜレイさんはその手記が偽物かもと思ったのですか?」

「……そのぉ、グラウネスの存命期にはない文法や単語がちょこちょこ出てきて、ね…だけど、グラウネスほどの頭脳の持ち主なら未来を先取りしていた可能性もあるし、100%偽物というわけでは……!!」

「いや、偽物だろ」


 ゼイドの指摘にズンっと落ち込むレイ。

そして、それをおろおろと励ますクロシェとその後ろに控える無表情のアロイス。

そんな目の前の3人に白けた目を向けたゼイドは、自分の部屋に戻ろうと一歩踏み出したところで、そういえばと口を開いた。


「それって本物だったらいくらぐらいすんだ?」

「いくらなんて値をつけられない代物だよ!

 昨日みたいにオークションになんてかけられたら金貨何千枚どころか億でだって足りるかどうか…」


 その言葉にゼイドの脳裏にランドルフのニヤけ面がよぎった。

あいつ、わかってたな…これが本物だったら報酬にぽんっと渡すはずがない。


 なおも落ち込み続けるレイにクロシェもまた沈んだ顔で口を開いた。


「がんばって解読したものが偽物だなんて、本当におつらいですよね…本当に…わかります……」


 こちらもこちらで過去の傷が開いている。

ズンっと落ち込む2人にため息を吐いたゼイドは確認のために口を開いた。


「おい、遺跡調査はどうすんだ?明日は中止か?」

「……遺跡調査…!!そうだ!僕にはまだ遺跡が残っていた…!!!」


 まるで光明がさしたかのように顔まで輝き出すレイにゼイドがドン引きしていると、レイは決意に満ちた表情で口を開いた。


「3人が大丈夫なら、明日ぜひ遺跡調査の護衛をお願いします!!」


 


 遺跡…遺跡が僕を呼んでいる……!!


 

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