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賢者様の小間使い  作者: 玉雪 芙泉
第1章 城塞都市エオドール

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23話 執務室にて


 大混乱となったオークションから一夜明けたウィードグレム城 執務室


 領主代行のバレットと執政官のセシルは、城塞都市エオドールの中心に建つウィードグレム城の執務室にて、今日も今日とて業務に追われていた。


「そう、死者が出なくてよかったよ…

 この件の責任者は、警邏隊の隊長だったよね?

 リーヴに話を聞きに行こうかな」

「報告書や決裁書、上程書に嘆願書と書類が山積みです。

 昨日の件はすでに報告書が上がっていますので、こちらの対応をお願いします。」


 そう淡々と告げたセシルはどんな時でも悠然とした佇まいを崩さない。

そんな彼とは対照的に、バレットは優美な曲線を描く机の前で熊のように大きな体をちょこんと小さく縮こまらせていた。

 それはここがバレットが少しでも雑に触れたら壊れてしまいそうな繊細な調度品に囲まれた空間というのもあるが、何より目の前に積まれた書類の山への申し訳なさと居た堪れなさ故だった。

やってもやっても減らないどころか気づけば増えている書類の山を前にバレットはこぼれそうになるため息をなんとか飲み込む。

 

「あぁ、オリヴィアなら、机に大量の書類の塔を作ることもないんだろうなぁ…」


 それでも口からは嘆く声がついて出てしまった。

不甲斐ないと落ち込むバレットに、セシルはところどころ白髪がみえはじめたくすんだ金髪を耳にかけ、口を開く。


「今は開拓の件もありますから、仕方ありませんよ。」


 その低く少し掠れた声に気まずげに返事をしたバレットは、「そういえば」と口を開いた。


「開拓の予算は問題なかったかな?

 元の予算からさらに2割増しにってことだったけど…」

「問題ありません。財務長官のエドウィンが調整済みです。」

「よかった!開拓は難航してるみたいだけど、あのバーナード様が指揮してるんだからきっと大丈夫!」

「はい。」


 現在開拓中のリュッカ山脈の麓の森は、魔獣が跋扈する危険地帯でありつつも、豊かな土壌に恵まれた広大な大地だ。

つまり、魔獣さえ排除すれば豊かな土壌に恵まれた広大な大地だけが残る。

それは、人工増加に伴う宅地不足を抱えるエオドールと、同じく人工増加に伴う食料不安を抱える聖国───2つの問題を一挙に解決できる素晴らしい施策だった。


 無論、あのリュッカ山脈の近くで民間人が暮らせるほど魔獣を間引くのは容易いことではない。

なんせBランクの魔獣だけでなく、Aランクの主級の魔獣さえ棲みつく森なのだ。

 しかし、この開拓の前線で指揮をとるのは、()()英雄バーナード。

数々の不可能を可能にしてきた彼の英雄であれば……そう皆が期待を寄せ、本や教科書にも綴られた英雄譚の新たな一節をこの目で見られるかも……という期待にも胸躍らせている。

 もちろん、ウィードグレム城の執務室で書類の山に囲まれたバレットもその一人だ。

彼の人のため、最前線で奮闘する兵士のため、そしてこの領地に住まう人々のため、さらには聖国のためと思えば、この鬱々とした書類作業も頑張れる…!

 そう決意を固めたバレットの前に、ドンっと書類の山が新たに一つ生まれた。

かろうじて残っていた机の空きスペースに書類を置いたセシルへバレットはぎこちない動きで顔を向ける。

 

 どうか…と主へ儚い祈りを捧げるバレットに無情な宣告が下された。


「こちらの書類の山2つは本日中に決裁が必要ですので、至急対応をお願いします。」

「はい…」


 

 その日の深夜もウィードグレム城の執務室の明かりは灯ったままだったとか。



・城主代行→領主代行に変更しました(26/04/17)

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