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賢者様の小間使い  作者: 玉雪 芙泉
第1章 城塞都市エオドール

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15話 家族


 結局4人全員で井戸から移動し、宿に戻るとそこには大柄な男と小さな女の子が立っていた。


「どこに行ってたんだ?」


 そう心配そうに声をかけた男にメイジーが眉を下げて口を開いた。


「ちょっと裏手の井戸に行ってたのよ。

 …ゼイドさん、主人には言ってもいいかしら?」

「あぁ。」


 男がなぜ壊れた井戸に?と首を傾げる中、ゼイドから了承をもらったメイジーは井戸の件の説明をはじめた。

 今日から宿に泊まる兄妹の妹───クロシェが井戸の魔導具を直したこと。綺麗な水は出るようになったが、井戸の魔導具を勝手に修復したことやしっかり浄化できているかの確認のため、明日役場に報告とチェックをお願いしに行くこと。魔導具の修復をクロシェに頼んだのは自分なので明日役場に同行したいこと。

 そんなメイジーの話を聞いていた男と少女は目を丸くしてクロシェを見つめる。


「こんなにも小さな子が魔導具を直せるなんて…すごいな…」

「井戸がなおったの?すごい!!これでもうとなり町の井戸に水をくみに行かなくてすむね!!」


 男は感嘆、少女は喜びを顔にのせる中、視線を向けられたクロシェは戸惑いながら口を開いた。


「あの、私今日からこちらの宿に泊めていただくクロシェです。こっちは兄のアロイスです。

 お2人は宿の方でしょうか?」

「あら、ごめんなさい!紹介してなかったわね。

 私の夫のケイルと、娘のレティよ」

「よろしく、お嬢ちゃん」

「よろしくね!クロシェちゃんはどこからきたの?お父さんとお母さんは?」


 レティは自分と同じくらいの背丈のクロシェに親近感がわいたのか無邪気にそう尋ねる。

そんなレティにクロシェは朗らかに答えた。


「よろしくお願いします、レティさん!

 私たちは北の方の森からきました!両親はいませんよ」


 その答えに眉を下げたメイジーがレティに「こら」と叱ってからクロシェに向き合った。


「ごめんなさいね、クロシェちゃん。」

「……?いえ、謝っていただくことようなこと、ありましたか?」


 不思議そうに首を傾げるクロシェに眉を下げたまま困惑を滲ませたメイジーはおずおずと口を開いた。


「その…ご両親のことをね、触れてしまって申し訳なく思ったのよ。」

「両親についてですか?両親は私が生まれてすぐ亡くなっていますので、確かにお話しできることは少ないですが、そんな申し訳なく思っていただくことはありませんよ?」

「そうなの…?」


 お互い戸惑い合うクロシェとメイジーに、2人の間を流れる空気をよく理解できていないレティが割って入った。


「クロシェちゃんはお父さんとお母さんのこと知らないの?」

「記憶はありませんが、顔は知ってますよ!

 見ますか?」

「え?見れるの?」


 クロシェは首から下げていたペンダントを服の下から取り出すと花の模様が彫られたロケットの蓋を開き、中をレティに見せる。


「すごい!!きれいな絵!!!」


 そのレティの声に興味を惹かれたゼイドが後ろから覗き込むと、そこには1組の男女の姿が精巧すぎるほど綺麗に描かれたものが収まっていた。


「それ、写真か?」

「はい!」

「写真なんてよく撮れたな。やっぱお前らいいとこの出だろ」

「いえ、これは両親が作った魔導具で撮ったものだそうです。

 両親の顔が唯一わかるものなので、私の宝物なんです!」


 そうにこやかに答えるクロシェに、こいつのあの魔導具に対する異常な熱意は両親譲りかとゼイドは納得した。


「すてきなネックレスだね!」

「ふふ、ありがとうレティちゃん」


 ふわふわほのぼのと和やかなクロシェとレティの空気にメイジーはほっと息をつく。


「それじゃあ、お夕食の準備をするからゆっくり休んでてね。レティは手伝って」

「は〜い!」


 元気に返事をするレティの横でクロシェも口を開いた。

 

「それじゃあ、私たちは部屋に荷物を置いてきます!」

「そうだわ!まだ鍵を渡してなかったわね。

 うちは前払いなのだけど、何日分にする?」

「えっと、ではとりあえず1週間分でお願いします」


 宿泊費を払い、鍵を受け取って部屋へと移動しようとするクロシェたちにレティが声をかけた。


「わたしが部屋まであんないするよ!

 ついてきて!クロシェちゃん!」

「ふふ、ありがとうレティちゃん!」

「あらあら、素敵なお姉さんが泊まってくれてよかったわね、レティ」

「うん…?うん!」


 ちょっと首を傾げたレティには気づかず、素敵なお姉さんと言われたクロシェはむふんと誇らしげな笑みを浮かべる。


「クロシェちゃん、お姉さんなの?」

「そうですよ!12歳ですので!」

「わぁ〜、そうなんだ!わたしと同じくらいだと思ってたけど、お姉さんだったんだね!」

「あはは、レティちゃんはおいくつなんですか?」

「8歳だよ!」

「・・・」


 レティの言葉に、そういえばメイジーも娘と同い年くらいと言っていたのを思い出したクロシェは、引き攣る顔を抑えられなかった。



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