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賢者様の小間使い  作者: 玉雪 芙泉
第1章 城塞都市エオドール

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11話 魔法評議会


 ゼイドが会議室から出てロビーに戻ると、ちょうどそこにクロシェたちがやってきた。


「ゼイドさんもお話が終わったんですね!

 見てください!本登録の登録証ももらえました!

 この後はどうしましょう?」

「……パーティー申請もすんだし、今日はもうやることもねぇよ。

 明日は早速任務を受けるから、朝の一の鐘前にここに集合だ」

「わかりました!では、明日もよろしくお願いします!

 あの、もしよろしければこの後夕食ご一緒しませんか?

 もう日も暮れてきましたし…」


 にこにこと能天気に食事に誘ってくるクロシェにゼイドのこめかみがぴくりと動く。

そして、大きなため息を吐いたゼイドは苛立ちを隠さず声を唸らせた。

 

「おい、パーティーってのはお友達の集まりじゃねぇんだぞ。飯は勝手に食っとけ。

 …あと、飯より先に宿決めとけよ。日が暮れたらお前らが使うような宿はほとんど空いてないからな」

「残念です……でも、宿は大丈夫ですよ!

 さっきとても親切な方がいい宿を教えてくださったのです!」

「へぇ」

「この辺りの宿泊施設は1人1泊大銀貨5枚するそうですが、特別に大銀貨2枚にしていただけるというのです!」


 こ、こいつらはまた────ッ!!


「お前らはどんだけダマされたら学習すんだ…!?

 この辺の宿の相場がそんな高級宿の値段なわけねぇだろうが!!」

「そうなのですか!?」


 目をまん丸にして驚くクロシェにまたしても痛みだしたこめかみを押さえたゼイドは、その後ろで涼しい顔をしている兄に目を向ける。


「おい、こいつはまだしもお前まで何でそんな見え透いた嘘に引っかかってんだ」

「……クロシェに害があれば対応しようと思っていた。」

「はぁ??」


 付き合いきれないと兄妹を無視して立ち去ろうと足を踏み出したゼイドは『待てよ』と立ち止まる。

 この2人が金をむしり取られようと知ったことではないが、下心という単語一つで槍を構えたアロイスの姿を思い出す。

さらにはクロシェに害があると判断したアロイスが街中で暴れる姿が容易に浮かんだ。

そんなことをされてはせっかく得たパーティーを再び失ってしまう。

なにより2人の入城登録の保証人に名前を書いたのはゼイドだ。


 はぁ〜〜〜とゼイドが大きなため息をこぼす。


「おい、ついてこい。

 お前らも俺と同じ宿に泊まれ」

「えっ、いいのですか?」

「お前らに問題起こされると面倒だからな。

 あそこはまだ部屋に空きがあったし、この時間でも大丈夫だろ」

「ありがとうございます!」


 ギルドの外に出て宿へと向かうゼイドの隣をにこにこと笑みを浮かべたクロシェが歩く。その後ろにアロイスが続いた。


「せっかくですから、やっぱりお食事もご一緒しませんか?」

「しねぇ。俺はいつも宿で飯とるんだよ」

「お食事もできる宿なのですね!でしたら、今日は私たちも宿で夕食をとります!ね、ロロ!」


 弾んだ声でそう告げるクロシェにアロイスも頷く。

そんな兄妹に夕食だけでなく今後の諸々に思いを馳せ、やはり同じ宿にさせたのは早計だったかとゼイドが考えていると、再びクロシェが口を開いた。


「あの、無知で申し訳ないのですが、魔法使いは魔法評議会に所属しないといけないのでしょうか?」

「…講座ではその話はなかったのか?」

「はい。冒険者ギルドと冒険者に関するお話でしたから。

 魔法評議会は別の組織のようですので、お聞きするのもはばかれて…」


 そこでなんで聞くのが俺なんだよと思いつつ、ゼイドは投げやりに答えた。

 

「魔法使いで評議会を知らない奴がいるとはな…

 確かに評議会は冒険者ギルドとは別組織だ。

 ギルドみたいに魔法使いの自治組織ではあるが、所属義務なんてものはないから評議会に所属してない魔法使いもザラにいる」

「そうなのですね!では、一体何をする組織なのでしょうか?」

「…一応、魔法使いの保護と発展を謳ってる組織だ。

 魔法使いを教育するための学院を運営していたり、所属する魔法使いへの特権としていろいろ融通したり…まぁ魔法使いのための組織ではある。俺も魔法については学院で学んだ口だしな」

「学園以外にも魔法を学べる学校があるのですね!」


 嬉しそうに声を弾ませるクロシェにそういえば学園には行かないと宣言していたのをゼイドは思い出した。

学院に行くつもりなのだと勝手に思っていたが、そもそも学院を知らなかったとは…

本当に一体どんな環境で育ったんだかとゼイドが訝しんでいると、クロシェはさらに質問を続けた。


「ゼイドさんは2級魔法使いを目指されているということは、今は3級魔法使いなのですか?」

「まぁな」

「あの、特権というのはどんなものが得られるのでしょうか…?」

「…階級や功績によって待遇は違うが、報奨や年金が出たり、無料で利用できる宿や検問所での優遇措置とかがあるな。あとは魔法の研究してんなら研究費をもらえたり…まぁ、いろいろだな。

 そういえば、お前らの探してる奴が魔法研究家なら評議会に所属してんじゃねぇのか?」


 無意識にそう口にしてから、しまったとゼイドは内心で焦る。

あの会議室でのランドルフとのやり取りを思い出し、意図せず探りをいれてしまったことに複雑な感情が渦巻いた。


「いえ、あの方は所属していないと思います…何かに所属するの大っ嫌いとよく仰っていましたので……」

「あ、そう…」


 クロシェの答えにゼイドは内心ほっと息をつくが、その一連の感情の動きすら不快すぎて面倒くせぇと今度は舌を打つ。

そんなゼイドの心境をよそにクロシェはキラキラと目を輝かせていた。

 

「ですが、魔法使いにとって、とても魅力的な制度ですね!

 所属するにはどうすればよいのでしょうか?」

「冒険者ギルドと同じで評議会の窓口で書類を書いて試験を受けんだよ。合格すれば1番下の5級魔法使いになれる。

 といっても、5級は身元証明くらいの効力しかねぇから、魔法使いの特権を得るには3級以上が必要だ。」

「3級以上…昇格試験は年に1回とのことでしたから、特権を得られるまで長い道のりになりそうです…」


 しゅんっと沈むクロシェにゼイドは鬱陶しげに口を開いた。

 

「別に順番に受けずともその階級の受験資格を満たせさえすれば階級をすっ飛ばして試験を受けることはできる。

 お前の場合、回復魔法が使えるからそれだけで3級にはなれるかもな」

「本当ですか!?」

「あぁ、回復魔法の使い手は教会が独占しようとしてるから、魔法評議会もそっちに取られる前に囲い込みたいんだ。

 ただでさえ回復魔法が使える魔法使いは少ないからな。

 だから3級の実技試験は問題ねぇが、筆記がな…」


 ゼイドは残念なものでも見るような目つきでクロシェを見下ろした。

 

「筆記試験もあるのですね」

「3級まではな。お前、勉強できんのか?」

「もちろんです!社会常識に欠けているのは今日一日で十分痛感しましたが、魔法の勉強でしたら自信があります!

 お家の書斎の本はすべて読み込み、暗記しておりますもの!」


 むんっと胸をそらし得意げに語るクロシェに、それはすごいなとゼイドは内心で素直に感心した。

書斎の規模はわからないものの、本1冊ですら暗記できる自信のないゼイドにとっては、書斎の本すべてを暗記したと言い切るクロシェは十分すごい奴だった。まぁ、それを使いこなす頭があるのかは知らないが。

 そんなことを考えていると、そういえば、アビゲイルの名前の意味も知っていたことを思い出す。

そして、アビゲイルの存在が脳裏をよぎったことであの森でのやり取りとランドルフから聞いた話を思い出し、ゼイドは体が重く、どんどん沈んでいくのを感じた。

そんなジェイドの変化に気づかぬクロシェは、首を傾げながら会話の続き、魔法に関する疑問を口にした。


「それにしても、回復魔法って使える方がそんなに少ないのですね。

 魔法使いは皆さん使えるものだと思っていたのでびっくりしました」

「っはぁ!?んなわけねぇだろ!!

 回復魔法は魔力操作が難しすぎて使える奴なんざほんの一握りだ。

 しかも、自分を治すのと他人も治せるのでは、さらに技術の壁がある。他人に回復魔法を使える奴は一生遊んで暮らせるって言われてるくらいだ。

 お前、本当に魔法の勉強の方も大丈夫か…?」

「え、でも、回復魔法を教わった時に魔法使いとして最低限の技術だって…」


 おろおろと狼狽えるクロシェにゼイドはどんなスパルタ教師だよと内心ドン引きする。

そして、教師…でまたしてもランドルフから言われたクロシェの魔法の師匠の話を思い出し、ついにゼイドは「あ゛ーーーーー」と腹の底から声を出した。


 

 いちいち悩むのが面倒くせぇ!!!白黒はっきりつけてやる!!!

 


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