探偵、地獄の入口に立つ
人型。
人の型に切られた身代わり人形ともいうべきそれは、退魔師としての力ではなく、霊能力者としての力だった。
猛はそれを魔素の吹き溜まりに投げ込む。
「なにしてるの?」
退魔のことはわかっても、霊能力のことはわからないクレアには、ただ紙の人形で遊んでいるようにしか見えない。
「まぁ見てろって」
人型が勝手に動き出すと、魔素溜まりに飛び込む。
すると。
周りの空間が歪み、人型を呑み込んでしまった。
「なに、これ……」
クレアも美月も呆然としている。
2人にはただ魔素の濃いだけの場所にしか見えなかったからだ。
「ここは霊界に繋がっている。魔界のどこかに連れ去られたわけじゃなく、な」
霊界。そこは死者が行く場所。
しかし人と魔物とのが暮らし始めたこの世界ではとうにその研究は廃れ、はるか昔の物語として語り継がれるだけだ。
「そんなモノが本当に実在するの?」
クレアもみつかも半信半疑だった。
「あるさ。人も魔物も、死ねばそこに行く」
猛は更に符を取り出すと、今度は詠唱を始める。
「割れ願い請うは八百万の神々の力今ここに現に非ざりし異界の門を開け。そして我々を導き、その魂を誘い給え!」
猛の言葉を皮切りに、3人の姿が消える。
気がつくと3人は河原の畔にいた。
「ここが、霊界?」
「まだ入口だけどな」
以外とのんびりしている所だ。
なんとなく気の抜けたクレアと美月は辺りを見渡す余裕が出てきた。
「2人にはコレをわたしておこう」
それは美鏡神社で清められた聖水が入っている。
「なに、これ?」
「霊体は霊能力のない2人にはダメージを与えられない。これを武器に付属しておけば、霊体だろうが妖怪だろうが、普段と同じ要領で戦うことができる」
クレアの武器は180センチある身長と同じくらいの大きさの巨大な戦斧。
美月の武器は銃。
それぞれに聖水をかけ、武器を清める。
「ここからは地獄の入口だ。心して掛かれよ」
2人は息を呑む。




