探偵、師匠に会う
ミカガミ町の美鏡神社。
ここは猛に戦闘のイロハを叩き込み、霊力や退魔力を授けた、かが巳を祭神とした神社である。
「ふむ、魔界側のミカガミ町とな」
あわせ鏡のようになっている魔界側のミカガミ町。
行ったことはないが、向こうにも、かがみのような祭神がいるかも知れない、ということで猛たちはここに赴いていた。
「しかし、魔界は我々の常識が通用しない土地だからのぅ」
上半身が人間、下半身が白蛇という異形の神が考える。
「ちと待っておれ。向こうにもワシと同じような神がいたら、交信のような物ができるかも知れぬ」
目を閉じ、精神を集中する。
猛はその間、重りを付けた状態でスクワットをさせられ続けていた。
「どうですか?」
肉体的には人並だが、巨大な魔力を誇る美月が、猛に代わり話を聞いているの。
「確かに向こうにもワシと同じ神がおるが、ワシよりはるかに力の弱い神じゃな。しかも邪神じゃ。あまり信仰は強くない」
とはいえ、そこまで悪さをする邪神でもないらしい。
自身の体重の倍の重りを付けさせられた猛が、スクワットを続けながらかがみに問う。
「その神は力を借りれそうですか?」
「無理じゃろうな。事件のことすら知らないようじゃ。まぁ、猛がおれば、ワシの力を貸すことができる。その点は魔界においても変わらぬから安心せい」
師と仰ぎ、幼い頃よりかがみに稽古を付けて貰っていた猛は、かが巳の果てしない神力をその身に宿すことができる。
「ただ一つわかったことがある。向こうの神では手に負えない第三者の力が働いておるみたいじゃ」
魔界の地。そこに足を踏み入れた猛は妙な違和感を感じていた。
「どうしました? 猛さん?」
「いや、どうにも嫌な気が漂っていてね」
普段は町の便利屋さんとして、蜂の巣駆除や鍵開け、配管工事、電気工事、エアコンの取り付けや害獣駆除までやるどちらかというと頼りなさ気な猛だが、退魔となるとド三流以下だが、霊能力者としては一流の才覚を持つ。
その猛が嫌な予感がする、というのは相当のことだ。
「流石猛ね。この辺りで誘拐事件が頻発してるのよ」
魔界側のミカガミ町。その中でも魔素の強い吹き溜まり。
「この竹藪か」
人間側のミカガミ町でも魔物や妖魔の噂が絶えないところだが、その邪気は人間側の比ではない。
しかしそれ自体はよくあることで、誘拐事件と関係は無さそうだが……。
「それくらい私たちだって検討つけてるわよ。ここが怪しいだなんて」
決定的な証拠がない。一番厄介なことだ。
猛は丹念に調べると、一つの紙を取り出した。




