探偵、日常からはみ出る
篝 猛はミカガミ町の探偵社務所にて暇を持て余していた。
人魔探偵と呼ばれる彼は、失せ動物探しから雑務、介護やボディガードまでこなす町の便利屋さんだ。
この日は午前中のみの業務で、午後は特に仕事もなくエロ漫画を読んでいた。
「猛さん」
アルバイト兼助手の1つ目族の高岡 美月も特に仕事もなく応接室に座り、大きな1つ目を凝らして教科書を広げながら呼びかける。
「私のお給料、今月出ます?」
暇を持て余しさすがに探偵社の財務状況が心配になってきた。
「大丈夫だよ。こういう時に、大口の依頼が入るものさ」
さして慌てた様子もなく、自分で入れた不味いコーヒーを飲みながら猛は欠伸をする。
「そんな楽観的な……」
と美月がいいかけた時、カラン、とベルが鳴り、来客を告げる。
「は~い、猛!」
陽気な声と共に現れたのはピンクの長髪をなびかせ、頭上に耳とお尻にくるん、と丸められた尻尾が特徴の、大柄で筋肉質な女性が入ってきた。
「なんだ、クレアか」
クレア・オウクランド。オーク族であり、人間界にて日本在中の魔界軍の一個師団長その人であった。
「なんだとはご挨拶ね。せっかく依頼を持ってきてあげたのに」
クレアは応接に座ると、美月が出したお茶をすする。
「美月ちゃん、ありがと」
「いいえ。お客様は大歓迎です!」
バイト代がかかってる美月にはクレア天使に見えたことだろう。
猛も所長室から応接室のクレアの正面に向かい、話を聞く体制に入った。美月も猛の横にちょこんと座る。
「実は魔界で、小さな子供が誘拐される事件が多発してるのよ」
内容は思った以上に深刻。大きな案件になりそうだった。
(本当に大事件が飛び込んできた……)
大口の依頼が入る。時たま猛の言葉は預言のごとく当たるのだ。
「詳しい話を聞こうか」
猛も真面目な顔になり、クレアの言葉に耳を傾ける。
「実はね」
曰く。
とある地区限定限定で頻繁に子供が行方不明になる事件が多発してるとのこと。
魔界と人間界はあわせ鏡のように作られており、魔界にも日本に即した場所がある。
「ここと同じ場所。つまり、魔界側のミカガミ町よ」




