探偵、戦う
しかし猛は動こうとしない。
「大丈夫だ。俺が絶対に君を守る」
一歩あるく。
それだけで高強なコンクリートが貫かれる。
一歩あるく。
それだけで地面が揺れる。
脅威。
しかもそのスピードも尋常ではない。
時速にしておよそ60キロほど。バスをも思わせる巨体がそのスピードと破壊力で猛然と迫る。
アリアの目に写ったのは、圧倒的なまでの現実。
──死。
猛はアリアを抱き上げると、軽々と避けてみせた。
この短い瞬間に猛が取った行動。それは、奴に喰われた魂をも救い出すこと。
「我願い請うは八百万の神々の力。
今その力を我に宿らせ、彼の者を打ち倒す鉾となれ!」
アリアを安全圏に置き、自分ひとりが敵に向かう。
左右の手を広げ、技を繰り出す。
「左手よ、魂を抜け! 右手よ、悪から断ち切れ」
左手が死喰いの歯車の中に突き込まれ、中にいた人や魔物の魂を掴み外界へ引き抜く。
右手が死喰いの歯車の魂を無慈悲に断ち切る。
猛の必殺の一撃。
「左抜右断!!」
魂を引きずり出され、その上で魂を切断するという恐ろしい技だ。
たった一撃で、数々人や魔物を喰らい尽くしてきた悪魔を葬ったのだ。
「すごい……」
アリアが感嘆の声をあげる。
なぜここに死喰いの歯車が現れたのかもわからずに。
一日遊び倒した所で、ふとアリアの姿が霞む。
「猛さん、明日はどのに連れて行ってくれますか?」
「そうだな、どこがいい? プールか? 動物園か?」
猛は明るく話しかけるが、アリアの顔は今にも泣き出しそうだ。
「猛さん……。私、わかってます。もうすぐお別れなんだ、って」
その言葉が猛の胸を苦しめる。




