探偵、猿になる?
ミネアは焦っていた。
まさかあの程度の退魔師に出し抜かれるとは思っていなかったからだ。
それに今回軍が動いた理由。それを悟られる訳には行かない。
|(絶対に阻止しなきゃ)
とは言え今の装備で猛を追えるのかは疑問だった。
数秒の逡巡のあと、ミネアは装備を整えてから猛を追うことにした。
秘境に挑むには、たかが人間である猛と、魔物の中でも身体能力に優れているミネア、どちらが適しているかは一目瞭然だ。
ミネアが準備に時間を割いても十二分に間に合う。
そう考え、一度軍司令部に戻ることにした。
「きー?」
「うききー! うっきゃ!」
猿によく似た魔獣。だが、大きさは人の三倍はある。
本来会敵すれば驚異的な魔獣だが、猛はほぼすべての動物と意思疎通をすることができる。
それは魔界でも同じ事。
「きゃっ…うほほ!」
とりあえずこの魔獣の後についていけば、彼等に守られながら最短距離でこの森林を踏破できる。
猛はお礼に人間界にしか生息しない、大量のバナナを差し入れることにした。
檻護の技は本当に便利だ。
猛は魔獣の後に続きながら、ミネアの気を探るが、今のところこの森に立ち入った形跡はない。
恐らく装備を整えに行ったのだろうと仮定して、罠を仕掛けておくことにした。
ミネアは装備を一揃えすると、悪魔のテーブルに続く森の前に立っていた。
明らかに罠の気配がする。
退魔力が漏れているのだ
|(この程度の罠で私をなんとかしようと言うの? 馬鹿みたい)
ミネアは完全に猛を見下している。クレアがなぜあんなド三流の退魔師に一目置いているのか理解ができなかった。
足を踏み入れた瞬間に、大量の魔獣がいることに気がついた。
先程猛に手助けしていた猿型の魔獣の仲間だ。
その毛皮は鉄より硬く、その鋭い爪は鋼鉄の盾をバターのように切り裂く。
そして握力。300キロはあろうかという体重を、片腕だけで木にぶら下がるのだ。
捕まれでもしたら一溜まりもない。
しかし、ミネアは歴戦の強者。この程度の魔獣など敵ではなかった。
ただ厄介なのは、この森に住む魔獣すら希少種で、安易に殺すことができないことだった。
「なんでこんなおとなしいはずの魔獣が、敵対するの!?」
魔獣は攻撃こそしてこないものの、明らかにミネアを挑発し、何処かに導こうとしている。
そして導く先は確定的に、猛の仕掛けた罠がある所だろう。
「厄介だけど……」
ミネアは殺傷能力のない混を選び、魔獣たちを気絶させていく。
手加減しても余裕があるほど、その実力差は歴然だった。




