探偵助手、キメラと対峙する
そこには異形の魔物がいた。
その姿には見覚えがあった。
『キメラ』
魔物と魔物をかけ合わせ、人工的に作られた生物。
「美月、ごめんね」
しまったと思った時には遅かった。
後ろからクルルに羽交い締めにされていた。
キメラが美月を睨みつける。
「あたしの婚約者なの。魔力を食べ続けないと理性を保てなくて、そのうち死んじゃうの」
投げ込まれた動物の死骸はその残骸だったのだ。
そして意味をなさない脅迫文。あれは理性を失う寸前に、獲物を差し出すように要求する手紙だったのだ。
「アナタは昔、このキメラたちと戦ったことがあると聞いの。
美月はすごい魔力を持っていることも。お願い。
彼の食事としてその魔力を差し出して」
確かにキメラを普通の人間や魔物に戻す術はある。
それはダンジョン探索のときに猛に依頼してきた「株式会社妖怪」の幹部が知っている。
「なぜ普通に依頼してくれなかったの!? 治すことなら簡単にできたのに!」
最初から彼を普通の魔物に戻してほしい、と頼めば話は早かったのだ。
それなのにそう依頼しなかった理由がわからない。
「彼の家柄に傷が付くからよ」
クルルの婚約者、カテナの家は代々生物学者の権威として名を馳せていたそうだ。
キメラとなった息子。
生物学者であるにも関わらず、それを治すことすらできない。
もし外部にそのことが知られてしまえば、その権威は地に落ちる。
|(こうなったら……!)
美月も体術を練習して来たことはある。
クルルには力では勝てないが、技をもってその拘束から逃れた。
「いいじゃない。人型相手の魔力の吸収のしかた、知ってる? 食べるだけじゃないの。性行よ。きっと美月も気持ちよくなれるわ」
──狂ってる。
いや、愛しい婚約者が異形の姿となり狂ったのか。
美月は考える。
まずは背後を取られないこと。
その次にこの場から逃げること。
美月の手には余る案件だ。
猛が来てくれれば一番だが、それも無理。
最高なのは、婚約者のカテナを救い、クルルも助けることだ。
考えろ。
考えろ、考えろ、考えろ考えろ考えろ考えろ考えろっ!
ぶっつけ本番でやって良い技ではないかも知れないが、一つだけ、この場を打開する方法がある。
キメラは見た目の問題ではない。本人の魂と異形の魂を融合させて作られる。
ならば、その魂の結びつきを断ち切ればいい。
|(私のポケットにはなにがある?)
美月が常に携帯しているもの。
まずは足止め。
土蜘蛛の糸がある。これで2人の動きは止められる。
問題はその後だ。




