探偵助手、騙される?
「なんとなく全貌が見えてきたぞ」
猛は田所の話をチョコレートパフェを食べながら聞いている。
「今回の事件、狂言の可能性が高い」
「というのは?」
「嫌がらせの頻度に対して、実害がなさすぎる」
「それに、オーグル家の婚約相手は複数ではなく、1家に絞られてる、か」
スプーンを咥えながら、猛が報告書を読む。
「明らかにウソを付いている。この依頼人は信用ならないぞ」
田所自身、信用できない相手からの依頼はすべて断っている。
依頼人に嘘をつかれていると、仕事を正確にこなす事ができないのはもちろん、先の仕事の評判に支障をきたすからだ。
「確かに不誠実な依頼だが、それを決めるのは美月だ。この報告書を送って、どう判断するかも彼女の自由だ」
「いくらなんでも厳しすぎやしないか? まだ美月ちゃんは高校生だぞ」
「できると思うから任せた。それ以上でもそれ以下でもない」
信頼しているからな。と、猛は話を締めた。
「……」
美月は田所からの報告書をつぶさに読んだ。
確かに思い当たる節はある。
事件の割に、家が大して騒いでないこと。
クルル自身も脅威に感じていなさそうなところ。
もし、嫌がらせしている相手が分かっていて放置してるなら。
その可能性を美月は考えていたが、田所の報告書で確信に変わった。
|(これは狂言だわ。でも、なんのために……?)
魔界にもたくさんある探偵社を選ばず、わざわざ日本の小さな町の小さな探偵事務所を選んだ理由。
しかも美月を指名するような形で、だ。
|(狙いは私?)
美月は人間と魔物とのハーフだが、途方もない魔力を有している。
それを狙われ、命を落としかけたこともある。
今回も美月の魔力が目的だとして、魔力を欲する理由はなんだ?
それを探るのが当面の目的になりそうだ。
「高岡さん、こっちパス!」
美月の持つボールが弾かれたように飛び出す。
それをキャッチしたクラスメイトが見事にゴールを決める。
体育の授業でのバスケット。
その間、クルルにもストーカーにも気を配っていたが、不穏な気配はない。
しかし。
「!?」
殺気。
それは紛れもなく、美月とクルルに向けられたものだった。
「すみません、ちょっとお手洗いに……」
美月は慌ててその場を抜け出すと、殺気のする方へ向かう。
「美月……」
クルルも後を追ってきた。
一緒に連れて行くべきか迷ったが、守ることを考えると、一緒にいてもらった方がよさそうだと判断し、共に行くことにした。
殺気は屋上から放たれている。一気に階段を駆け上ると、扉を明け放ち屋上へ舞い降りた。




