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人魔探偵  作者: 葛葉龍玄
不倫調査

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26/59

探偵、不倫事件を解決する

 美月は依頼があった家に再度聞き込みを行っていた。

 特にODDに関しての話題だ。

「そういえば、人間界と魔界の女性への酷い扱いをまとめたドキュメンタリー映画のようなものを家族で見たわね」

「まだ人間界が西暦? で呼ばれてた時代に魔女狩りとかで沢山の女性が殺されたとか」

「魔界でも、魔力の少ない女性は奴隷扱いされて、人権ならぬ魔物権もない状態だったらしいわよ」

 猛が請け負った事件。

 その家族は皆様同じ内容のODDを見ていたのだ。

「マスター! この証言、聞いて下さい!」

 録音したメディアプレイヤーを田所に聞かせる。

「こっちも同じような証言がわんさか出てきたぜ」

 田所も独自で調べてくれていたようだ。その内容は以下のものだった。

 呪いの発信源たるものがある。

 呪いの発信源は多数存在する。

 それが怨念によるもの。

 怨念が何らかの形で霊と結びつき、妖怪となって男性たちを襲ったこと。

 そして。

 その発信源はODDだということ。

「しかもODDは同じ内容のものが何千、何万枚と世に売られているんだ」

「オッサン!」

 その時、猛が飛び込んできた。

 

「これがその呪いのODDだ」

 田所が手に入れてくれたODD。

 そこに映し出されていたのは凄惨な歴史だった。

 人間界、魔界。時と場所をいとわずに繰り返されてきた女性への差別や凌辱、暴力。

 美月は思わず目を背ける。

 人間の生き死にの数だけ。

 魔物の長い寿命の年月だけ。

 このODDには男や世界に対する憎しみが詰まっていた。

 これを見た者たちはみなこう思う。

 その思いが強ければ強いほど、妖怪は形を成しやすい。

「恨み……。はらさでおくべきか……」

 そしてODDから妖怪化した女性たちの怨念が飛び出そうとする。

 猛はそれを神札で制する。

「もういい。時代は変わったんだ。もうお前たちを苦しめるものは何もない」

 猛の声はどこまでも優しかった。

 確かにこの怨霊たちは数多くの男たちの命を奪って来たかも知れない。

 恨みが憎悪を呼び、憎悪が怨念を生み出す。

 そして溜まりに溜まった呪いは行き場を無くし、現世へ妖怪という形で解き放たれた。

「確かにまだ、世界は不条理に溢れている。それでも人間も魔物も変わってきている。昔のようにお前たちを虐げる者もいなくなった」

 画面に映し出された女性たちの怨念を抱きかかえるようにして、猛は話しつづける。

「だから、そんな所に閉じこもってないで、新しい世界へ出てこい。こんな所で復讐の炎に身をやつすより、綺麗な世界がお前たちを待ってるよ」

 美月もその胸をギュッ、と掴む。

「わ、私、知りませんでした。こんな残酷な過去があることを。でも、私も生贄にされそうになりました。この見た目のせいで酷い目にも合いました。だけど、優しくしてくれる人はかならずいます。助けてくれる人がいます! だから、あなた達も幸せになって下さい!!」

 美月の心の底からの叫び。

 何千年と続いた怨念の塊は涙を流していた。

 猛と、美月の優しさに触れ、その心を揺り動かされていた。

「我願い請うは八百万の神々の力。茫漠たる怨念を抱えし哀れなる魂たちを輪廻の輪に戻したまへ。願わくは、来世こそ絶対的幸福が訪れんことを……」

 猛が霊界への扉を開くと、幾億もの魂が導かれるように吸い込まれていく。

 人を恨み、呪い殺すことでしかその存在を許されなかった者たちは、ついにその呪縛から解き放たれたのだ。


「猛さん」

「ん」

「あの人や魔物たちはどうなったんですか?」

 美月が伏し目がちにそう尋ねた。

「生まれ変わって幸せな家族と共に新しい人生を歩むのさ」

「私も、猛さんご助けてくれなければ、大悪魔の一部として世界を破滅に追い込んでいたかもしれません」

 猛はなにも答えない。

「だから、猛さんやクレアさんや田所さんみたいな人たちが必要なんだと思います」

「……。でも俺1人にできることなんてたかが知れてる。目の前の事件一つ解決するのがやっとさ」

「それでも。それでも救われた人たちは必ずいるんです」

「なら」

 猛はそう言って立ち上がると、美月の肩に手を置く。

「美月も目指せ。そうなれるように。

 仲間を作ろう。みんなを助けられるように」

 美月はこれ以上ないくらいの笑顔を満面に浮かべ、元気よく答えた。

「はい!」


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