探偵、日常に戻る
「なぜだ、なぜだ! なぜだ! なぜだ!」
悪鬼羅刹が叫ぶ。
たかが現世の一介の霊能力者に手も足も出ないでいる。
「お前は戦う相手を間違えたんだよ」
悪鬼羅刹が戦っているのは猛であって猛ではない。
無限の神霊力を持ち、無敵を誇る『白蛇の魔神』なのだ。
地獄が地響きを立てて崩れ落ちていく。
「二度と人間界と魔界に繋がらないようにしてやる!!」
猛の魂の海に満ち満ちた神霊力がさらに空間を歪ませていく。
「悪よ、崩れろ! 悪事崩悪事崩!!」
「グアぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
地獄が閉じていく。
それと同時に、そこに囚われていた悪人たちもまた別天地に送られる事となった。
「はぁ、やっと一段落着いたわ」
猛の探偵事務所に来たクレアが盛大なため息を漏らす。
「こんな大事になるとは思ってもなかったわ」
事務処理に追われ、ようやく片が付いたようだ。
「お疲れ様でした」
美月がクレアの前に美味しいコーヒーを置く。
「美月ちゃんもよく頑張ったわね!」
「えへへ」
褒められて嬉しそうな顔をする美月。
嬉しいのはなにも褒められたからだけではなさそうだ。
「ちゃんとお給料も出て、危険手当まで出ましたから!」
お財布の中身もホクホクになったらしい。
猛の方はといえば、いつも通りエロ漫画を読みながら2人の会話を聞いていた。
「猛さん、ちゃんとお仕事してくださいよ?」
美月が釘を差す。
「分かってるよ。午後からは不倫調査だ」
通常運転の日常。
たまに舞い込む命懸けの依頼。
そんなギャップのある職場が、美月は大好きだった。




